坂口安吾全集〈4〉 (ちくま文庫)

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著者 : 坂口安吾
  • 筑摩書房 (1990年3月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (595ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480024640

坂口安吾全集〈4〉 (ちくま文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 収録作品:白痴/外套と青空/女体/恋をしに行く/いずこへ/魔の退屈/戦争と一人の女/ヒンセザレバドンス/続戦争と一人の女/石の思い/風と光と二十の私と/私は海をだきしめていたい/わがだらしなき戦記/道鏡/家康/母の上京/花妖/二十七歳/三十歳。解説は中上健次「安吾―空翔けるアホウドリ」。

  • 近藤ようこが『戦争と一人の女』の漫画原作にした3篇が入ってる『坂口安吾全集04』を借りてくる。この分厚いちくま文庫版で18巻まである。ダザイやミシマは高校の頃にだいぶ読んだけど、私はアンゴを全然知らへんなーと思う。

    この4巻には、戦後の出発点に発表されたものが収録されているらしい。近藤ようこが漫画原作とした3篇「戦争と一人の女」「続戦争と一人の女」「私は海をだきしめていたい」を読み、それから中上健次の解説「安吾―空翔けるアホウドリ」を読み、関井光男の「解題」を読んでから、巻頭の「白痴」を読む。

    昼の空襲がきらいになった「私」。

    ▼…戦争はほんとに美しい。私達はその美しさを予期することができず、戦慄の中で垣間見ることしかできないので、気付いたときには過ぎている。思わせぶりもなく、みれんげもなく、そして、戦争は豪奢であった。私は家や街や生活が失われて行くことも憎みはしなかった。失われることを憎まねばならないほどの愛着が何物に対してもなかったのだから。けれども私が息をつめて急降下爆撃を見つめていたら、突然耳もとでグアッと風圧が渦巻き起り、そのときはもう飛行機が頭上を掠めて通りすぎた時であり、同時に突き刺すような機銃の音が四方を走ったあとであった。私は伏せる才覚もなかった。気がついたら、十米[メートル]と離れぬ路上に人が倒れており、その家の壁に五糎[センチ]ほどの孔が三十ぐらいあいていた。そのとき以来、私は昼の空襲がきらいになった。(p.202、「続戦争と一人の女」)

    自転車に乗って二時間ほど散歩する面白さ、そこから見えてくる戦中のありさま。

    ▼交通機関が極度に損われて、歩行が主要な交通機関なのだから、自転車の速力ですら新鮮であり、死相を呈した焼け野の街で変に生気がこもるのだ。今となっては馬鹿げたことだが、一杯の茶を売る店もなく、商品を売る店もなく、遊びのないのがすでに自然の状態の中では、自転車に乗るだけで、たのしさが感じられるのだった。(p.178、「戦争と一人の女」)

    巻末の「解題」には、戦争の終結は平和の時代の到来ではない、という安吾の認識が書かれている。

    ▼安吾が確信したのは、ありのままの現史の認識であって、与えられた平和を生きることではない。与えられた平和は真の平和ではない。混乱を克服していく建設の過程にこそ平和への道があるということにほかならない。
     この安吾の認識は、敗戦後の日本の原点を説いた「堕落論」に形而上的に高められて結晶しているが、そのようには理解されなかった。「堕落論」は既成の道徳にたいする破壊の書として安易に批判され、受けとめられた。だが、「堕落論」は批判の書ではあっても、否定の書ではない。むしろ逆である。安吾にとっては敗戦後の日本にたいするマニフェスト以外の何物でもなかった。
     安吾の思想の原点にあったのは、混乱を通して新しい現実を発見する実験精神であった。混乱をただ肯定していたわけではない。混乱は現実を変革していく根源的な精神の営為である。想像は混沌の非合理な力に支えられているのであって、それゆえにこそ合理精神が必要とされる。安吾が戦後の出発点に見ていたのは、このような両義性にほかならない。…(pp.574-575、関井光男「解題」)

    平川克美の『移行期的混乱』を読みかけてる途中で、安吾をちょっと読んだせいか、「混乱」てな言葉が出てくるこんなところが目にとまるのだった。

    厚い文庫本に入ってる全部は読めず、返却期限がきたのでいったん返す。『安吾さんの太平洋戦争』で半藤一利が引いていた文章も、全集から探して読みたいと思う。

    (4/6とちゅう)

  • 「読書力」おすすめリスト
    11.強烈な個性に出会って器量を大きくする
    →安吾は作品以上に人間がいいですね

  • 安吾が大好きなので、折に触れて再読する。そのたびに、新しい発見や感動がある。

  • 短編集をざあざあと読んでいると、いくつかは全く記憶に残らない作品が出てくる。
    長編でも、何日かするとさっぱりなものもあるから当然だと思うけれど。

    今回の全集の中で私の記憶に強く残っているものは、「白痴」「恋をしに行く」「花妖」「二十七歳」「三十歳」の五篇である。

    もともと「白痴」を読みたくて借りたということもあるのだけど、「白痴」の出だしは強烈だった。
    白痴の女があひるを追いかけまわしている、だと。
    説明だけをすると古めかしいイメージかもしれないが、私の頭の中ではやけに現代的な狂気をもって想像された。
    文章が生きているということなのか、私がこういう文章を求めていたのかはわかんないけれど。

    一貫してデカダンスの立場から書かれる文章はすがすがしい。
    一緒に自殺してあげたくなる。
    そして間一髪というところで医者に助けられ、解放と快楽と後悔をローテーションする、鬱々とした生活をしていきたい。

    さて、「堕落論」を読みますよ。

  • 私は海をだきしめてゐたい がすき。

  • 2008/1/5購入

  • 傑作短編「私は海をだきしめていたい」所収

  • やっと読み終わった。
    どうして、こんなに安吾に私は共鳴するのだろう。
    友達に紹介しても、なかなか安吾の言葉は響かないことが多いことに気づいた。
    自分が感動したものを、人に押し付ける気はないけど、
    私が世界で1番愛している小説家は坂口安吾だ。
    確信している。
    もしも生きていたら、是非、愛人にしてほしい。
    それくらい、安吾を愛してやみません。

  • 「私は海をだきしめていたい」

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