まるごと好きです (ちくま文庫 く 16-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480031464

感想・レビュー・書評

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  • 友達、について、本一冊分を使ってじっくり考えた本。

    私ってどうやって友達を作って、どういう風につきあってきただろう?という一人の人間の思考が、こんなに深く幅広いものになるものだろうか。
    具体的な思い出を挙げながら平易な言葉で綴ってあるので、全然むずかしいことのような気がしないんだけど(まさに工藤さんの詩のように)、これはすごいと思う。

    一番すてきなのは、「私はこうだったな」「私はこう思うな」と言いながら、それに対立するような、別の友人の話も載せて「それもそうかも」とどっちにも納得していること。これぞ彼女の「まるごと好き」。ぜんぜん、否定しないのだ。だから彼女の友人付き合いに感動すら覚えながら、読み終わったあと自らを省みて「それに比べて私の交友歴なんて」などと卑屈になることがなかった。むしろ励まされさえした。

    「まるごと好き」は安心する。
    悪いところばかりに目をつけて、あれやこれや物申すよりも、人のいいところを探してそこに「ぱちぱちと拍手を送る」。能天気なようだけれど、いや、能天気でないとできないのかもしれない。たぶん、肯定するより否定するほうが簡単で、自分のほうが上であるかのような気になれるのだ。
    誰かをほめるということは、その人が自分より優れたところがあると認めることで、それをしてもなおかつ見比べて自分を卑下しないポジティブさが必要だから。そうでないと、あらゆる人が自分より上に見えてやってられない。

    「何かを否定することで自分が上に立つ」のは、簡単だし、気分がいい。
    飲み屋で友達相手に一席ぶってるだけならいいのだ。
    最近それが、ネットという広大な空間で、ひとりひとりの小さな一席があっという間に喧々囂々の議論になって、そんなつもりじゃなかったのに大炎上、ということがよくある。
    だから、今、「まるごと好き」はすごく大切じゃないかと思う。

    全然話は飛ぶけれど、TBSラジオのウィークエンドシャッフルという番組には、毎週映画を一本批評するシネマハスラーという人気コーナーがある。ハスリングするメインパーソナリティの宇多丸さんが、言っていた言葉が印象的だった。

    「(毎回映画を決める時の)さいの目で、うーわこれかよお、みたいに騒ぐこともあるけど、ぼく毎回ちゃんと期待して観に行ってますからね。前回がどんなに駄作だったシリーズでも「今回はおもしろいかも」って思ってますからね」
    「見ないうちから、人の意見だけでテンション下げたりなんだかんだ言ったりとか、してちゃいかんなと。まだまだ修行が足りねえなと思いました。」

    初めてのものに対して、まず肯定から入る。
    いらない先入観は廃して自分の目だけで見てみる。
    それが私が今目指していること。
    その上で、自分の評価軸をもっているひとは、もちろんマイナスのところも見えると思うのだ。でもそれはそれでいい。
    最初から否定で入って、もしかしたらおもしろいかもしれないものや、今までの自分の軸では評価しきれないような新しいものを、見逃してしまうのはもったいないと思うのだ。
    そしてたぶん、まだまだ知らないものだらけの世の中だ。できるだけたくさんのものを好きになりたい。八方美人じゃなくて、どんなものにもいいところはある、それを知らないなんて悔しいから。

  • 多分、中学で転校したときに借りてきて読んだ本。単行本のピンクの表紙が印象的だった記憶があり、この季節になると、何となく読み返したくなる。と思いながら、ついに出あえず読んでいなかったのだけど、偶然文庫版を発見。読み返してみたら、なんと作者自身も転校が多かったのだと知り、それで選んだっけ~と、当時の自分をおぼろげに思い出す。かつてこの本に元気づけられた自分に今の自分が重なる。

  • そっか、工藤直子って、博報堂にいたのか。ていう、根本から、スタートして。いい顔している人は、やっぱりいい文章書くなぁ、ということを思うに至る。松本大洋の母、さすが。(12/7/28)

  • 中学生の時に読んだ本。実家にハードカバー版がまだあるはず。二十数年ぶりに文庫本で読み返す。中学生の時にかなり衝撃を受けた箇所、大人になって改めて読むと涙が止まらなかった。

  • 小学生の教科書に登場する、詩集『のはらうた』の作者による
    『友だちの作り方、関わり方』について、作者の経験と作者の
    友人達のエピソードを交えて書かれたエッセイ。

    『のはらうた』の作者らしく、人間以外の友達(草や樹木、虫
    ……などなど)のエピソードもあり、とても読みやすい。
    友達について、自分のことについて。。。悩める思春期を
    送っている子供たちに、一読をお奨めしたいと思った1冊。

  • ク 16 1

  • 私がまるごと好きなあの人から貰った詩
    私があの人に贈った詩
    どちらも偶然に登場して、胸が締め付けられた。

    まるごと愛すなんて事は私には出来ないだろう。
    でも、人に出会った時に"まるごと愛す"を思い出す。
    そうすると、少し、こころが凪になる。

  • 誕生日に職場の方からいただきました。タイトルがいーね☆友情とは。ライバルとは。自分とは。自然や自他に対するいろいろな付き合い方が描かれている。「六人きょうだいの末っ子」で当時の引越し経験回数は「四十二回」という著者。すごいよね。そこで本人が得た自分の見せ方、人との付き合い方、お友達の話は参考になります。自分も他人も「まるごと好き」と言えたらいいよね。

  • たくさんの言葉が詰まっています。
    きっと本当に誰もが共感できる
    そんな文章。

    なにか
    やさしさを教えられているような
    あたりまえを教えられているような

    友達について語っているけれど
    きっと全部自分だって事をこの中に見た気がします。

    文章も読みやすくて、綴られた言葉が美しいので
    本当にたくさんの人に読んで欲しいと思った本。

  • バイブル。この本を読んだおかげで今の私がいるようなもの。

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著者プロフィール

台湾生まれ。お茶の水女子大学中国文学科卒業。女性初のコピーライターとして活躍した後、詩人・童話作家に。『てつがくのライオン』(絵・佐野洋子)で日本児童文学者協会新人賞、『ともだちは海のにおい』でサンケイ児童出版文化賞受賞。野原の生き物や自然が躍動する詩集『のはらうた』は、子どもたちに愛され、ロングセラーとなっている。『ねこはしる』『まるごと好きです』など、多くの詩集・絵本・エッセイがある。

「2020年 『女声(同声)合唱とピアノのための いのちへのオマージュ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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