遠い朝の本たち (ちくま文庫)

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著者 : 須賀敦子
  • 筑摩書房 (2001年3月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480036285

遠い朝の本たち (ちくま文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「あの本を友人たちと読んだ頃、人生がこれほど多くの翳りと、そして、それとおなじくらいゆたかな光に満ちていることを、私たちは想像もしていなかった。」

    かけがえのない人々との記憶を、人生の過程で愛した書物に絡めて語った、イタリア文学者でエッセイストとしても知られた須賀敦子さんによる、小説のような構成を持つエッセイ集です。

    幼少期や思春期に夢中になった物語、学生時代に外国語の教科書がわりに使われて心に残った海外作品、学生時代に級友が書いた名もなき小説、父親の蔵書、大切にしていた誕生日帳等々…。

    須賀さんの心に残る遠い過去と近い過去の記憶、そして、現在という複数の時間軸を、自由かつ軽やかに繋ぐ役割を果たす書物は、実にさまざまです。

    エッセイ集の始まりと終わりのそれぞれのお話が、時空をつなぐ書物こそ違えど、どちらもある一人の級友との思い出に繋がっていることが、人生の不可思議さや愛おしさを際立たせる巧みな構成と、読後の余韻に繋がっています。

    いずれは小説を書きたいと考えていた須賀さんの明確な思いと、構成力や展開力への意欲を感じさせます。

    静謐かつすっきりとしているのに、愛おしさと哀切の思いが滲み出る、須賀さんらしい美しい文体も健在です。

    一人の女性の人生を、書物と周囲の人々との記憶を通じて垣間みる短編小説集としても楽しめてしまいそうな、とても質の高いエッセイ集です。

  • 初めて須賀敦子さんの著書を読みました。
    以前からいろいろな本の中で本書の名前を見かけていたので、いつか読んでみようと思っていたのです。

    本書は著者が少女時代に出会った本について、家族や友人とのエピソードを交えて綴られたものです。
    まず驚いたのは、文章のやさしさでした。
    むずかしい言葉やおおげさな表現がなく、構えたところのない文章は、著者の人柄が表れているように感じました。
    アン・リンドバーグの著書を取り上げた「葦の中の声」で、著者はアンの本を読んで「ものごとの本質をきっちりと捉えて、それ以上にもそれ以下にも書かないという信念」を感じたと書かれていますが、その信念は須賀さんの文章にも通ずるところがあるように思います。

  • 感受性の鋭い子ども時代に多くの本との出合いを経験し、それを成長過程の風景と共に記憶している著者を羨ましく思った。

    最初は、本との幸福な出会いを綴ったエッセイだと思ったけど、どんな本も出合って不幸になるものはないかもね。

    アン・リンドバーグの「海からの贈物」は読んでみたい。

  • 読んだ本を思い返すことは、その時の自分の思い出を手繰ることなんだと教えてくれる。
    美しい言葉で語られる情景は素晴らしく、読んでいると須賀敦子さんの思い出に入っていくようです。

  • サンテグジュペリの「人間の土地」が出てきたりして、ものの見方とか、絆とか、そういうものも考えさせられました。須賀さんて、いい本を読んでるんだなあ・・・というより、いい本を見つける力があるんだろうなぁ。私はいい本だと気づかないまま、その本をブックオフにやってるんだと思うとちょっと反省。

  • 妙先生にお借りした本。
    子供の頃感じたこと、本にまつわること、そういったことを大切に、素直な気持ちで書けるなんてすてき。子供の頃何が大切だったか、どう感じたのか、そういったことを大切にしている人が好き。例えば、中勘助とか。忙しない日々に、つかの間の透き通った時間をもらえた気分。アン・リンドバーグも並行して読んでいる。そんな年頃なのかな。

  • 本好きのための本。読書の習慣があれば同じ体験をした記憶がきっとよみがえる。
    若い頃の本との出会い。本に関わる友人との巡り会い。それにまつわる記憶。
    それらをすべて抱えて生きていくことの覚悟。読書する幸せを実感できます。

    著者の須賀敦子は漱石、鴎外、谷崎、川端など日本の近代文学をイタリア語に翻訳されています。
    日本での文筆業としては遅咲きで、晩年のわずかな期間に残した随筆は、
    うっとりするほど美しい文体、優しくも圧倒的な文章です。

  • 1年ぐらい前にも読んだけれど、再読。須賀さんの文章は読んでいるとわたしの時間の流れをさりげなく変えてくれるから好きだな。

  • ぐっぐっと何か力をいれながら書かれているようで、
    ひとつひとつ選び抜かれた言葉が重い。

    はじめとおわりが、著者の友人じげちゃんの昇天。
    やさしい言葉と、正直なことばでかかれているから、
    なんだかとても心にしみて、
    ついうるうると来てしまう。

    著者の読書歴を垣間見ると、自分は読書好きではあるけれど、読書家ではないと思い知らされる。
    父親との本でつながれた関係には自分を重ねたし、
    本を通じて「あの時の自分」を手繰り寄せられるのは
    うらやましくて、自分も将来そういう風にできような
    そういう読書をしているかと問うてみることにつながった。

    私の好きな米原万里も、須賀敦子も、
    自分の昔を振り返って「少女時代」という言葉を使うが、私は自分の幼いころをどうしても「少女」という言葉で捕らえられなくて、すごく新鮮だった。
    私もいつか、自分の昔を「少女」として受け止めるのだろうか。


    「そのために自分が生まれてきたと思える生き方を、
    他を顧みないで、徹底的に探究する」というくだりに
    線を引いた。


  • 再読。「星の王子様」「海からの贈り物」との繋がっている静かな文体。サンテグジュペリからの引用「大切なのは、どこかを指して行くことなので、到着することではないのだ、というのも、死、以外に到着というものはあり得ないのだから」

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