失われた時を求めて 6 (ちくま文庫 ふ 13-6)

  • 筑摩書房
4.09
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480027269

感想・レビュー・書評

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  • ソドムとゴモラIの直接的で綿密な描写と心情の間歇のセンチメンタルなところが好き。
    夜会の場面は冗長感あるなあ。それにしてもシャルリュス男爵がコワイ。

    ソドムとゴモラ I
    シャルリュス男爵ヤバイ。この時代にこういう表現はありなんだ。
    ソドムとゴモラ II
    第一章
    ゲルマント大公の夜会。Iでのシャルリュス男爵を知った上で彼を見る。サンルーは恋愛は捨て快楽を娼館に求め話者も興味津々。やつれたスワン。ゲルマント大公のドレフュス派への転向。
    夜会の後会う予定だったアルベルチーヌを夜中に呼びつける。
    ヴェルデュラン夫人のサロンはドレフュス派。ゲルマント侯爵も湯治場でドレフュス派に転向する。スワン夫人のサロンはスワンはユダヤ人だけど穏健派。

    心情の間歇
    バルベック再訪。前回と同じ部屋。祖母のとの思い出。具合の悪い祖母が話者に残すために体調をおしてサンルーに取らせた写真。フランソワーズへの愛情。

    第二章
    アルベルチーヌへの不審。ゴモラ(サフィスム=レズビアン)。アンドレへの嫉妬。ホテルでのカンブルメール夫人との出会い。ブロックの妹はゴモラ。ブロックの父はソドム。なんなんだこの一家。結局アルベルチーヌへの疑いは晴れる。

  • 本書で、本シリーズの後半、性別が混交する世界への門戸が開かれた。突如、「常識的には」男女関係だけで成り立っていた社交界の足台が一挙に外された。
    階級と性別は混交し、「私」も「アルベルチーヌ」も「シャルリュス」も、あらゆる人間関係が再編成される。唯一無二のカタルシス。

  • 「ソドムとゴモラ」のタイトルからわかるように同性愛がテーマとなる。この時代に同性愛について書くのはなかなか勇気のいることだったんじゃないかと思う。シャルリュス氏とジュピアンのカップルが登場したり、主人公が恋心を抱いているアルベチーヌをレズビアンではないか?と疑って嫉妬したりする。
    プルースト自身は同性愛者だったらしいが、小説の主人公はむしろ女好きのように見えるのが面白い。

  • 語り手が、愛情はないと言明するアルベルチーヌに嫉妬の炎を燃やしつつ続けた自宅での同棲生活に終止符を打つ決心をした朝、
    アルベルチーヌの出奔を知り、語り手は、激しい苦しみと悲しみに襲われる。

    そもそも、愛情もなく、彼女との関係に飽き、自分こそ、彼女との関係を清算し、ヴェネツィアへ行きを決意したはずなのに、彼女への執着心は、彼女が語り手の元を去ってからますます強くなる。

    彼女が去ったことは、生涯最大の不幸と位置づけ、その不幸の諸原因を知りたいと語り手は思う。
    そして、サン=ルーにアルベルチーヌの行方や動向を探らせるが、うまくいかない。

    精神の安定を著しく欠いたのか、貧しい近所の未成年の娘を自分の膝の上に乗せ揺さぶった後、大金を渡して帰すというナボコフや、ルイス・キャロル顔負けのロリータ的行動をとり、警察に呼び出される。

    語り手が気を揉み、嫉妬と苦痛の日々を過ごしていたある日、アルベルチーヌの叔母のボンタン夫人から電報が届く。

    そこには、アルベルチーヌの死が記されていた。

    アルベルチーヌは、落馬事故で死ぬが、アルベルチーヌのモデルとされた、プルーストのかつての秘書、アルフレッド・アゴスチネリは飛行が墜落し事故死している。
    また、彼がパイロットになりたいとプルーストの元を去った時も友人を派遣して説得させていたり、実話を小説に挿入している部分も多い。
    アルフレッド・アゴスチネリは、勿論、男性だが、彼をアルベルチーヌというレズの女性として描くことの意味は何だったのだろう。

    アルベルチーヌの死後届いた生前に書かれた手紙には、語り手の元にまた戻りたいと書かれており、語り手の絶望と悲しみは頂点に達する。古女中のフランソワーズの前でも涙はとまることはない。
    語り手は、アルベルチーヌの性癖や行動を暴くことに執念を燃やし始める。

    アルベルチーヌの女友達のアンドレと関係を持ち、寝物語にアルベルチーヌのこれまでの品行を聞いたり、バルベックのホテルのボーイ長のエメにもかつてのアルベルチーヌの過去を調べさせる。
    語り手のアルベルチーヌへの疑念は、そのとおりというべきか、それ以上で、甚だ品性を著しく欠く女性であったことが読者に暴露される。
    しかし、それを性癖と解釈するか、節操と解釈するかはまた別問題のような気がする。

    フォルシュヴィル嬢という女性に会うが、彼女は実は、スワンの娘であり、語り手の初恋の相手のジルベルトで、スワンの死後、オデットはフォルシュヴィル氏(「スワンの恋」のヴェルデュランのサロンでスワンの恋敵のように現われ、スワンの嫉妬心をかきたてた伯爵)と再婚したため、ジルベルトはフォルシュヴィル伯爵令嬢になっていたのだ。
    のちに、彼女は驚くべきことに、サン=ルーと婚姻する。

    語り手は母とヴェネツィアに数週間滞在する。
    水の都、ヴェネツィアは語り手を魅了し滞在を楽しむが、ヴィルパリジ夫人と愛人のノルポワ氏が一緒にいるところを目撃する。(ヴィルパリジ夫人は「囚われの女」で死を報じられているが、生存者として登場する。このような例は、プルーストの遺稿を他者がまとめているため見受けられる現象であるらしいが、出版を急いだのか、姪が娘になっていたり、死者が生者になっていたりなどチグハグな矛盾点が多くみられる)

    ヴェネツィアでは、また、語り手は女の人を好きになったりと、アルベルチーヌを亡くした絶望感はいずこへ?というかんじだが、死んだはずのアルベルチーヌからの電報を受け取る。
    しかし、これは、間違いであってやはり、アルベルチーヌの死は確実なもので、忘却に時の流れをシンクロさせつつ物語は進んでいく。

    ヴェネツィアからの帰り、ジルベルトが、サン=ルーと結婚したことと、元チョッキ職人のジュピアンの姪をシャルリュス氏は養子にし、彼女はオロロン嬢になりカンブルメールの子息と結婚することが報らされる。

    オロロン嬢は、腸チフスにかかり、結婚式の数週間後に死ぬという不幸に襲われた。

    ジルベルトとサン=ルーの結婚も、ゲルマント一族にユダヤの血を入れることを許容するという時の流れを感じずにはいられない。輝かしい家名の大貴族のサン=ルーは、持参金のたっぷりある今はフォルシュヴィル伯爵令嬢ではあるが、スワンというユダヤ人を父に持つ娘との婚姻は一篇から読み継いでいる読者にしてみると、ドレフェス事件以後の時代の反映をみるような気分になるのである。

    そしてさらに驚くことに、サン=ルーまでもが同性愛者になっていて、ジルベルトの結婚生活は幸せではなさそうだった。

    第六篇の 「逃げさる女」は、大きな事件が起こり、驚かされるが、マルセルの嫉妬心によって暴かれるアルベルチーヌが、死んで羽根をむしられた鳥類の姿のように思えて痛々しさもあった。

  • 本領発揮のソドムとゴモラ。
    同性愛の感情をお勉強

  • 文庫10冊シリーズの第6巻。社交界で、あるいは再び訪れたバルベックで、様々な人と交遊する話者の周囲にほのかに漂い始める「ソドム」と「ゴモラ」の人々の影…。話者は嫉妬に目覚め、作品の雰囲気も、少年の繊細な感覚が溢れていたこれまでの柔らかな色合いから、湿り気を帯びたどろどろとした色合いへと変貌し始めたような。「大人編」のはじまり、と言った感じです。

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