紅一点論: アニメ・特撮・伝記のヒロイン像 (ちくま文庫 さ 13-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480036667

感想・レビュー・書評

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  • 「うわははは! その通り過ぎてどうしようもねえや!」と大ウケするか、「俺の好きな『○○』を貶すんじゃねえ!!」とガチギレするかに分かれるなぁ……と思っていたら、姫野カオルコが解説でズバリそう書いていた。俺も修行が足りねえや。

    本書が刊行され20年以上経ち、「男の子の国」「女の子の国」はどう変わったのかを考えてみると……「女の子の国は」、<親から見たいい子>化がさらに先鋭化した<永遠の箱入り娘>であるプリキュアやアイカツが幅を利かせ、「男の子の国」は『エヴァ』から何も進歩しちゃいないのであった。

  • 後半の伝記の下りは非常に楽しめた

  • 解説:姫野カオルコ

  •  軽い感じで読みやすさを優先しているが、筆が滑りすぎて反感を覚えてしまう。議論は週刊誌レベルの荒らさ。
     が、(無駄に尖った要素を60%カットすれば)、アニメ等にありふれたステレオタイプにツッコミを入れる本として素直に読める。
     なんにせよ、現状への異議を唱えたり読者を納得させる等の目的を果たすためには、この本はより冷静に書かないといけなかった。

    【版元】
    シリーズ:ちくま文庫
    定価:本体820円+税
    整理番号:さ-13-2
    刊行日: 2001/09/10
    判型:文庫判
    ページ数:336
    ISBN:978-4-480-03666-7

    「男の中に女がひとり」は、テレビやアニメで非常に見慣れた光景である。その数少ない座を射止めた「紅一点」のヒロイン像とは。
    「魔法少女は父親にとっての理想の娘である」「(紅一点の)紅の戦士は“職場の花”である」
    「結婚しないセクシーな大人の女は悪の女王である」など見事なフレーズでメディアにあふれる紅一点のヒロインとそれを取り巻く世界を看破する評論。
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480036667/

    【簡易目次】
    目次 [003-006]
    はじめに――世界は「たくさんの男性と少しの女性」でできている [007-010]

      紅一点の国 
    第一章*アニメの国 012
      ❤「おとぎの国」から「アニメの国」へ
      ❤軍事大国としての「男の子の国」
      ❤恋愛立国としての「女の子の国」
      ❤「アニメの国」は「オトナの国」の模型

    第二章*魔法少女と紅の戦士 040
      ❤「おとぎの国」のヒロイン
      ❤「うちの娘」としての魔法少女
      ❤「職場の花」としての紅の戦士
      ❤「オトナの女」としての悪の女王
      ❤アニメのヒロインの仕様

    第三章*伝記の国 067
      ❤「アニメの国」と「伝記の国」は双子の兄弟
      ❤英雄のいない国
      ❤悪の女王のいない国
      ❤女が偉人になる条件

    第四章*紅一点の元祖ジャンヌ・ダルク 094
      ❤ジャンヌ・ダルク伝はヒロイン像の百貨店
      ❤変身するジャンヌ
      ❤ジャンヌの娘たち


      紅の勇者
    第一章*少女戦士への道――『リボンの騎士』『ハニー』『セーラームーン』 122
      ❤「女の子の国」の独立
      ❤魔法少女の変転『魔法使いサリー』と『ひみつのアッコちゃん』
      ❤戦うチームの確立
    ――『ウルトラマン』と『科学忍者隊ガッチャマン』
      ❤戦う少女の出現――『リボンの騎士』と『キューティーハニー』
      ❤紅全部のチーム――『美少女戦士セーラームーン』
      ❤迷路にはまり込んだ「女の子の国」

    第二章*組織の力学――『ヤマト』『ガンダム』『エヴァンゲリオン』 155
      ❤「男の子の国」のオトナ化
      ❤組織の原型――『宇宙戦艦ヤマト』の正義
      ❤組織の拡散――『機動戦士ガンダム』の動揺
      ❤組織の崩壊――『新世紀エヴァンフェリオン』の憂鬱
      ❤オンナコドモにかき乱された「男の子の国」

    第三章*救国の少女――『コナン』『ナウシカ』『もののけ姫』 191
      ❤宮崎アニメは「男の子の国VS女の子の国」の物語
      ❤英雄未満の女――『未来少年コナン』の単純
      ❤英雄になった女――『風の谷のナウシカ』の正論
      ❤英雄を突き抜けた女――『もののけ姫』の破綻
      ❤ヒロインを野獣に戻した宮崎アニメ

    第四章*紅の勇者の三〇年 218
      ❤戦えないヒーローと戦うヒロインの時代
      ❤「クインビー症候群」と「バタフライ症候群」


      紅の偉人 
    第一章*天使の虚偽――フローレンス・ナイチンゲール 228
      ❤伝記とヒロインの三つの像
      ❤ナイチンゲール伝は『ナウシカ』である
      ❤「すご腕実務派ばばあ」としてのナイチンゲール
      ❤「悪い女王」が天使になるまで

    第二章*科学者の恋――マリー・スクロドフスカ・キュリー 256
      ❤ラブ・ロマンスとしての伝記
      ❤マリー・キュリー伝は『セーラームーン』である
      ❤「田舎出のガリ勉娘」としてのマリー・キュリー

    第三章*異能の人――ヘレン・ケラー 281
      ❤「おとぎの国」の住人
      ❤ヘレン・ケラー伝は『もののけ姫』である
      ❤「戦略的なエンターテイナー」としてのヘレン・ケラー

    第四章*紅の偉人の五〇年 304
      ❤「紅の偉人」の作られ方
      ❤伝記のヒロインとアニメのヒロインは双子の姉妹

    あとがき――「萬緑叢中紅一点」を超えて(一九九八年六月一〇日 斉藤美奈子) [318-321]
    解説(姫野カオルコ) [322-328]

  • 子ども向けメディアにおける紅一点のヒロイン像と、それを取り巻く環境について考察した一冊。
    いやー、おもしろかった!
    とにかく文体が楽しくて。けっこう真面目な本なのに、すごい笑ってしまったよw

    最近のアニメは、必ずしも明確に「男の子の国」「女の子の国」っていう住み分けができてる作品ばかりではなくなってきたんじゃないかな、と思う。
    もちろん、詳しく中身を見てみれば、内容的には「男の子の国VS女の子の国」(=あるいは、文明VS自然)という構図が当てはまるものもあるだろうけれど。
    でも、大枠としての男女の区別は曖昧になってきたのではないかなと思う。

    しかし、数の面を見れば、やはり依然として「たくさんの男性と少しの女性」状態は続いている、といえるのではないかなと。現実社会においても。
    女性の社会進出、活躍が目覚ましい~とはいえ、数の問題はまだ残っているだろう。

    ただ、ヒロイン像に関しては…何ともいえないなぁと。
    もともと、男性作家が描くヒロインと女性作家が描くヒロインを、同じ立場で語ることは難しいと思う。
    (だって、“南ちゃん”みたいな女は現実にはいないのさ…フッ。笑)
    けれども、求められるヒロイン像は、いつの時代もさほど大きな変化はないんじゃないかな?と思う。

    結局みんな、天使とか聖女とか、自己犠牲の精神に溢れた女の子になんでか惹かれちゃって、ついでにその子が愛と奇跡まで起こしちゃったら、こりゃもう完璧なヒロインだわ~ってことで…。笑

  • 大学時代に研究室で読んだ中で、印象に残っている内の一冊。アニメの中の紅一点のヒロインと、伝記のヒロインを結びつけて考える発想が楽しい。斎藤美奈子氏の批評は、理論的にどうかという点をさておいて、単なる読み物として面白いのが好き。ただ、この本の強烈なフェミニズム臭は、嫌いな人だと辟易するかも。 批評/サブカルチャー

  • 相変わらず面白い。でもちょっと違和感を感じるのは、20年前の本だからかな。あの頃よりも、性差が意識されなくなってるのかも知れないし、こんなに舌鋒鋭く話す人が減ったからかも知れない。

  • アニメについて。

    「男の子の国」「女の子の国」とはいうけど、要はそのどっちも男が建国したってことですよね。これ書いてある?ある?まあいいや、別に。
    で、女は大人になるにしたがってそういう男が父親目線で作った商品が嫌になって「MADE IN ONNA」を求めて「女の子の国」を出て行ってしまうという構図ですね。
    手塚治虫よろしく初期の少女向けのマンガが男作家の手によって著されていたのには少しく違和感を感じていたけど、娘の理想というより理想の娘を育てるためのものだったってことね。

    萩尾望都や岡崎京子、あとはサンリオや『ふたりはプリキュア』なんかにも言及してほしかったところ。嫌いなのかな?なんかでやってないかな。
    逆にエヴァなんかへの指摘は良いよね。こういう人たちが述べてることの方が面白い。


    あとはヒロインの「職業:女」っていうのには笑った。確かにそうね。
    「女性は職質をされない。なぜなら女は「女」だからだ」っていうのを思い出してた。誰が言ったんだっけ?
    セクハラとは「キャ~!!のび太さんの、エッチ~!!」。セクハラとは「いやん、まいっちんぐ」…。セクハラとは「カーンチ!ねえ、セックスしよ?」…?「セクハラ史」というジャンルも面白そうね。

    「紅一点」という一つの形、「健全な」=青少年向けに作られたアニメの(というかサブカルの?)型ではあるけど、では「不健全な」(「腐健全な」)=大きいお友達向けに作られたアニメ、、もしくは二次創作はどうなるかというと、ハーレム(女だらけor男だらけ)の状態への挿入や、そうなるための排除が現れると思うのですが如何。
    女多数に男一人ってのはわかりやすいでしょう。具体的なキャラでなくても例えば『アイドルマスター』では「プロデューサー」、『艦隊コレクション』では「提督」というように(一時創作の時点で「アニメ」でないから微妙だけど例えとして)。また或いは単純に「男」という存在として。自己投影の形としてね。これこそ本当に成人向けだろうけど。
    「紅一点」自体が男向けなわけであってじゃあ女向けはどうなるかというと、この一点の「紅」が排除される、または最初から描かれないのが多いと思う。男の場合「女だけ」の空間にもまだ「男」という存在として居座る、這入っていく感じがするけど、女向けの、チュッチュクやってる男同士(または女同士)が「君もおいで」と読者や視聴者に言うのは想定されていない気がする。好みの問題?いやあくまであたしの考えとしてさ。『きらきらひかる』とか『キッチン』読んでてこんな感じがしたんだよね。またどこかで述べられれば。
    確たる証拠も考証もないので以上にします。
    しかし少年・女性向けはかっこいい男、少女・男性向けは可愛らしい少女がメインというグラフの交差する点にはいったい何があるのでしょうか?誰かわかったら教えて。

    感想:アニメ、観なくなったな~。歳とったな~。

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著者プロフィール

1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で小林秀雄賞。他の著書に『紅一点論』『趣味は読書。』『モダンガール論』『本の本』『学校が教えないほんとうの政治の話』『日本の同時代小説』『中古典のすすめ』等多数。

「2020年 『忖度しません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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