- Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480028792
感想・レビュー・書評
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「うたの心に生きた人々」茨木のり子著、ちくま文庫、1994.09.21
296p ¥740 C0195 (2019.05.24読了)(2019.05.17借入)
四人の詩人、与謝野晶子、高村光太郎、山之口獏、金子光晴、の評伝です。
与謝野晶子、高村光太郎、については、作品を読んだことがありますが、山之口獏、金子光晴、は作品を読んだことがありません。金子光晴の著作は、かみさんの本棚にあるので、読んでみたいと思います。与謝野晶子、高村光太郎、に関しては、関連本を読んでみたいと思います。
著者は、詩人を次のように言っています。
「詩人とは、民族の感受性を、大きく豊かにするために、営々と、心の世界、感情の世界をたがやす人のことかもしれません。
一つの民族が生きてゆくに、必要欠くべからざる大きな泉である「詩」は、役たたずどころか、大いに役にたっているのですが、詩人が生きているときは、ならずものあつかいされ、のけものにされ、はなもひっかけられず、貧乏にあえぎながら死んでしまいます。
詩人がいなくなって何十年もたってから、あの時代の心をいちばんよくつかんでいたのはかれだった、かれは予言者だったなどということになり、詩集が出版され、争って読まれるようになり、たくさんのお金は、ともすると、ぼんくらな子孫が受けとることになります。」(10頁)
著者は、石川啄木、宮沢賢治、についても書きたかったようですが、一冊に収めるには、ページ数が予定以上になるということであきらめたようです。とは言え、石川啄木、宮沢賢治、についても、所々で言及しています。
247頁に、関東大震災の時に、
「社会主義者、大杉栄も、その妻子とともに虐殺されました。」
という記述があります。大杉栄と一緒に殺されたのは、伊藤野枝と橘宗一です。伊藤野枝は、内縁の妻ですので、妻でもいいと思うのですが、橘宗一は、大杉栄の甥です。子供向けに書かれた本なので、教育的配慮なのでしょうか。
著者は、次のようにも言っています。
「考えてみると、世の親たちが「わが子にだけはこんな一生を送ってもらいたくない」とおそれているような人生を歩いた人ばかりです。」(12頁)
【目次】
はじめに
与謝野晶子(1878-1942)
1 堺そだちのむすめ
2 恋のうた
3 みだれ髪
4 君死にたもうことなかれ
5 妻として、母として
6 黄金の釘
高村光太郎(1883-1956)
1 高村光雲のむすこ
2 パリでの人間開眼
3 父との対立
4 『智恵子抄』の背景
5 日本人の「典型」
山之口貘(1903-1963)
1 ルンペン詩人
2 求婚の広告
3 獏さんの詩のつくりかた
4 ミミコの詩
5 沖縄へ帰る
6 精神の貴族
金子光晴(1895-1975)
1 風がわりな少年
2 中退の青春
3 山師のころ
4 第一回の外遊
5 詩集『こがね虫』
6 海外放浪の長い旅
7 むすこの徴兵をこばむ
8 戦後になって
文庫版あとがき 茨木のり子
☆与謝野晶子さんの本(既読)
「みだれ髪」与謝野晶子著、新潮文庫、2000.01.01
「みだれ髪 チョコレート語訳」与謝野晶子著・俵万智訳、河出書房新社、1998.07.06
「みだれ髪Ⅱ チョコレート語訳」与謝野晶子著・俵万智訳、河出書房新社、1998.10.09
「初恋に恋した女 与謝野晶子」南條範夫著、講談社文庫、1997.05.15
☆高村光太郎さんの本(既読)
「智恵子抄」高村光太郎著、龍星閣、1941.08.20
「智恵子抄その後」高村光太郎著、龍星閣、1950.11.20
「智恵子抄」高村光太郎著、新潮文庫、1956.07.15
「高村光太郎詩集」高村光太郎著・伊藤信吉編、新潮文庫、1950.11.20
「高村光太郎詩集」高村光太郎著、岩波文庫、1955.03.25
「レモン哀歌」高村光太郎著、集英社文庫、1991.01.25
「智恵子紙絵」高村智恵子作・高村規写真、ちくま文庫、1993.12.06
「高村光太郎」福田清人・堀江信男著、清水書院、1966.10.25
「小説智恵子抄」佐藤春夫著、角川文庫、1962.02.20
「逆光の知恵子抄」黒澤亜里子著、学陽書房・女性文庫、1997.03.20
☆関連図書(既読)
「詩のこころを読む」茨木のり子著、岩波ジュニア新書、1979.10.22
「おんなのことば」茨木のり子著、童話屋、1994.08.17
「倚りかからず」茨木のり子著、筑摩書房、1999.10.07
「一本の茎の上に」茨木のり子著、ちくま文庫、2009.07.10
「特別授業『自分の感受性くらい』」若松英輔著、NHK出版、2018.12.30
(2019年5月30日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
タイプの全く違う詩人4人、しかしいずれ劣らぬ世渡りべた、貧乏、もうれつな反逆者―存分に理知と情熱を生きた晶子、忠君愛国に眩惑された自分の罪を負って戦後を生きた光太郎、ルンペン詩人と呼ばれながら気高い精神を詩に賭けた貘、アジア・パリを放浪し、プロレタリア詩にも戦争詩にも組みせず、自分自身の思考力を大切にした光晴。詩にとって時代とは、国家とは。詩人にとって家族とは。詩人の筆によって描破された鮮烈な詩人像。詳細をみるコメント0件をすべて表示