シェイクスピア全集 12 タイタス・アンドロニカス (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480033123

感想・レビュー・書評

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  • 殺人に次ぐ殺人、復讐と制裁の連続。
    これらから始まり、途中中だるみかと思いきや
    最後に怒涛の殺人ラッシュ。
    そして残虐な刑。
    あの人もこの人も皆死ぬ!

    こんな凄惨な応酬の中でも言葉は格調高く、
    言葉遊びも凝っていて
    それがブラックさを増している。

    予定調和の大団円を迎えた『ペリグリーズ』の直後に読んだので落差が著しい。

    ギリシア神話の知識がある程度必要なのは他の作品と一緒。
    今回は『変身物語』内の
    「テレウスとプロクネとピロメラ」が最後までかなり重要な下地。

    異なる場所での出来事が同時並行する感じがシェイクスピアらしい。

  • 人間の凶暴性、無秩序な欲求、社会の理不尽さを感じた。タイタスが、戦死したものたちの弔いのために、敵方の女王タモーラの息子たちを殺し贄としたのが全ての始まりだった。タモーラと残された息子たちは復讐を誓い、娘を強姦され息子たちも殺されたタイタスもまた終わりのない復讐に身を投じていく。悲劇よりも残酷さが際立った作品だった。

  • シェイクスピアの中で際だって猟奇的な作品。ただし各エピソードや全体の構成は、他の作品でお馴染みのものが多く、いつも通りの素材を新鮮に味付けするため、強烈なスパイスを用いたのではないかとも思える。また、黒澤明の映画『乱』は、『リア王』をベースにしているが、楓の方の原型は本作のタモーラであることがよく分かる。

  • Original title:Titus Andronicus.
    Author:William Shakespeare.
    Titusは娘を強姦され両腕と舌を切られた悲しみと怒りで、
    Gote王国の二王子の首を掻っ切り、その血肉で調理し彼達の母后Tamoraに晩餐として供すその様は、
    封神演義の伯 邑孝が皇妃に身体を切り刻まれ、
    その血肉を調理し、彼の父に供した事を思い出しました。

    前作もそうですが今作も黒人劣勢の描写があり、
    William Shakespeareが生きていた時代は、その様な時代であったと推察出来ます。
    ある意味平和であったのは広範囲に亘る帝国を築きあげた
    Imperium Romanumの頃であったのでは…と思う事が多々感じられます。

    元々捕虜としてTitusにRomaへ連行されたGote女王Tamora。
    彼女からすれば長男の死刑で彼に慈悲を請うたのにTitusに阻まれ、
    その悲しみを胸に秘めRoma皇妃となり、彼達一族を滅ぼす決意を固め、
    この様な巡り巡って国の頂点である主要人物が全員殺される惨劇が招かれました。

  • 2017年19冊目。

    ローマ皇帝・ゴート人の一家と、ローマの武将アンドロニカス一家の壮絶な憎悪劇。
    『マクベス』や『ハムレット』も「悲劇」と言われるが、
    シェイクスピア初期のこの作品の残酷さはそれをはるかに上回った。
    「道化」は両方の陣営を行き来する役目を負えると何かで読んだが、
    この作品で言うと、エアロンはまさに道化そのもの。
    返答をする間もない命令が多く、喋ることが奪われた人物が出てくるなど、
    「沈黙」がこの劇を通しての特徴であるというあとがきにも納得。

  • とても残虐的な ドロドロでスプラッター的な 話です。これは舞台でやるにしても 日本だったら歌舞伎的な気がします。歌舞伎で観てみたい・・

  • 少し言い回しが冗長なところがあるが、面白い。
    手を切断するとか、舌を切り取るとか生首が出てくる等残虐なシーンが多数ある。

  • アニメPSYCHO-PASSにて引用されてたので読んでみました。読んでみると、さっきまですごく褒めてた人を次の瞬間には激怒して殺したりとか、登場人物の感情が唐突に変わったりするので、付いていきにくいところはありました。劇作品はこういうものなのかな。シェイクスピアは、過去に何作か読んだけど、ギリシャ神話や昔の物語からの引用も多いし、人の名前は覚えにくいし、難しいですね。「あらすじで読むシェイクスピア全作品」という本も買ったので、こちらで勉強したいと思います。

  • シェイクスピア作品の中で最も残虐といわれている戯曲ですが、そのせいかポピュラーな新潮や角川、岩波の文庫では収録されていません。野望や復讐がモチーフなのは他の悲劇作品も同じだけれど、古代ローマが舞台のせいか、よりいっそうギリシャ悲劇的なえげつなさがあるのかも。

    悪役とはいえ、大物感のある女王タモーラと、その情人エアロンは、悪っぷりが徹底していてブレないので、そのようなものとして割り切れるのだけれど、同じ悪党でも親の七光りで小物感の強いタモーラの二人の息子には正直あまりのクズっぷりに嫌悪しか感じられず、殺されて挽肉にされてパイに焼かれそれを母親に食べさせる・・・という悪趣味極まりない最期にも全く同情できず、むしろ痛快と思ってしまう自分が怖い。この二人のクズ息子たちに夫を殺され、強姦されたあげく、それを隠蔽するために舌を切られ両腕を切られたラヴィニア(タイタスの娘)の受けた屈辱に比べたら!(憤)

    そういう意味では、悲劇ではあるけれど、悪人は殺されて復讐が完遂されるという一種のカタルシスがあり、他の悲劇よりもわかりやすく単純な構造なのかも。

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著者プロフィール

イングランドの劇作家、詩人であり、イギリス・ルネサンス演劇を代表する人物。卓越した人間観察眼からなる内面の心理描写により、最も優れた英文学の作家とも言われている。また彼ののこした膨大な著作は、初期近代英語の実態を知る上での貴重な言語学的資料ともなっている。
出生地はストラトフォード・アポン・エイヴォンで、1585年前後にロンドンに進出し、1592年には新進の劇作家として活躍した。1612年ごろに引退するまでの約20年間に、四大悲劇「ハムレット」、「マクベス」、「オセロ」、「リア王」をはじめ、「ロミオとジュリエット」、「ヴェニスの商人」、「夏の夜の夢」、「ジュリアス・シーザー」など多くの傑作を残した。「ヴィーナスとアドーニス」のような物語詩もあり、特に「ソネット集」は今日でも最高の詩編の一つと見なされている。

「2016年 『マクベス MACBETH』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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