- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480029041
感想・レビュー・書評
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山下清が式場隆三郎にヨーロッパ旅行に連れて行ってもらった時の旅行記。山下清の文章そのままだと一文がとりとめなくだらだら続いて読みにくいので、弟など周囲の人が多少手を加えているらしい。
「本当にこんなにうまくまとまっているのかなぁ」と思う部分もあり、できれば読みにくくても原文で読みたかったかな。
内容はかなり面白い。本人は大真面目だけど「うわそれヤバいんじゃ…」なエピソード多数でハラハラする。そしてマジックで描いた挿絵がとても素敵。
式場先生さぞかし大変だっただろうな…と思ったり、いやいや気ままな放浪に慣れてる本人こそいろいろ制約の多い旅でストレスも多かったかも…とも。平成の時代だったら東南アジアあたりでもっと自由なバックパッカーできたかもね。
本筋からははズレるけど、昭和30年代の海外旅行では、観光を始める前に現地の大使館や領事館に挨拶に行くのが普通だったのね。海外旅行は今よりずっと特別なことだったんだなぁ…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
画家・山下清のヨーロッパ旅行記。独特の文章だが、慣れてしまえば言葉はどれも平易で、放浪者の視点に引き込まれた。実際に全責任をもって同行した式場隆三郎博士は相当に神経を使ったであろうが、そのおかげで読み手としては気軽に道中を楽しめた。なにより挿絵が秀逸で、とくにハンブルクの教会やロンドンのタワーブリッジなど、風景・建物の細密画は見ていて飽きない。最後、赤瀬川原平の解説内容に頷くばかりであった。
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山下清さんの素朴な絵
素朴な感想 -
すーぱー!
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―――ぼくはしあわせでも不しあわせでもなくて、いつもふつうだな―――
貼絵画家で有名な山下清が初めてヨーロッパを訪れた旅行記。
同行の式場先生との会話があたたかく面白い。
まいにち書き留めた日記と、同行者が撮りためた写真と、自身で簡単にスケッチしたものを日本に持ち帰り、素晴らしく繊細な点描で作品にしている。
そのいくつかが、本書にも掲載されているが、景色や建物の細かい描写は何度も何度も見返したくなる。
人物は苦手というが、味があって私は好きだ。
文章は、こんなにまとまっていないらしい。どうやら「」や句読点は先生があとから添削して入れているらしい。もっとずらずらだらだらと書かれた原文らしい。
しかし、優れているのは、その表現力と発想力だ。
自分のことを「頭のたりない」とすぐ言うところも人柄を感じて笑ってしまう。
何にでも疑問を持ち、式場先生に質問する。返ってきた答えに納得することもあれば反論することもある。ただし、反論するときは先生に言わず、心の中で「〜とぼくは思うけど、〜となるだろうからやめとく」のような対処が子どものようで面白い。
すごく真面目で繊細なのだと思う。
ヨーロッパから帰って飛行機の中で日本を見て、
「みんなぼくと同じような顔をした日本人なので、なにかきけばすぐ返事をしてくれる。(省略)どこへ行ってもひとりぼっちのような気がしない。(省略)ぼくは自分が日本語をしゃべれるのが大したことのような気がした。」
と書いている。
ヨーロッパに行ってとても楽しかった反面、日本に帰ってこれてよかったことがふつふつとにじみ出ている。
山下清の素直さが旅を通じてとてもよくわかり、あたたかい読了感だった。 -
山下清本人によるヨーロッパを中心とした海外での旅を綴った一冊です。
※本人が書いたというと正確ではないので補足すると「ので」「ので」と文章が続き、句読点を使うのが嫌いだったようです。そのため、読者に読みやすいよう清画伯の弟さんなど近しい方々の協力で原文を大切にしながら校正をしたそうです。 -
山下さんは作品だけではありません。山下さんの目を通してみる世界観。新鮮さ、独特さ、諧謔さ、時に本質を射る鋭さ。いろいろ気づきのある一冊です。
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山下清がヨーロッパを旅行した際の旅行記。
とにかく自由!ゲーム化できないかな。 -
山下清が担当医?の式場先生に連れて行ったもらった、約1ヶ月のヨーロッパ旅行記。
私はかつてのTVドラマを見ていない世代なので、この旅行記で初めて山下清という人を知りました。
普通の人とは違う触覚で世界を見ていた人なんですね、すごく新鮮で、尖っていた神経がほぐされました。
日本の旅行記もあるようなので、こちらもすぐ読んでみたいと思います。