命売ります (ちくま文庫)

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著者 : 三島由紀夫
  • 筑摩書房 (1998年2月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480033727

命売ります (ちくま文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 三島の作品の中ではあまり知られていないが
    1968年、週刊「プレイボーイ」に連載された
    ハードボイルドでエロチックなエンタメ小説である。

    自殺に失敗した27歳の広告マン羽仁男は
    「命売ります」と新聞広告を出す。
    一度死んだ彼にとってこの世はもはや
    ゴキブリの活字で埋まった新聞紙にすぎない。

    だがなかなか命を売り切ることはできず
    次々と依頼が舞い込み
    さまざまな男女に関わるうち
    人間という不可思議の渦に巻き込まれて行く。

    エンタメ小説として最上級に面白いが
    そこは三島である。
    テーマは「死」だ。

    あの衝撃的な最期ゆえに
    私にとって三島は「死」そのものであり
    同時期に「豊穣の海 第二編 奔馬」を
    書いていたことを考えても
    簡潔な言葉の奥には
    人として生まれてきたことへの
    やりきれない絶望が見えてならない。

    純粋を求めれば存在の否定という無に行き着く。
    しかし無になりそこねれば
    人の世からハラリと剥がれたまま
    身の置き場もないままに
    時だけが過ぎて行く。

    生から剥がれないよう
    必死でしがみつくのが人生であれば
    しがみつく意味が見いだせないと
    手を離したくなるものだ。
    だが一度手を離したら最後
    たとえ無になれなくても
    もう元には戻れない。

    桜の花びらが排水溝に吸い込まれて行くように
    羽仁男はいともたやすく
    生に執着する者たちの世界に落ち込んで行く。
    集団としての彼らはあまりに強固だ。
    なぜなら自らの「無意味」に気づいていないからだ。

    1968年。日本人が自由をはき違え、
    アイデンティティを一気に失って行った時代。
    やはり羽仁男はまぎれもない三島なのである。

    ところでこの作品は多分映像化されると思うのだが
    羽仁男役は松田龍平さんがいいと私は思う。

  • 2017/08/26
    面白くって1日で読んでしまった。
    三島由紀夫がこんな作品を書くなんて知らなかったなぁ。
    瑛太やら松田龍平やらで実写化しそう。笑

  • 途中まで面白かったんだけど、主人公が命が惜しくなってきてからがうーん。たしかにいろんな重しを取っ払っちゃえば、無敵なのかもしれないけどそれじゃ味気ないやね。死に向かって生きてる、それをいつも意識して生きろって池波正太郎さんが言ってたけど、まさにそれだなと。著者が込めたかもしれない観念的なことはよくわからんないけど、シンプルかつ逆説的な考え方に気づかせてくれた小説でした。

  • H29.8.9 読了。

    ・自殺に失敗した青年が、どうせ一度はないものと思った命、いっそ誰かに買ってもらおうと「命売ります」の新聞広告を出す。ここから物語は展開していく。生と死に縛られない生き方、逆に生と死に捕らえられた生き方・・・考え方ひとつでここまで腰の据わり方が変わるのかと考えさせられた。
    ・作品自体はとても読みやすかったが、結末が尻すぼみで残念な印象。

  • 三島由紀夫を、自覚的に読んだのは初めてな気がする。その作品がこんなエンターテイメントでよかったのか??グイグイ読みすすめられる。この本の前に読んでた本が「世界悪女物語」で、悪女すごいな、と思ってましたが、この本に出てくるご婦人たちも全然負けてない。個人的には、ステレオタイプ的図書館司書が出てきて苦笑しました。やっぱりこういうイメージなのか、と。
    とにかく、昭和の一時代の粘り気のある人間関係と、それを忌避するところから来るニヒリズムがぷんぷん匂ってくるような本だった。

  • 三島由紀夫らしからぬ小説。
    読んでいて本当に三島由紀夫が書いたの?と思わず疑いたくなってしまうほどでした。
    『春の雪』のような文学も書くし、『命売ります』のようなエンターテイメント性溢れる小説も書く。
    そして、どちらの作風でも、読者の心をしっかり掴んで離さない・・・彼の凄さを改めて思い知った感じです。
    読みやすくて面白い!所々に独特な美しさ溢れる文章表現も出て来る!数ある彼の小説の中でも安心して人に薦めることが出来る一冊だなと思いました。
    文学的ではないという点も、特に初めて三島作品に手を出そうとしている方に薦めやすくて良いなと。

  • 三島由紀夫の言葉選び、うるさいくらいにそのセンスを感じる。声に出して読みたくなるようなアーティスティックな詩的な文が2、300ページの中に所狭しと詰まってる。
    何回生まれ変わっても、何度頭をぶっても「温かい毛だらけの恐怖」だったり「赤いポストが雪の綿帽子をかぶっている、あんな具合に、死がすっかりその瞬間から、彼に似合ってしまったのだ。」なんてフレーズは出てこない。詩的表現の泉。美しいものをこうも美しく、醜いものをこうも醜く表現できるなんて、ジーニアスオブジーニアス。

  • 三島由紀夫って重いとか難しいってイメージを持っている人にこれは読んでもらいたい。
    かく言う私も三島と言えば数冊読んだイメージがそういうものだったから、この帯を見て買って読んでみて良かったと思ってる。表現の美しさは残しつつ、小難しさを抜かした読みやすいエンタメ小説。純粋に面白かった。

    自殺に失敗して病院のベッドで目覚めた27歳の羽仁男は、どうせ捨てるつもりだった命だと思い、その命を売ることに決めた。そして新聞広告に出して待つと早速客がやってくる。
    羽仁男は依頼された仕事を遂行するために動き出すのだが…。

    自分の思想のために若くして自害した三島の、命や死に対する考えが描かれているのかなと思った。
    彼はけして命を軽んじていたわけではないし、死ぬのが怖くなかったわけでもないのかもしれない。

    命に限らず、執着が無くなると恐れも無くなるけれど、僅かでも執着が生まれた瞬間、それをなくすことに対する恐怖も生まれる。
    死ぬのが怖いと思うのは健全な証拠で、そういう感覚が薄れてしまうのはとても恐ろしいことなのだと思う。

    羽仁男の心理の変化はとても人間臭くて、最後は情けないと思えるほどだったけれど、そこが不思議と好もしかった。
    羽仁男に関わる女たちはみんな少しずつ壊れていて魅力的。変なのに色香がある。

    三島由紀夫の著書にはこういう堅くなくて深く面白い小説が他にもあるらしい。見方ががらりと変わった一冊でした。

  • 三島由紀夫全集のなかに入っていた。
    読んだことをすっかり忘れて読みふけってた。
    100pくらいまでは。

    読みながらだんだん思い出してきたのだが、
    一回目とは違う箇所に心惹かれる。

    読書は一度ではやはり無理なんだなあ。
    見落とす生き物なんだなあ。

    むっちゃくちゃおもしろいやん、
    と一回目も思ったのは同じだけど。

  • 天才小説家としての三島由紀夫の心境を少なからず表しているのだろうと考えた時、ラストの主人公の姿の解釈としては、絶望や恐怖に苛まれながらも生きていくしかないということなのだろうか。
    どんなに辛い境遇の人が存在しても、人はやはり命が惜しく、世の中は何もなかったように1日を終え、人々は自分の居場所を探し、自分で何とか生きていかなければならないということを感じた。

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命売ります (ちくま文庫)の作品紹介

目覚めたのは病院だった、まだ生きていた。必要とも思えない命、これを売ろうと新聞広告に出したところ…。危険な目にあううちに、ふいに恐怖の念におそわれた。死にたくない-。三島の考える命とは。

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