冬の夜ひとりの旅人が (ちくま文庫)

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制作 : Italo Calvino  脇 功 
  • 筑摩書房 (1995年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480030870

冬の夜ひとりの旅人が (ちくま文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「本を読む私」を意識したことがある本読みならだれでもニヤニヤしてしまうのではないか、と思うメタフィクションだった。まあなんというか、ハッピーエンドなところがカルヴィーノの願望が出ていて微笑ましいです。本読むの楽しいね!

    伊文解釈系の長い長い文章に主語を見失うことも多々あり、読みやすい本ではなかったので星は一つ減りました。

  • とある男性読者が購入したイタロ・カルヴィーノの新作『冬の夜ひとりの旅人が』は乱丁本で、初めの数ページしか読むことができない代物だった。
    本屋に文句をつけて交換を求めると、実はその本の内容はカルヴィーノとは関係のない、ポーランド人作家の『マルボルク村の方へ』という作品の冒頭なのだと教えられる。
    とりあえず続きが読みたいのでそのポーランド人の本を交換してもらい読み始めるが、その本は印刷が途中で途切れている。続きが気になる彼は、本屋で知り合ったミステリアスな美女ルドミッラとともに調査を開始するが…

    男性読者と女性読者の冒険を描く各章と冒頭で途切れる物語が交互に現れる奇妙な形式の一冊。しかも作者が読者に語りかけてきたり、作中の小説家が本書とそっくりな構成の作品を書こうと思いついたりと、なんでもありの幻想ぶりでした。
    読むこととは、書くこととは、そして物語とは何か。相変わらず難解で分かったような分からないようなだったけど、ときどき分かるような気もしてどうにか読み切ることができた。
    世界を股にかける翻訳詐欺師エルメス・マラーナの偽物本物論やロターリアの単語の出現回数を分析する作品論など、興味深いテーマも多い。

    冒頭小説はどれも続きが気になるけれど、『冬の夜ひとりの旅人が』のなぜかトランクの受け渡しに失敗し動揺する工作員(?)の話と、『絡みあう線の網目に』の電話の呼び出し音に悩まされる大学講師の話が特に好みだった気がする。

    あと、日本人作家タカクミ・イコカ(変な名前だ)が書いたという『月光に輝く散り敷ける落ち葉の上に』も面白かった。大学生の青年と、その師であるオケダ氏の妻ミヤジ夫人、さらにその娘マキコの秘密の恋愛を描く、なかなか肉感的な内容だけれど、外国人が銀杏や玉砂利、着物など小物を使って日本っぽさを出そうと頑張っている感じが楽しい。
    日本にありそうな作風だけど、ずっとエッチな展開で、ラッキースケベ的なところが多くてイタリア感は隠せていないような笑
    転んだ拍子に女性の着物の胸元に手が入っちゃうとかラブコメみたいだった笑
    ついでに8章でタカクミ・イコカに作品をパクられたらしいサイラス・フラナリーの台詞「あいにく私は日本語はさっぱりわからないのでね。」は日本語で読むと笑える。

    11章で読むことについて集大成とも思える激論が交わされ、さらに新たな作品が登場したあと12章のあっさりした締めで、思っていたより爽やかで気持ちのいい読了感だった。

  • メタフィクションの作品として、様々な技巧を凝らして物語の断片を提示しつつ、二人称小説と言う特異な形式を利用して様々な仕掛けを繰り出す手法に、また物語の断片を通して次々と繰り出される異なった文体のバリエーションには感嘆させられたが、正直途中で少し飽き始めてしまった。とはいえ、全篇を通して筆者の様々な試みと、書くという行為を通した切実な思いが読み取れる良く出来たメタフィクションだと思った。

  • 2/24 読了。
    「あなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説『冬の夜ひとりの旅人が』を読み始めようとしている」という一行から始まるメタフィクション。<あなた>と語りかけられているのは、モデル読者として設定されている<男性読者>。彼が読み始めた『冬の夜ひとりの旅人が』は、一章が終わると白紙になっていた。書店に講義をしに行くと、同じように落丁本を掴まされたという<女性読者>ルドミッラと出逢い、一目惚れしてしまう。『冬の夜』の続きが読めると言われて渡された『マルボルグの外へ』は一章から全く違う小説であり、<男性読者>はルドミッラにも報告しようと電話をかけるが、それを受けたのはルドミッラの姉ロターリアだった。
    本に書かれているままに読みたいと願うルドミッラ、解釈ありきの研究者ロターリア、インチキ偽作者マラーナ、書けない小説家フラナリー、検閲者、スパイ、果ては国家警察など、さまざまな<読者>が入れ替わり立ち代り<男性読者>を惑わせていく。読む行為とは何かを楽しく考えさせるカルヴィーノらしい小説。<男性読者>と<女性読者>のラブコメ風追跡劇と、<男性読者>が読む作中小説を交互に読むことになるのだが、前者がいちおう直線的に進む物語なのに対し、後者は最後まで一章しか読めない。しかもそれぞれが誰かしらの文体模倣になっているらしい。ボルヘスと川端だけ分かった。追跡劇の方もコメディタッチながら話が進むにつれてジャンルが移動していく。スパイだらけの国でディストピアSFみたいになる章が好き。

    関連本:リチャード・ブローディガン「愛のゆくえ」

  • 小説について語られる言葉が語り尽くされた本書について、これ以上何を語ればいいのだろうか。「小説のいくつかの書き出しだけで構成されたひとつの小説(これすら本文中の引用だ)」である本作は、多数の小説の断片とそれを結ぶ一つの物語から成り立っている実験的な作品であり、物語の断片はどれも世界文学の模倣の様だ。そして幾度も語られる、本について語られる言葉は「こんな風に本を語ってみたい」という言葉を全て先取りされてしまった気分にさせられる。それでも本を読むこと、それを語る事は決して止められるものじゃない。続けよう。

  • 別の板で、作中作が楽しめる本を探している人がいて、調べ物をしているときにひっかかってきました。
    冒頭から、あなた=「男性読者」がイタロ・カルヴィーノの『冬の夜ひとりの旅人が』を読んでいる……
    おまけにその本は乱丁で、取り替えてもらった本は最初の本の続きではない別の物語。
    物語の断片に魅せられ、追い求めては見失う。
    綺麗には終わらないような話ですが、断片がたくさんあるので、なんか、無人島とかに持っていくのはこういう方がいいかもしれないと思った。

    カバーデザイン / 鈴木成一
    原題 / "Se una notte d'inverno un viaggiatore"(1990)

  • 文学の魔術師の力を体感するメタフィクション。あなたは次々に始まる小説群の続きを探す男性読者として、女性読者ルドミッラの影と、小説の続きを求め彷徨い、そして唐突な終わりを迎える。メタフィクションのパートは創作の苦しみの体験でもあるし、非日常への逃避行でもある。凝った仕掛けでとても楽しい作品だった。10本のタイトルの仕掛けには気付けなくて悔しかった。

  • すごく楽しい読書時間だった。何というか、久々に仕掛けに凝った本を読んだ。著者の着眼点や物語を展開していく手腕に感心した。
    これは「あなた」という二人称でつづられる小説。つまり主人公は読者自身であり、これはメタフィクション系の物語だ。物語は冒頭、「あなた」はイタロ・カルヴィーノの「冬の夜ひとりの旅人が」という小説を読みだすところから始まる。
    しかし読み始めた小説は落丁本で、物語は途中で途切れている。読書の楽しみを中断されて憤慨した「あなた」は本屋に行って本を取り換えてもらう。だが受け取った本は最初の「冬の夜ひとりの旅人が」とは全く別の内容で、しかもこれも途中で途切れてしまっていた。二つ目の小説の続きを求めて、彼は大学の教授と知り合う。教授は「チンブロ語」という言語で書かれた物語を訳しながら朗読してくれるのだが、それは二つ目の小説とは全く内容が違った。しかも朗読してくれた続きは散逸されていて手に入らないという。三つ目の作品を別の言語に翻訳したものがあると聞いて研究会に赴くが、そこで出会うのはまたしてもそれまでの三作のどれとも違う小説。しかもまた途中までしかなくて――という繰り返しがこの作品の主筋。
    「読んだ本の続き」を求める「あなた」の話と、「あなた」が実際に読んだ作品たちとが交互になった構成。作中作のそれぞれの話は有名な作家のパロディになってるらしく、確かにタイプの違う作品ばかりだ。日本人作家は誰のパロディなんだろう。雰囲気的に谷崎か川端かな。
    いずれにせよどの作中作も面白くて、続きを読みたい「あなた」の気持ちがよくわかる。また、本を巡るストーリーを追ううちに、自然に「理想的な読者とは何か」、「自分は読書に何を求めてるのか」ということを考えてしまった。
    私は小説を読むときは、その作品世界そのものを楽しみたい。
    作家買いはするが、それはあくまでその人が生み出す作品群に惹かれるからであり、作品を楽しむために欲しい情報にすぎない。だがそれは私の「読み方」であり、読み手によって望むものが異なるんだろうな。そう色々考えるのも楽しい。

    本を読んでいる間、同時に「読書している自分」をこんなに意識したのは久々かもしれない。

  • 世界の終わりとワンダーランドに似た構成
    河田学先生推薦本

  • 923夜

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