- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480027825
感想・レビュー・書評
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杉本鉞子が自分のことを書いているのだが、一つ一つのテーマについて書かれている、これは伝記というよりエッセイに近いもの。語れらないこともある。
特に父親や夫を亡くしたことは、悲しみが深すぎたのか、多く語られていない。
祖母や使用人たちの物語を聞いて育ち、さらに仏教の教えも学んでいた幼少期。嫁入りが決まってから上京し、東洋英和に入学して学ぶ英語教育。英語を学ぶにも物語を愛した。結婚、渡米。出産、夫を亡くし、再び帰国。数年後再び渡米。ずっと深窓の令嬢で、召使に傅かれ、お金の心配もしたこともなかったであろう杉本鉞子が、その蓄えもほそぼそとしてきた時に、新聞社に投稿していたのが一連のエッセイだった。
明治に生まれ、アメリカに暮らした杉本鉞子の、女性としての意識の移り変わりや戸惑い。または江戸時代から受け継がれ、変わらないものが、祖母、母、姉によって受け継がれていく。その対比が印象深い。
翻訳は英語から日本語へと、杉本鉞子自身が一緒に翻訳に協力したことが、訳者のあとがきに書かれている。その翻訳も大正時代なので、当時の空気を残した文体になっていることが、時代に合っていて独特の雰囲気を醸している。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【文章】
少し読み辛い
【気付き】
★★★・・
【ハマり】
★★★・・
【共感度】
★★・・・ -
父親が武士出身で、明治時代武士という職業・階級が無くなってからの家族の生活を書いた自伝的小説。アメリカの雑誌に連載されたのが反響を呼び、大正時代に7か国語に翻訳されたという。著者は日本人だが、本書は英語で書かれ、日本語に逆翻訳されている。
当時の上流の生活を知る、とても貴重な資料と呼ばれているそうだ。侍としての特権階級が無くなった後も、ある程度いい生活を送った著者。古き良き時代を懐かしむ前半と、家族に決められた結婚で、夫の仕事に同伴しアメリカに住むことになり、そこでの子育てを書いた後半から成る。
今の価値観からすると、やはり家族が決めた人と顔も見ないで結婚することを受け入れるのがすごいと思う。そういうものだと子どものころから思っているので、ホームシックにもならないそうだ。アメリカに渡り、カルチャーショックを受けつつも現地での生活に順応し、帰国後アメリカに帰りたがる子どもたちを連れて再びアメリカに移り住み自分で稼ぐところに女性の強さが見える。
すごいな、とは思ったが、冗長で読み終わるのに時間がかかった。 -
桜庭一樹さんのフェア「さくらばほんぽっ!」にておすすめされていたものを購入。『本に埋もれて暮らしたい』掲載のものです。
私は女性を描いた作品がすきだし、昔の文化や言葉遣いで書かれたものもすきだしいいなーと思って買ってみましたが、やっぱりよかったです。
訳されているので勿論書かれたときのままの言葉ではないんだけど、それでもうっとりしてしまう。昔の、育ちの良い家庭での話し言葉って読んでいていいなあって。身に染みこんで自然に綺麗に使っている雰囲気が。
厳格な家庭で育って、当時にしても割合古風とも言える考え方を持っていた「エツ坊」が、新しいものをも受け入れる力にも優れていてすごいなあと思いました。流されるだけではなく、きちんと受け止めて解釈するというか。でも意外とエツ坊がしっかりしただけの人じゃなくて親近感。安易な思いを反省したり。
引用部分はアメリカの「母上」の言葉。たとえがぴっしりその通り!と思ったわけではないんだけど、表現がいいなあと思って心に残りました。花にたとえているところがいい。咲く土壌があって、環境が変化すれば咲く様子も変化する。それぞれに合う育ち方や風土がある。
日本文化について、あり方について考えることもできる作品でした。 -
明治四年、旧長岡藩の家老の家に生まれた娘さんが、武士の暮しを色濃く残した躾を受け、やがて兄の決めた許婚のいるアメリカに渡り、アメリカの文化に触れ、また日本に戻り、そして娘たちをつれて再度渡米するまでの私小説。エッセイ?
「武家の女性」が大好きなのだが、「武家の女性」が、下級武士の家庭での暮し振り、日常生活や仕事のことを国内むけに描いているのに対し、こっちの「武士の娘」は米国で発表されたせいか随分と毛色が違う。
下級武士の生活誌が主眼におかれているのが「武家の女性」、江戸の色濃い明治に生まれて躾けられた女性が、その目でどう米国を見、感じたか追体験できるのが「武士の娘」なのかもしれない。 -
連続した短いエッセイ。再度、渡米した親娘のその後が気になります。