生きるかなしみ (ちくま文庫)

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制作 : 山田 太一 
  • 筑摩書房 (1995年1月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480029430

生きるかなしみ (ちくま文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 哀切に満ちた本。

    高史明さん、水上勉さんの文章には、自分の想像力の外にあるものを見せてもらった。

    今、身にしみる本かもしれない。
    もっと以前だったら、染み入る前で止まっていたかも。

  • 何かの雑誌の記事で、天皇皇后両陛下がこれまでに読んだ本を挙げてお話しになる場面があったそうで、そこで美智子さまがこの『生きるかなしみ』という本を挙げておられたらしい。
    ”皇后陛下の読まれた『生きるかなしみ』”。
    それだけで、なんだか興味をそそられませんか。私はそそられたので読んでみました。
    実は読み終わってからずいぶん日が経っているので、読後感というか印象もだいぶぼやけてきているけれど、一国の「象徴」、ある意味で代表というかトップ(敬意を表されるという意味で)というか、である人、の周辺の人が、こういう本を読んでおられると思うと、『国民を幸せにする100の習慣』みたいな本を読んでいるっていうよりよっぽどその国の民として幸せなことのような気がしました。

    1995年の本。編者の山田太一さんが序にて、いまは科学も経済も発展して、成長・挑戦・可能性の追求こそが正義という風潮だけれども、それも疲れてしまった。断念して心の平安を得ることも大事だ。それにいつの世になっても、人間は傲慢だし、嫉妬深いし、裏切るし、物欲性欲に振り回されるし、なんだかんだと言って戦争を始めて殺し合う。人間は無力である。そういうことに思いを致すべきなのではないか。という思いでこの本を編纂されたと述べています。
    先日読んだパスカルの「考える葦」でも、まさに葦のような無力な私たちだけど、その無力さを見つめ認めることができるのが人間の尊さだということが言われていました。ちょっと立ち止まって私たちの不幸を、かなしみを、見つめようという本です。
    (ま、文学とか芸術とかって、わざわざ「かなしみ」なんて銘打たなくても、そういうところがあるものだとは思いますが。)

    主に近代以降の日本のいろんな人の著作の一部を編んだアンソロジー(っていうのか?)なのですが、この構成もまた見事で、はじめのほうは、「女学校時代めがねをかけた自分の顔が嫌でつらかった」というような、たいそうな序のわりに意外と軽いな・・・という感じの内容のものが入っているのですが、後半に向けてどんどんどんどん重くなり、私はこれを読み終わりそうな時期の読書中にたまたま友人に声をかけられたのですが、そのときは、ちょっとしばらく意識が現実世界に戻ってこられません・・・という感覚に陥ったほどでした。
    なかでも印象的だったものの、著者とタイトルを以下に列挙。

    「失われた私の朝鮮を求めて」高史明
    「ふたつの悲しみ」杉山龍丸
    (戦後、復員の事務で、毎日毎日訪ねてくる留守家族に対して、あなたの息子は死にました、あなたの夫は死にましたと告げる仕事をしていたときの話。)
    「望郷と海」石原吉郎
    (シベリア抑留からの復員までの話。)
    「太宰治-贖罪の完成-」五味康祐
    「大目に見られて」ラングストン・ヒューズ
    (フィクション。皮膚の色が明るく一見白人に見える黒人の青年が、白人として生活の成功を収めており、あるとき黒人のママに町であったけれど当然無視した。そのあとでママに向けて書いた手紙。)

  • 名作

  • 「断念するということ」

  • 父が読み、題名が妙に気になって読んでみました。
    16人の作家の「生きるかなしみ」について書かれたエッセイ、詩、小説。
    なんだかこれまで健康法やhow to本を読んでは躍起になっていた自分が、ゆるゆるとただの自然に戻されていく気持ちになった。
    人々が横を向いてがむしゃらに頑張っている姿を、ちょうど上から見下ろして客観的に見られている気がした。
    こんな本に初めて出会った。
    多くの日本人に読んでもらいたい。

    ・今日本人が目を向けるべきは、人間のはかなさ、無力さ。生きるかなしさを見ようとしないことは本当の意味では楽天性ではない。
    ・いつ地震にあっても交通事故にあっても死病になっても不思議ではない人生を何十年と生きてこれたことは驚くべきこと‥
    ・人々は今、老いても、少しでも若くあろうとする。
    ・人生は楽しくなければならないと思い込んでいるようだ。
    ・忙しいなか家事雑用をするのは、一見むだな作業に見えて、実は、間際を縫って仕事、女である本能をみたしてくれる

    「断念するということ(山田太一)」、「ふたつの悲しみ(杉山龍丸)」、「親子の絆についての断想(水上勉)」が私の心には響きました。

  • 佐藤愛子さんの、老いることを修行ととらえているところが良かったです。

  • 人生には希望や歓びが輝くように、人は誰しも、ひっそりとした哀しみを抱えて生きている。哀しみに抗うことなくただ静かに受け入れて生きていくことも、成熟した人間の強さなのだと思いました。

  • 人の心の中にある哀しみをあたたかく、ときに厳しく
    ドラマにして見せてくれる脚本家山田太一さんが、
    人の心の底にあるさまざまな哀しみについて
    集めてくれたエッセイ、詩、短編・・・。
    こういう哀しみもあるんだ。こんなつらい想いもあるんだ。
    ひとつひとつ丁寧に選びだされた哀しみを
    じっくりと味わう。
    はじめに、で
    「悲劇は人生肯定の最高の形式だ」というニーチェの言葉が
    紹介されている。
    本来の意味での楽天性は、人間の暗部にも目が行き届き、
    その上でなお肯定的に人生を生きることをいう、と。
    山田太一氏脚本のドラマが、また奥深く心に届く気がする・・・。

  • 内田和夫先生推薦

    真剣な眼差しで読む本も必要だ。人が生きていること、それだけでどんな生にもかなしみがつきまとう、と編者はいう。いやなことは避けて、毎日そこそこ楽しい君!二十歳はそれで済む歳ではそもそもなかったといいたくなる昨今。まずもって、人生の悲しさを受け止め、味わってはどうなのだろう。本当に人生も社会も深く悲しいことだらけ。

  • 「悲しむ」という言葉を耳にした時、最初に浮かぶのは、涙を流すほどの感情だ。
    だがこの選集に収められているのはそういった激しい感情ではなく、人生の様々な場面で感じる「悲哀」の話。
    大部分は淡々と冷静に綴られて、だからこそ時に強く胸を衝かれる。心に残る良作だった。時を経て手に取ればまた感想も違うのだろう。
    今印象に残ったのは「断念するということ」(山田太一)、「或る朝の」(吉野弘)、「私のアンドレ」(時実新子)、「失われた私の朝鮮を求めて」(高史明)。

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