私はそうは思わない (ちくま文庫 さ 5-3)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480031532

感想・レビュー・書評

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  • 「100万回生きたねこ」を描いた人。

    私が小学校2年生の時に、母が「よい絵本だ」と聞いて私に買ってくれた。
    私は読んでみたけど、別に良い絵本だとは思わなかった。
    よい絵本がなんだかよく分からないし。
    愛とか死はもちろん「猫が死んでかわいそう」とかも思わなかった。
    みんな猫が死んで悲しんでるのに、猫は悲しまないで、なんだか猫に怒ったらいいのか、猫が死んだことをやたらに悲しむおばあさんや海賊に怒ったらいいのか、気持ちの持って行き場がよく分からなかった。
    だから、何も感じていないような気持ちになった。
    白い猫に死なれて、オス猫が生き返らなかったことはすごく当たり前のことのようにも思えた。

    大きくなって、いわゆるサブカルっぽい友達が「100万回生きたねこ」やばい!と言い出したので、そうか、あの本はやばい(良い)本なのかとか、なんとか。思うようになっていた。

    佐野洋子さんのことは「100万回生きたねこ」でしか知らない。
    勝手にすみれ色のおばちゃんを想像していた。
    柔らかい、でも人生を透徹した鋭い目を持っている人。

    でも、この本読んだら全然違った!
    鋭い目じゃなくて、鋭い心を持ってた。
    決して柔らかくなんかなかった。
    このエッセイを読んで、佐野洋子さんが幼かった私を諭そうとして「100万回生きたねこ」を描いたのでないことはよくわかった。
    まだ子どもだったときの私には佐野さんの動揺が伝わっていたのかもしれない。
    死んじゃうって…(オロオロ…)
    死んじゃうと悲しいって…(オロオロオロオロ…)
    佐野さんはそんな風にして自分の心伸びやかいっぱいに絵本を作ってたのではないか。
    心伸びやかは決して、健康なことではない。
    人が感じることには不健全なこともたくさんあるからだ。
    でも、それが人だろ。

    私が驚いたのは、佐野さんがあまりにもたくさんの子ども時代の記憶を抱えていることである。
    私は、きっとエッセイを書けと言われても、こんなにたくさんの子ども時代を引っ張りだせない気がする。
    愚鈍に生きていたのかもしれない。
    でも、佐野さんが言うように、子どもの頃の私は毎日懸命だったな。
    自分でも知らないことだったけど。

    「100万回生きたねこ」に今の私が初めてであっていたら、
    「何かを感じなくてはいけない」ことに必死になったかもしれない。(良い本だって言われてるのを知ってるから)
    子どものときに初めて出会えて、漫然と感じるだけの感じ方で良かったと思う。
    あの頃、出会えて良かった。

    それがたぶん私の精一杯の感受性だったのだから。それでいいのだ。

  • まえがき のかわりの自問自答 のなかの、  捨てられないものがありますか という問に、愛する男に捨てられても、人を愛したいという気持ちを捨てることは出来ないと思います。世界中の誰一人私を愛してくれなくても、誰かを愛したいという気持ちだけは(あー、これボン悩ってものですか)執念深く毒ガスの様にブツブツわいて来る様な気がします。 という答えを読み、強い、強すぎる、と思いました。

  • 1996年の本ですが。

    ---ネタばれ---
    それにしてもテレビはどうにかならないものか。ガキのごきげんばかりとって、あれ見ていると誰でも大人になりそこなう。('83)
    ---ここまで---

    ある種の現実が、歯切れよく綴られている。
    ときには「?」な部分もあるけれど、女性の現実はこういうものか、と思ったり思わなかったり。

    物事をあれこれ考えて迷宮に入りがちな方におすすめ。

    払ってもいい金額:700円

  • 再読です。まず、タイトルがスゴイですよね。
    「私はそうは思わない」て。素敵ですわ。いや、私かてそう思てます、ええ、思てるだけ。ちゃっかり長いモノにぐるぐる巻かれてます

    佐野洋子さんは「そうは思わない」けど、何かと戦ったり誰かを否定したりではなく、ご友人達に感謝しながら激動の時代を生き抜いてきた様子が淡々と書かれています。物凄い真摯で、奥深いです。
    後ろのほうに、他の作家さんの作品の解説をしたのが載ってて、面白かった。田辺聖子さんの「風をください」を読んでみようと思います。

    あとがきに
    “この世はみにくく、めちゃくちゃでくそいまいましいが、しかし限りなく優しく美しくおごそかに、衿を正してひれ伏したい程素晴らしい。”
    とあった。こんな謙虚で真面目な人が人生を必死で生き抜いて来たからこそ、こういう飄々としたエッセイが書けるのでしょうか。

  • 題名からしてもう、生きる力をもらえる感じ。
    女の20代以降は変化ばかりで、でも気を遣わなきゃいけないのは変わらなくて、苦しくなってしまうのだけど、
    私は私でいいんだと、作者のエッセイを読んで、軸を持ち直す感じ。

  • 佐野洋子さんのエッセイは若い頃に「私の猫たち許してほしい」を読んだことがあった。その時も思ったように記憶してるけど、シンパシーを感じる。
    私も「私はそうは思わない」タイプだし、「私はそうは思わない」は「私はこう思う」というのとは少し違うという見立てもガツンと来たな。そうそう!そうなのよ!と私もそう思ってしまった。

  • 2017.1月。
    痛快。こんな強さを持って生きていけたら。息子さんとの関係がいいんだよなあ。 .

  • 2014 3/2

  • 力のあるエッセイでした! やっぱし戦争を経験した世代の人の書く本というのは…戦後とか知らない人が書いた本よりかはるかにパワーに溢れている…そんな感慨を抱かざるを得ない本でしたね。

    ヽ(・ω・)/ズコー

    著者のエッセイはこれまでも何冊か読んでいますけれども、いくつか重複している話がありますね。まあ、いいですけれども…

    エッセイについての感想って難しいんですけれども、なんというか…物質的に豊かになっていく日本。その中で生きる日本人の精神の変質というか…そういうものをかなり危惧されておられましたね、著者は。そして、著者が危惧した通り、現代日本は沈没に向かっているかのような…そんな社会情勢だと思うのは僕だけでせうか…。著者の先見の明には、してやられた感じが拭えませんね、僕などは。今後、日本はどうなっていくのでせう…そんな不安な気持ちにさせられた著書でありました。おしまい。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • 佐野洋子のエッセイは、ファンは多いと思う。
    なぜだろう?

    きちんと、物事に向き合うという姿勢が感じられるからかもしれない。
    斜に構えることなく、開き直るところは、しっかり開き直ったり、
    感じたことをストレートに表現したり。

    そのあたりが共感を生んでいるのかもしれない。
    彼女が遺してくれたものに感謝です。

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著者プロフィール

1938年、北京生まれ。絵本作家。ベストセラー『100万回生きたねこ』のほか『おじさんのかさ』、『ねえ とうさん』(日本絵本賞/小学館児童出版文化賞)など多数の絵本をのこした。
主なエッセイ集に、『私はそうは思わない』、『ふつうがえらい』、『シズコさん』、『神も仏もありませぬ』(小林秀雄賞)、『死ぬ気まんまん』などがある。
2010年11月逝去。

「2021年 『佐野洋子とっておき作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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