つげ義春を旅する (ちくま文庫 た 38-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480036278

作品紹介・あらすじ

「ガロ」の編集者だった著者がつげ作品の舞台となった風景をさがして東北の秘湯から漁港の路地裏までを訪ね歩く。砂煙のまいあがる会津西街道で見つけたワラ屋根のある景色や、老人たちとともに時間がとまった上州・湯宿温泉、赤線の雰囲気を残す東京下町など、貧困旅行を追体験する。失われた日本の風景のなかに、つげ義春の桃源郷が見えてくる!つげ義春との対談も収録。図版満載。

感想・レビュー・書評

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  • 猫町紀行と調布の風景(無能の人など)あたりの話に興味が湧く。川崎長太郎の抹香町ものとの関連性の指摘も面白い。

  • 旅行記にして、作品・作家論。
    つげ義春が作品の中で描いている場所を訪ねるという意味では旅行記であり、また、その作品についてや、つげ義春自身について語るという意味では、作品論であり、かつ、作家論でもある。

    いくつか印象的な部分がある。
    ひとつは、つげ義春が作品の中で描いている場所を、本書の筆者の高野慎三が写真に撮り、その写真とつげ義春の描いた絵とを比較している何カ所のページ。つげ義春が作品に描いている場所は、たいていの場合、鄙びた、あるいは寂れた場所である。その表現の仕方が、つげ義春の独特のものであるということは、その場所の実際の写真を見ることによってよく分かること。
    もう一つは大内宿についての記載。大内宿は、会津若松から30分程度の場所にある、昔の宿場町の様子がよく保存されている場所であり、妻籠宿などを思い浮かべてもらえれば良い。私もコロナ前に2回旅行で訪ねたことがあるが、いずれの時も観光客がいっぱいであった。大内宿について、本書で触れられている個所を引用する。
    【引用】
    会津西街道の大内宿は60年代の末に、民俗学者・宮本常一氏のお弟子さんがたまたま発見し、当時の「朝日新聞」紙上でも驚きをもって大きく取り上げられていた。(中略)当時の大内宿は、ほとんど江戸時代そのままであったようで、宮本氏も早急に保存対策をほどこさねばとうったえていた。
    【引用終わり】
    60年代末は50年以上前の話であるが、それでは最初の東京オリンピックの後であり、大阪での万国博覧会の直前である。そういった時代に、ある場所が「江戸時代そのまま」の形で、「発見」されることがあり得たことに驚きを感じた。と同時に、当時の大内宿を是非見たかったとも感じた。

    おそらく、つげ義春のファンでない人にとっては、面白くも何ともない本だと思う。逆につげ義春のファンにとっては、それなりの発見がある本である。

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著者プロフィール

高野慎三(たかの・しんぞう)
1940年東京生まれ。書評紙「日本読書新聞」勤務を経て、1966年5月に青林堂入社。『月刊漫画ガロ』の編集に携わる。1971年12月に退社。北冬書房を設立、『夜行』『幻燈』などの刊行を続けて現在にいたる。一方、1967年には、石子順造、菊地浅次郎(山根貞男)、梶井純とともに『漫画主義』を創刊する。また、1999年には貸本マンガ史研究会の創立に参加する。ペンネーム「権藤晋」での著作も数多い。

「2022年 『貸本屋とマンガの棚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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