鉄を削る町工場の技術 (ちくま文庫 こ 18-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480035783

感想・レビュー・書評

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  • 簡素で感傷に流れないきびきびとした文章にうっとりしてしまった。著者のことも本のことも何も知らずに古本屋で買った本だったのだけれど、本当にいい本にめぐり会えた。

    私も技術者と呼ばれる職業についているけれど、企業の情報システムを作る、という仕事なので技術の熟練が、対象企業の業務の効率化を進めることへつながるという関係にある。小関さんは効率化へ向かう動きの中に危惧を見いだしていて、効率化されたプロセスの中で生み出されるものの中に新しいものを作ろうとする運動が欠けていく様子を見ている。これは本当にはっとさせられた。

    私が今担当している企業さんはとても勢いや元気があるのだけれど、その勢いは効率化されたプロセス、というよりは「何でもやってやろう」というチャレンジ精神によって支えられているように何となく思える。システム要件決めの最初のうちは「この企業さん、商流をある程度固定したらいいのいいのにな…」と思っていたのだけれど、別の人が担当している案件の元気な企業さんなんかも手伝っているうちに、この勢いを上手く維持できるような、業務変化のスピードに合わせて改変可能なシステムを作るべきなのかな、と考えが変わってきた。

    この本で語られるNC旋盤の意外な利用の仕方の感覚については、私も同じようなことを少なからず経験していると思えた。技術の成熟についての言葉もはっとするところが多かった。別の発展の仕方をした二通りの技術の間でこういうことが起こると直感的には思う。この本ではそれが「NC旋盤」と「旋盤」なんだと思うけれど。
    読んでいて自分なんて技術者と名乗るのもおこがましいと思うことの方が多かったけれど、技術者ってのはやっぱり面白いんだよなあとも思ったのでした。

  •  著者は知っていたが読んだのは初めて。非常に面白かった。初版は約30年も前だが、当時の様子がよくわかり、また著者自身旋盤のプロで、体験に基づく記述に説得力があり、勉強にもなった。
     自分の職場にも氏のようなタイプのプロが数名いて、非常に世話になっている。その方々が引退後に後に続く若者もまた数名育っている。そのような環境と比較しつつ読んた。切削時の音に関しては何となく感覚的に理解できた。味はさすがに不明。でも、そういう職人がいることはちっとも不思議ではない。

  • 町工場の仕事、旋盤工の仕事をこんなふうに書けたら楽しいだろうなあ。

    町工場から見た風景を語る本は最近多くなっている。岡野工業の岡野さんのおかげなのかな。
    でも、この小関さんの本はさらに味がある。
    工場のなかで働く一旋盤工で、文学に通じていて、みずからも読みやすくて、雰囲気のある文章を紡ぐことができる。

  • 【そんなことはみんなこの腕が知っているよ】

    機械は良くわからないが、とても勉強になった。
    ぐっとくる。

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著者プロフィール

1933年、東京生まれ。
都立大学附属工業高校卒業後、旋盤工として町工場に勤務する。
そのかたわら、執筆活動をつづけ、作品を発表する。
◎おもな著書
『大森界隈職人往来』(朝日新聞社、81年)--第8回日本ノンフィクション賞
『粋な旋盤工』(風媒社)、『春は鉄までが匂った』(晩聲社)、『羽田浦地図』(文芸春秋)ほか

「1985年 『鉄を削る 町工場の技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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