夜の太鼓 (ちくま文庫 い 7-3)

著者 :
  • 筑摩書房
3.73
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本棚登録 : 27
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480036162

作品紹介・あらすじ

ありふれた日常の暮らしの中から掬いあげられた、気になること、心に残ったこと、なつかしい人…。そこにひそむ不合理や疑問、美しさを鋭く鮮やかに描き出す。"ことばの力をいのちの力として生きてきた"と静かに語る著者の、忘れていた何か大切なものを気づかせてくれる随筆集。

感想・レビュー・書評

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  • 資料番号:010686327
    ご利用の細則:貸出可能です
    備考:【元の所在場所】自動書庫
    http://lib-yuki.city.yuki.lg.jp/info/shoko.html

  • 詩人らしい美しい言葉遣いが印象的。ただ「子供のための詩を書く人」というイメージだけではない、辛らつな一面ものぞけた気がする。

  • 最近、本屋へ行くと、詩の本のあたりをうろうろする。しばらく前におくった詩集に石垣りんがあって、図書館へ行っても、石垣りんを検索してみたりする。

    この本の「あとがき」にあった、この一節がこころにのこって、借りてきた散文集。

    ▼その間[『焔に手をかざして』を出してからこの『夜の太鼓』までの間]の今年二月、心だのみにしてきた弟と死別いたしました。大切な人を亡くすことは、喜びの受け皿を失くすことなのだと気が付きました。(p.223)

    この本が単行本で最初に出たのは1989年、昭和が終わった年だった。

    この散文集をかばんに入れて、出た先でちょろちょろと読みながら、大きい本屋へ寄ったので、ちくま文庫の棚を探してみたけれど、この文庫に入っていたはずのりんさんの本は全部切れているようで、目録にも見当たらなかった。『ユーモアの鎖国』はずいぶん前に読んだおぼえがある(うちの本棚のどこかにあったような気もする)。『焔に手をかざして』は読んだ記憶もないし、こんどまた図書館で借りてみようと思う。

    その本屋の詩の本のあたりでは、現代詩手帖特集版の『石垣りん』に平田俊子の一文などが入っているのを読んでみたり、未刊詩集として収録されている作品を読んでみたりして、また近くに並んでいたりんさんの詩集をいくつかめくってみたりして、買って帰ろうかどうしようかと迷いながら決心がつかず、また『夜の太鼓』を少し読んだりしながら帰る。

    りんさんの詩もすきだけれど、この散文集におさめられたりんさんの文もよかった。しみじみとよかった。

  •      おやすみなさい     石垣 りん

    おやすみなさい。

    夜が満ちて来ました
    潮(うしお)のように。
    ひとりひとりは空に浮かんだ
    地球の上の小さな島です。

    朝も 昼も 夜も
    毎日
    何と遠くから私たちを訪れ
    また遠ざかって行くのでしょう。

    いままで姿をあらわしていたものが
    すっぽり海にかくれてしまうこともあるように。
    人は布団に入り
    眠ります。

    濡れて、沈んで、我を忘れて。

    私たち 生まれたその日から
    眠ることをけいこして来ました。
    それでも上手には眠れないことがあります。

    今夜はいかがですか ?

    布団から やっと顔だけ出して
    それさえ 頭からかぶったりして
    人は 眠ります。
    良い夢を見ましょう。

    財産も地位も衣装も 持ち込めない
    深い闇の中で
    みんなどんどん優しく、熱く、激しく
    生きて来たことでしょう。

    裸の島に 深い夜が訪れています。
    目をつむりましょう。
    明日がくるまで。

    おやすみなさい。



    もう この詩でやられました。

    ええ かないませんわ

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著者プロフィール

石垣りん一九二〇年東京生まれ。詩人。高等小学校時代から詩作を始め、少女雑誌に投稿する。小学校卒業後、十四歳で日本興業銀行に就職。二十五歳の時に敗戦を迎え、戦後は職場の組合活動にも参加しながら詩作に集中。三八年同人誌「断層」を創刊し福田正夫に師事。五九年第一詩集『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』刊行。六九年第二詩集『表札など』でH氏賞、七一年『石垣りん詩集』で田村俊子賞、七九年『略歴』で地球賞を受賞。二〇〇四年没。

「2023年 『朝のあかり 石垣りんエッセイ集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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