恋する伊勢物語 (ちくま文庫 た 26-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480030795

感想・レビュー・書評

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  • 伊勢物語の代表的な歌を紹介しながら当時の歌人の解説を行う。
    愛を歌うオペラ歌手とは違い、当時の日本人は五七五七七の音律に乗せて愛を歌う。この文化の違いがなんとも面白い。

    そして歌に婉曲な意味合いを込めたり、都合が悪くなったら「いえ、私は単に花について歌っただけですよ」と逃げ道があったり、憎たらしいけど面白い。もらった方も返歌で相手の歌を踏まえながらおしゃれな返し。教養も知識もセンスも必要...僕からしたらとてつもない高いコミュニケーションスキルだなぁと思う。

    千年くらい前の平安時代にこんなことが盛んに行われていたのかと思うとますますすげーなぁとただただ感心。科学技術は進歩していっているが果たしてコミュニケーション能力として現代は進歩できているんだろうか...。

    恋をしまくっている貴族たち、そしてせっせと頭の中で歌をこねくりまわしているのかと思うと可愛らしいなぁと応援したくなるね。

  • 恋する伊勢物語(俵万智/ちくま文庫)
    「第2回すみれビブリオバトル」で紹介された本。なるほど、面白い本でした。ご紹介ありがとうございました。
    「サラダ記念日」(1987年)で有名な著者の俵万智さんはもともとは高校の国語の先生。91年に刊行された第二歌集「かぜのてのひら」では

    気にかかることはさておき教壇に立てば身にしむ『伊勢物語』

    という歌が詠まれています。実際に伊勢物語を教えられていて、気にかかることがあっても「伊勢物語」が痛切に骨身に染み透って感じられるほど「伊勢物語」がお好きなのでしょう。この本を読んでいたら俵さんが楽しんで本書を書いたことを感じられました。

    我々が高校で習った「伊勢物語」は色気の部分を完全除去した内容です。高校の先生が気持ち良さそうに「世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」という在原業平の歌を説明したのを聞いて「だから、何?」と思ったと記憶しています。ところが、実際は「伊勢物語」は「三角関係あり、老婆とプレイボーイの関係あり、せつない片思いあり、浮気話あり、許されぬ恋あり、もう何であり」というお話です。

    面白いと思ったのは
    ○誰かの夢を見るということは、その人が夢にまでやってくるほど自分に逢いたがっていると昔は解釈していた。それを知れば第9段「東下り」の「駿河なる宇津の山辺のうつつにも夢にも人に遭はぬなりけり」のニュアンスは違ってくる
    ○第60段と62段に出てくる男は女に見捨てられた男。両方とも捨てられた女に偶然に出くわすという話だが60段の男はスマートだが62段の男は非常に嫌な男
    ○第63段「世ごころつける女」は白髪のおばあさんと天下のプレイボーイという組み合わせ。その橋渡しをする親孝行な息子の行動とプレイボーイの「あはれ」と思う対象の変化が面白い。また「白髪」のことを「九十九(つくも)髪」と言った。これは百という字から一を取ると「白」という字になったから

    本書は91年の1月から12月まで朝日新聞に連載されたコラムをまとめたもの。当時、俵さんはまだ20代。第90段のデートの約束はしてもらったが本当に会ってくれるのかどうかの不安に苛まれる男の気持ちについて若い俵さんが分析する章も面白かったです。

    2週間先の約束嬉しくてそれまで会えないことを忘れる

    こんな気持ちが味わえる20代だからこそ、本書のようなユニークな「伊勢物語」論が書けたのだと思います。
    とにかく面白い本。私みたいに古典と距離を置いてきて方にむしろお勧めしたいです。
    なお、本書は私の誕生日に読書好きのお友達から頂きました(若い女性。しかもかわいい)。この歳で女性から、こんな色っぽい本を頂けるとは思いませんでした。寿命が10年延びました。ありがとうございました。

  • 先日皇室の名宝に行き
    伊勢の国のイベントを上野公園で見たし
    上村松園の雪月花を見て
    心の琴線に触れたので、読んでみました。

    友情などをテーマにしたものもありますが
    ほとんどが恋愛がらみです。

    俵万智さんが、短歌をそのまま訳し、
    文法や当時の状況で説明したり
    「他の方の解説ではこういうものが多い」と語ったり。

    現代っぽく翻訳したものや俵さんのツッコミには
    くすっと笑ってしまったところがたくさんあります。

    こんな風に何かっていうと短歌を作るのは
    とても楽しそうですねー。

    でも『通い婚』は嫌です。
    その時代の女性ではなくてよかったです。

    http://nagisa20080402.blog27.fc2.com/blog-entry-279.html

  • 伊勢物語を訳す上で見える行間をエッセイ的に綴っている。伊勢物語の魅力が改めて実感される本。教室では古語辞典や古典文法の使い方を学ぶゴールにされがちだけれど、実はそこからが本文に入り込むスタートで、授業では伊勢物語の魅力を伝えきれずに古典嫌いを生み出してしまったという俵万智さんの思いに共感する。

  • 俵さんの現代語訳、それもご自身の体験を取り入れた解説となっているのが楽しい。どの世の人たちも、誰かを思い誰かに思われ生きていたんだなあと実感する。

  • (2014.05.30読了)(2003.10.04購入)
    【日本の古典】
    「古今和歌集」には、撰者である紀友則、紀貫之、などの和歌の他に、小野小町、在原業平、などの和歌が多数収録されています。ということで、在原業平の歌物語と言われる「伊勢物語」は、依然読んだので、「伊勢物語」を読んだついでに読もうと購入してあったこの本を読むことにしました。
    俵さんが、「伊勢物語」の現代語訳を進めるのと並行して書かれたエッセイということです。
    初出は、読売新聞・日曜版に1991年1月6日~12月22日の間連載されたものです。
    「伊勢物語」は、和歌とその和歌が詠まれたいきさつを綴った物語風のものが、125編ほど集められたものです。それぞれ、「むかし、男ありけり」で書きはじめられていますが、男の名前は、在原業平とは限らないようです。
    それぞれが、いろんな恋のかたちが語られており、俵さんが、その恋愛心理を自分の体験をまじえながら解説しています。実に楽しいエッセイになっていて、「伊勢物語」って、こんな読み方ができるの!と驚いてしまいます。
    恋談義が好きな方にお勧めです。

    【目次】
    1 とりあえず、男がいた
    2 短歌は必修科目
    3 きぬぎぬの心
    4 身分違いの女
    5 殺し文句は永遠に
    6 風流心は忘れない
    7 母のがんばり
    8 大いなる誤解
    9 去ってゆく妻へ
    10 突然の破局
    11 妻が公認する浮気
    12 三年目の悲劇
    13 告白できずに
    14 どっちもどっち
    15 別れたあとで
    16 いやな男
    17 年老いて、なお
    18 どうにもとまらない
    19 斎宮の青春
    20 桜の花は罪つくり
    21 思いがけない展開
    22 さらぬ別れ
    23 縁がなければ
    24 だから出世しない
    25 約束の楽しみ
    26 通い婚のせつなさ
    27 言葉の力
    28 結婚モラトリアム
    29 短歌でナンパ
    30 ゆっくり噛んで
    31 藤の花かげ
    32 女もつらいよ
    33 龍田川をめぐって
    34 代筆の妙技
    35 せつない話
    36 無欲の勝利
    37 いつかゆく道
    あとがき
    文庫版のためのあとがき
    解説 恋する俵万智  武藤康史

    ●夢の解釈(44頁)
    (昔は)誰かの夢を見るということは、その人が夢にまでやって来るほど自分に逢いたがっている―と解釈するのである。
    ●「伊勢物語」の題名の由来は?(140頁)
    作者が「伊勢」という名前だったという説、伊勢の国に関係づけて考える説、伊は女で勢は男を表す、つまり男女物語の意味であるとする説、えせ物語がなまったものだとする説、などなど、このほかにもいろいろある。
    現在、最も有力とされているのは「伊勢斎宮」の登場する話があるので、それに由来して、とする考えだ。
    ●体験か空想か(231頁)
    よく、「あなたの恋の歌は、すべて実際にあったことなんですか?」という質問を受ける。「全部が本当ではないし、かといって全部がうそでもない」というのが、私の答えだ。あったことそのままでは、単なる身の上話になってしまう。が、何もないところからは、歌は生まれない。
    ●「伊勢物語」は恋のお話で(253頁)
    教科書でしか『伊勢物語』を読んでいないという人は、「恋のお話でいっぱいですよ!」と言うと、たいていびっくりする。「三角関係あり、老婆とプレイボーイの関係あり、せつない片思いあり、浮気話あり、許されぬ恋あり、もう何でもあり」だなんて、にわかに信じがたい、という顔をする。

    ☆関連図書(既読)
    「古今和歌集」小町谷照彦・田久保英夫著、新潮社、1991.06.10
    「古今和歌集」中島輝賢編、角川ソフィア文庫、2007.04.25
    「土佐日記」紀貫之著、川瀬一馬訳、講談社文庫、1989.04.15
    「小説小野小町 吉子の恋」三枝和子著、福武文庫、1995.11.10
    「伊勢物語」大津有一校注、岩波文庫、1964.12.16
    「私の百人一首」白洲正子著、新潮文庫、2005.01.01
    ☆関連図書(既読)
    「ふるさとの風の中には」俵万智著・内山英明写真、河出書房新社、1992.11.30
    「三十一文字のパレット」俵万智著、中公文庫、1998.04.18
    「ある日、カルカッタ」俵万智著、新潮文庫、2004.03.01
    「トリアングル」俵万智著、中央公論新社、2004.05.25
    「みだれ髪 チョコレート語訳」与謝野晶子著・俵万智訳、河出書房新社、1998.07.06
    「みだれ髪Ⅱ チョコレート語訳」与謝野晶子著・俵万智訳、河出書房新社、1998.10.09
    (2014年5月31日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    平安貴族のプレイボーイは、ウルトラ不倫あり、結婚モラトリアムあり、ナンパあり、有名なゴシップあり、告白できなかった恋あり、妻公認の浮気あり、自然消滅あり(もう何でもあり)。恋愛のパターンは今も昔も変わらない。伊勢物語を現代語訳した著者が、脱線アリ体験談アリ個人的恋愛論アリでその面白さを伝える、ロマクチックでユーモラスなエッセイ。古典の勉強はちょっと若手、という人にもこれならきっと好きになる、恋する受験生の必読書。

  • 「サラダ記念日」の俵万智による、伊勢物語の解説混ざりのエッセイ。
    おもしろいです。

    書き出しからしてこんな感じ
    -----
    「むかし、男ありけり」
    ・・
    飲み物を注文する時に
    「とりあえず、ビール」
    という言葉をよく耳にするけど、『伊勢物語』の書き出しというのは、あれに似ている。
    -----

    読みやすいのに加えて、俵万智の夢想する当時の恋愛事情が色ぽく切ない、上に分かりやすい文法解説もついてる。(著者は国語の先生でした)

    この著者の本は「サラダ記念日」を15年くらい前に読んだきりでしたが、もったいなかった。こんなきれいな日本語を読んでないなんてもったいなかった。流れるような文章も美しいのですが、単語の美しさがぎらぎらっと光ります。短歌のプロだと気づかされます。

  • 学校の宿題で読んだのですが、この本のおかげで和歌とか古文がだいぶ好きになれたと思います((^v^))感謝!

  • 『愛する源氏物語』より俵さんらしくて好き、というのを良く聞くけれど、私はどっちも好きだ。
    こちらは俵さん流の古典解釈をより楽しめる。
    作中に登場する短歌をより深く味わうという点では、源氏物語のほうがよかった気もする。
    どっちにしろ「古典ってこんなおもしろかったのか!」と思えること請け合い。セットで読もう♪

  • 俵万智による、伊勢物語の解説書。

    日曜新聞に連載していたものを単行本化したもの。

    古典の解説書としてもいいが、単にエッセイ・読み物として面白いだろう。
    伊勢物語と俵万智の恋愛観が伝わってくる、楽しい一冊である。

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著者プロフィール

1987年の第1歌集《サラダ記念日》はベストセラー。歌集に《かぜのてのひら》《チョコレート革命》《プーさんの鼻》《オレがマリオ》《未来のサイズ》《アボカドの種》、評伝《牧水の恋》、エッセイ《青の国、うたの国》など。2022年、短歌の裾野を広げた功績から朝日賞を受賞。読売歌壇選者のほか、宮崎で毎年開催される高校生の「牧水・短歌甲子園」審査員もつとめる。

「2023年 『旅の人、島の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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