江戸川乱歩全短篇 1 本格推理 1 (ちくま文庫 え 7-2)

著者 :
制作 : 日下 三蔵 
  • 筑摩書房
3.93
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本棚登録 : 116
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (569ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480034113

感想・レビュー・書評

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  • 短編の推理物は未完成な感が否めないものが多いように感じた。実際乱歩も巻末の解説の中でいくつかの作品について完成度が低かったことを認めている。犯罪者の側の奇妙な性癖とか人間の根幹にある残虐性に絡めて、犯罪者が犯した事件を探偵なり警察なりが推理をして最後に捕まえる、といったものが僕は好きだ。

  • 江戸川乱歩の文庫コレクターなので、当然ながら全部持っているんだけど、「全短編」と言われると、つい購入してしまうわけですね。

    で、その第1集は、乱歩の代表作でもある「二銭銅貨」を含み、前半は明智作品、後半はその他の、謎解きを中心としたものです。特に暗号を読み解く話が多く入っております。

    当然再読のため、タイトルとオチは全部知っていましたが、改めて読むと面白いですな。流石に名作ぞろい。さらには、最終的に犯人と明かされる人物(パターンがあるので、薄々わかると思いますが)と対峙しての心理戦など、映像化前提で描かれる最近の作品とは、また違った醍醐味も有ります。

    乱歩は、同じ時期に同じようなオリジナルの文章を使い回すことが多く有り、春陽堂などの短編集で「また火星の運河か」などとげっそりしたわけですが、本書はうまくバラされていて、夢遊病と暗号(割と簡単)くらいのため、続けて読んでもバラで読んでも面白い作品となっております。

    kindle等の電子書籍での購入もおすすめの1冊。

  • 初めて江戸川乱歩を読んだ。江戸川乱歩というとほとんど怪人20面相のイメージしかなかったので違う面を知りたいと思い読んだ。
    短編集で読みやすく、構成も最後のどんでん返しが練られていて面白かった。
    特に心理試験が最近読んだ罪と罰をベースにしており、それを思い出しながら読めたのが良かった。

  • 江戸川乱歩全短編盗団の隠した5万円の行方。「私」が手に入れた2銭銅貨に興味を持った松村武。2銭銅貨に隠された暗号。発見された盗賊団の5万円。松村のいたずら。

    『心理試験』
    明智小五郎シリーズ

    大家の老婆の隠し持つ金を狙った藍屋。大家を殺害し大家の財布の金を半分盗み財布を拾ったと届け出た。翌日、大家殺害犯として逮捕された親友・斎藤。事件に疑問を持った判事・笠森の心理試験。心理試験の結果から犯人を推理する明智小五郎。


    『恐ろしき錯誤』
    対立する北川氏と野本氏。北川氏の妻・妙子の焼死事件。彼女が助かったにもかかわらず再び火の中に駆け込んでしまった秘密。彼女の耳元に囁いた謎の男の言葉の罠。妙子の持つペンダントにかくされた秘密。誰の写真?

    『D坂の殺人事件』
    明智小五郎シリーズ

    D坂にある古本屋の主人の妻が殺害される。喫茶店からの目撃者、裏の目撃者からの証言で現場に出入りしたものがいない。妻の持つ全身の傷の秘密。ソバ屋の妻の身体の傷の秘密。

    『火縄銃』
    密室で射殺された被害者・林一郎。凶器は新式の銃があったにも関わらず火縄銃で殺害された被害者。容疑をかけられる弟・二郎。死体を発見した橘と私。橘の実験。撃ち抜かれた人形の謎。

    『黒手組』
    明智小五郎シリーズ

    「黒手組」と名乗る犯行グループに誘拐された冨美子。身代金を支払ったにも関わらず解放されない登美子。受け渡しを担当した牧田の秘密。父親に禁じられた恋の謎。牧田の持つ手紙にかくされた暗号。

    『夢遊病者の死』
    夢遊病の為に勤め先を首になった彦太郎。なかなか就職が出来ずに伯爵家の小間使いとして働く親と二人暮らしを続ける。夢遊病を知らない父親との争い。ある朝、彦太郎が発見した父親の死体。夢遊病の果ての殺人と思い込み逃げ出す彦太郎。

    『幽霊』
    明智小五郎シリーズ

    自分に恨みを持つ辻堂の死の知らせを聞いた平田。平田のもとに届けられた辻堂からの手紙。幽霊になり復讐を果たすと予告される。届けられた幽霊の写真。辻堂の戸籍で死亡を確認する平田。保養地に逃れた平田が出会った青年の推理。

    『指環』
    電車に乗り合わせた二人の男の会話。一人がうたがわれた指環の盗難。身体検査を受けるが出てこない指環。その前に食べていたミカンの皮を投げ捨てていた事に目をつけたもう一人の男。

    『日記帳』
    死んだ弟の日記帳にある雪枝と言う女性への手紙を読んだ兄。ただの見舞い葉書と思える内容に込められた暗号。失望した弟。

    『接吻』
    新婚の山名宗三。妻が写真にキスをしてるのを目撃し、相手は課長の村山だと疑いを持つ。妻の持つ写真を調べる山名。ある日村山と衝突し辞表を出した山名。妻の持つ写真の正体。

    『モノグラム』
    失業中の栗原が出会った田中という青年。お互いにどこかで会った記憶があるのだが。田中の姉・すみ子の持っていた懐中鏡の中の栗原の写真。

    『算盤が恋を語る話
    同僚S子の机の上に置かれる算盤に暗号を発見したT。算盤を使った恋の連絡。

    『妻に失恋した男』
    妻であるみや子に失恋した南田収一。自分の口のなかを撃ち抜いて自殺した収一の遺体。事件を調べる刑事が自殺直前に歯医者に行っていた事に気がつく。歯医者・栗田とみや子の関係。栗田が焼却処分した診察椅子。

    『盗難』
    新興宗教団体の主任のもとに送りつけられた金庫ないの金を盗むとの予告状。顔見知りの刑事に警護を依頼するが、刑事による強盗。事件後に刑事を発見した男。刑事が語る金庫の中の金の正体。

    『断崖』

  • 読むのに結構時間がかかってしまったけど 楽しく読めた

  • 江戸川乱歩というビッグネームに構えて読んだら、驚いたことにかなりタッチが軽くて読みやすい。
    よくもまあこれだけ書いたと思うほど短編の中にさまざまな種類の殺人やら事件やらが書かれている。
    この人の書くミステリはなぜか、読み終わると微笑んでしまうような後味がいいものが多い。

    個人的に好きなテーマはプロバビリティの犯罪。完全犯罪があるとすればこれはかなり近いと思う。
    でも好きな話は「二銭銅貨」「断崖」「二癈人」「石榴」かな。
    後者二つはラストがほぼ同じじゃないかということに今気付いたのですが、ストーリーとしてきれいに閉じてると思ったので。

    「二癈人」は、既に扱った夢遊病者というテーマを今度はどう料理するのかな、とワクワクしていたところ、トリック云々より物語としてまとまりがよかった。
    D坂は明智小五郎が出てました。もじゃもじゃ頭の天才探偵というキャラクタは多いものだ。
    目撃者の証言があてにならないと明智さんは言ってましたが、そうなるとクイーン作品の微に入り細を穿つ賢い証言者たちはどうなるのでしょう。
    いやいや言うまい。無粋である。
    トリック云々で言うなら断然「石榴」一押し。
    被害者の顔が硫酸でわからないほどぐちゃぐちゃだったとか、比喩に使った石榴をちゃんと最後でまた活かしてくるとか、小説的読み物としての魅力にあふれた作品。
    主人公=犯人、被害者=犯人の図はいつでもそそるものさ。

    もしこの人が「石榴」みたいな薄気味の悪い小説を書くのであれば、長編も読みたいなあ。

  • 大正14年1月の作品。
    証人が虚偽の証言をしたって、それってありなの?
    明智小五郎初登場の作品だが、髪の毛をモジャモジャするあたりが金田一耕助っぽい。
    若いな……、明智探偵……。

  • やっぱり二銭銅貨が好きですねー。
    これにはD坂も入ってて良いですね。乱歩先生、やっぱり好きです。

  • 大正から昭和にかけて発表された短篇集を集めた一冊。暗号解読がキーとなる「二銭銅貨」「黒手組」等が入っている。明智氏や小林少年がでてくるとやっぱり面白い。犯人の心の機微(動揺)がこまやかに描かれていてついつい続けて読んでしまう。第二巻も読みたくなる。

  • これに収録された「二銭銅貨」がきっかけでミステリーにはまることに。
    「人間椅子」「芋虫」など、謎を解き明かされていくドキドキ感と江戸川乱歩作品が持つ独特の妖しい雰囲気は病み付きになる。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

江戸川乱歩の作品

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