シェイクスピア全集 (7) リチャード三世 (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480033079

作品紹介・あらすじ

「口先で奇麗事を言う今の世の中、どうせ二枚目は無理だとなれば、思い切って悪党になりこの世のあだな楽しみの一切を憎んでやる」。世界を憎悪するリチャードは実の兄を陥れ、殺した敵の妻を口説き、幼な子を惨殺し、利用しつくした臣下はごみのように捨て-。奸計をつくして登りつめた王座に、破滅はあっけなく訪れる。爽快なまでの「悪」を描いた傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 初めてのシェイクスピア!

    去年海外ドラマで薔薇戦争やヘンリー八世にはまったので、ついにシェイクスピアを。
    いくつか有名なセリフが出てくるのだが、全て初耳(初目?)。
    今までシェイクスピアといえば「恋に落ちたシェイクスピア」止まりだもの...
    教養の低さね...

    リチャードがまだグロスター公だった頃から、悪巧みや人を始末してしまうところなど数々の悪が描かれているが、最期はあっけない。
    あんなに切望した王冠が3年ほどでチューダーに。
    裏表や野心は誰にでもあるし、時代や王家に生まれたこともあってあまり憎めず、そこまで悪い人には思えなかった。

    エリザベスが、憎いはずのリチャードに説得されて娘を結婚させるように翻意するのがえっ?!と思わずにはいられなかった。
     息子二人や兄弟を殺された相手に娘を?!
    父を殺されたアンも、罵っていたはずのリチャードに口説かれて結局結婚しているし、リチャードは口が上手く、意外と女性受けが良いのかもしれない。

    少し前に遺骨が発掘され顔も復元されたリチャード三世。
    あまりに醜く悪意に満ちた王として知られているのは気の毒に思える。
    歴史は勝者が作る(創る)ものだし、シェイクスピアの作品があまりに有名で、名誉を挽回するのは難しそう。
    エリザベスの二人の息子を殺したのも、本当にリチャード三世か分からないしね。
    今後新しい資料などが見つかって、本当の姿がわかることを期待!

  • ジョセフィン・テイ「時の娘」を読むための予習。登場人物に似た名前が多く、姻戚関係もあって複雑なので、巻末の系図や脚注を見ながら読んだ。

    たしかにリチャード三世は極悪人として描かれているが、コンプレックスを抱えてひねくれてしまった悲しさも感じた。悪人ではあっても、やっぱり悲劇の主人公だ。

    印象に残ったリチャードの台詞。
    「絶望だ。誰一人、俺を愛してはいない。
    誰一人、俺が死んでもあわれみはしない。
    当然だ。俺自身、
    自分に何のあわれみも感じない。」

  • ちくま文庫版シェイクスピア全集第7巻。薔薇戦争の終結に至るまでの野心と悪行を描くピカレスク(悪漢)ロマン。

    初めての史劇で、序盤は込み入った家系図に四苦八苦。前作にあたるらしい『ヘンリー六世』の出来事を踏まえているのもあり、予備知識がないとつらいようにも思えた。しかし、ある程度の人間関係を把握してしまえば、意外にわかりやすいストーリーでややこしいことはない。なにしろこのリチャードくん、憎しみと奸計に満ちた悪党。いさぎよいまでの極悪非道っぷりを見せてくれるので、結末が自ずと見えてしまうのだ。膨張していく風船が最後にどうなるかは自明。本作は、その膨らんでいく過程が見どころであり、味わい深いところなのだろう。リチャードに殺された人々が亡霊になって彼を弾劾し、リッチモンドを励ます夢を当人二人が見る、というところには何か王道味を感じる。わかりやすいストーリーに薔薇戦争の終結という結末は、歴史的興味を抱かせる、初めての史劇にふさわしいタイトルだった。

  • 2017年17冊目。

    『ヘンリー六世』の終盤に不穏な言葉を放ったリチャード三世が王位を狙った史劇。
    見た目からも言動からも際立った悪役で、強烈な印象を残す。
    悪役ならではの策に次ぐ策。
    市民たちの前で聖人ぶる姿は見事でありながら滑稽で見所。
    二者のやり取りが対になってリズミカルに交わされる場面が多く、
    心地よいテンポとうまい言葉遊びに舌を巻く。

  • 訳者あとがきとか解説とかを先に読んでから読み始めれば良かったのかもしれない。とにかくまあなんでこんな悪者が主人公になるのだろう、とそんなことを考えながら読んでしまった。で、自分なりの解釈は、そう言えば日本であっても戦国武将(ほとんど知らないが)の中には悪党で魅力のある人物もいただろう、それと同じようなことなのだろうということ。本当に簡単に人を殺してしまう。その辺の感覚はいまとはずいぶん違っていたのだろうなあ。それで、解説を見ると、主人公は身体に障害があったのか、醜悪な容姿ということ。まあ、それも事実かどうか、シェイクスピアが誇張しただけなのか、そのあたりは分からないが、その辺からくる世の中へのうらみつらみなど、いろいろとあるのかもしれない。歴史を全く理解していないので、どこまでが史実に基づくものかもわからない。でも、歴史的な背景を知った上で舞台を観れば印象もずいぶん違うのかもしれない。やっぱり教養は必要だなあ。ところで、ずいぶんと「馬」が強調されていて、蜷川の舞台でもそのあたりに力が入れられているようだが、読んでいるときには全く気付いていなかった。うかつである。

  • シェイクスピア全集 (7) リチャード三世
    (和書)2009年04月15日 15:57
    1999 筑摩書房 W. シェイクスピア, William Shakespeare, 松岡 和子


    翻訳の読み比べなどが楽しい。福田恒存と松岡和子の読み比べをしています。正義の論理で悪を貫くところが見所です。悪に見えて善。善に見えて悪という、その諸関係が織りなされていてそこが非常に面白いです。

  • シェイクスピアの悲劇。
    あまりにも有名すぎて冒頭部分だけは知っていたのですが、しっかりと読み進めたら想像以上の悲劇の連続。シェイクスピアらしい言葉での語り口調にはまってしまい、どんどん引き込まれた。登場人物の会話で展開していく方式で話が進んでいくので、シェイクスピア聞いたことあるし、読んでみたいけど、読みにくそうと思っている人こそに読んでもらいたい。

  • 『ヘンリー六世』の終盤で既に残忍な性質を顕著にしていたリチャードは、さっそく目ざわりな兄たちを陥れようと企む。解説でもある通り、リチャードが自分の醜さ、劣等感や冷酷な陰謀を披露する“悪党宣言”のつかみは抜群。
    故ヘンリー6世妃マーガレットや、王子二人を殺された前王妃エリザベス、生みの母らがリチャードに浴びせる呪詛の圧が凄まじいのだが、それにビクともしないどころか愛嬌すら感じさせるリチャードの不敵な斬り返しが非常にスリリングで、実際に俳優が演じるのを見てみたくなった。悪党には当然の末路ながら、最期の「馬を!」の叫びは滑稽でひどく痛ましく、改めて凄い台詞だと思った。

  • "A horse! A horse! My kingdom for a horse!"
    「馬をよこせ!馬を!代りに俺の王国をやる!馬!」

    脚注に「この戯曲で最も有名なセリフ」とある。

    リチャード三世は悪の権化として描かれている。競争者を欺き、陥れ、暗殺し、弁護のしようもない。

    ではなぜリチャードはイングランド王の地位を望んだのか。冒頭の独白はあるが、動機としては弱い気がする。

    思うにリチャードは王国そのものはどうでもよく、周りに映るライバルや裏切者や不安材料を振り払いたかったのではないだろうか。
    そこで最後のライバルであるリッチモンド伯を追いかけるための馬を欲した。
    王国を手にするためにその手をあまりにも血で汚し過ぎた代償として、どんな競争者であっても完全な勝利をおさめない限りは生きていけない...そのことを自覚しているからこそのセリフだと考えると、「共感できる悪党」という評価もわかるような気がする。

  • あれほどまでに人を裏切り、殺した末に玉座に着いた男が、その死の間際に欲したのが一頭の馬だったという虚しさ。リチャードの最後の台詞が、この物語の全てではないか。

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