鴎外の子供たち―あとに残されたものの記録 (ちくま文庫)

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著者 : 森類
  • 筑摩書房 (1995年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480030399

鴎外の子供たち―あとに残されたものの記録 (ちくま文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 森鴎外の三男にして末っ子の、森類(もり るい)氏の目から見た“森家の人々”

    森鴎外のプライベートは、今まで茉莉氏のエッセイでしか読んだことがない。
    つまり、茉莉氏の目から見た森鴎外しか知らなかったということ。
    類氏が家族のことを書いた本を出すことになって、杏奴と茉莉が激怒して、呼び出してシメた…様なことを知り、ちょっと下衆な興味もあって手に取ったのだった。

    なかなかどうして、とても分りやすい、しかし緻密な文章で、文豪の血は濃く流れていると思った。
    “茉莉のことがとてもひどく書かれている”と編集者が茉莉の元に駆け込んで(おかしな話ですが)出版を止めようとしたというが、そんなにひどいことが書かれているとは思わない。
    その部分は削除されているのだろうか?
    森家では『家族のごたごたを暴露したみっともない本』ということになっているらしい。

    茉莉氏の書いた鴎外像だけを見れば、そこはやはり『茉莉メガネ』とも言える独特なフィルターを通して見ており、脳内で再構築しなおされている部分もある。
    良くも悪くも、“森茉莉世界に住む森鴎外”なのだ。
    やさしく子煩悩なイメージは変わらないが、茉莉の世界の中では、きょうだいのなかで茉莉を特別に愛し、「おまりは上等、おまりは上等…」と歌うように繰り返す父であった。
    森家は父在りし日の裕福な家庭であり、ベルリンの仕立て屋から子供服が届き、豪奢な着物をあつらえてもらい…と、つまり、茉莉の好きな“美しいもの”だけが描かれているのである。
    世の人々には舞台だけを見せたかったのに、楽屋裏や、芝居のストーリーとは無縁の、俳優たちの不和といったものを暴露した形になったことで、類氏を憎んだのであろう。

    やはり、一人の人の言葉だけを鵜呑みにするものではないなあ、と思った次第だ。

    この作品は、随筆に分類されてはいるが、時系列に従って書かれているので、小説を読む面白さがある。
    茉莉氏とは八才も違い、また女の子と男の子の目では見るところも違うので、服や着物ではなく、遊びや友達、学校や絵の師匠らとの人間関係が詳しく書かれているのが興味深い。
    腹違いの兄、於菟(おと)との確執や、後妻としての疎外感を味わう母への愛情、2つ上の姉・杏奴との魂のつながりと、彼女の結婚による関係の変化も、細やかな心理描写で展開される。
    子供の頃から何くれと世話をしてくれて頼り切っていた杏奴が、だんだんと“親戚のご意見番の、口うるさいオバチャン”みたいになっていくのがひそかに面白かった。
    …と、こういう読まれ方をされるのが、姉二人にとっては耐えがたい屈辱だったのでしょう。
    このままでは不公平であるので、ぜひ、小堀杏奴氏の『晩年の父』も読みたいところ。

  • ○森鴎外の末子である類さんが、自分と森家を描き出している本です。類を「ボンチコ」と呼ぶ鴎外の父としての一面、類たちとは異なる母をもつ兄との複雑な関係、そして姉たちの姿を良くも悪くも描き出しているところは、淡々と事実を語っているようにみえて愛情にあふれています。姉のことを悪く書いて絶縁されてしまったのも、人間への視線をそのまま書き出してしまうところによるのかもしれません。普通の人なら「親族に不都合なことだから書かない」というところを、書いてしまう。そこが類さんの文章の大きな魅力だと思います。類さんに「君が現代に生きていることが無理なんだ」といった人がいたそうですが、人とどこかずれているという点で、茉莉さんと通じるものを見出さずにはいられません。

    ○父に愛されて育ち、画家という選択さえ他人が用意してくれるような人生だったものが、戦災を経て一変します。自分で働き、出版社や本屋で奔走するようになる。そのなかで自分の人生や子供の将来を嘆きつつも、どこかそこに生きている実感を見出しているような、ひょうひょうとした書き方が魅力的です。

    ○また個人的には、茉莉さんへの印象が変わった一冊でした。自身を”一人では何もできない”といっていた茉莉さんですが、類さんの描く茉莉さんの姿はそれに輪をかけてマイペース。やはり、類さんの人物への洞察が面白いですね。

  • 茉莉ちゃんがぶっ飛んでるのはよく分かりました

  • アンヌコ、ボンチコ。

    たぐい稀なる世紀の才人を父に持ち、一般のご家庭とはどうしたって異なる交遊関係や家族たちの中で育つことは幸福でもあり、不幸でもあり。。。
    何かお伽の国の出来事のようでもある。

    子どものころは学業に不安があり、長じてからも世間で働いたことがなく、家庭を持っても奥様が隣近所に「主人が勤めにむかない人ですので」と弁解していたと言うが、文章のこの味わい深さ、人をひきつける魅力は、一体どこから?

  • 冒頭のほうで、知り合いの編集者に侮辱されて憤慨するシーンがある。
    お坊ちゃん育ちの人間が世間というものとはじめてぶつかるのだが、
    味わう屈辱感や劣等感が虚しい。

  • 森鴎外の末子、類の描いた父鴎外、母志け、異母兄於菟、姉茉莉、杏奴について書いた本。この本を書いた事により二人の姉から嫌われたとの記述があるが、これは女の人ならこういう内輪暴露みたいな事を書かれたら嫌だとワタシですら感じてしまうのだから2人の気持ちは如何ばかりだったろう。けれど、著者はおそらく鷹揚な性格が読み取れるので悪気は全くなかったのだと思う。それにしても、森鴎外の子供達(於菟を除く)に対する愛情の深さには感激する。

  • 鴎外の子供たちー於菟、茉莉、杏奴、類。みなそれぞれ、強い個性を持ち、父親を愛し愛されていた。しかし兄姉間の仲は、そううまくはいかなかった。妻志け、子供たちを取り巻く不協和音。明治の文豪のプライベートな部分を末子の目が捉えた貴重な書。鴎外の見方かわるわ。舞姫の人とは思えない。でも、偉人の遺伝子って、伝わらないのねー。文豪形無しだよ。

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