冥途―内田百けん集成〈3〉 ちくま文庫 (ちくま文庫 う 12-4)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480037633

感想・レビュー・書評

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  • 夢を見ているような、薄暗く少し怖い荒唐無稽な短編集。

    文章がそれほど読みやすいというわけでもないが、夢で見る風景を描写させたらこの人にまさる人はいないのではないかと思う。

    寝苦しくて起きた部屋の様子。天気が良くない中を歩いた路地の様子、夜の土手、小綺麗などこまでも続く屋敷の廊下など、夢の追体験が可能。
     

  • 夢の内容を書き散らしたような、まるで脳味噌の内側をくすぐられるような作品群。内田百閒と云えば、そうこんな感じTHE百閒が詰った一冊。
    安倍公房「笑う月」も似た系統ですが、それよりもっと生身の人間に近いというか…

    「件」が狂おしいほど好きです。

  • 夢日記のようでいて、言葉遊びのようでいて、世にも奇妙な物語のようでもあり。

    そんな文章がみっちり詰まった短編集。

    ひとつひとつのディティールやプロットが面白い一方、
    句読点が多くてちょっと読みづらい。

    なので2週目以降からすんなり読めて面白さ倍増。

    夏目漱石や安部公房の場合、
    至極滑らかな文体で夢の曖昧で奇妙な感覚を現しているけれど、
    ひゃっけんさんは敢えてとでも云うか、作品内の立地や遠近感に関する表現、
    人の台詞や微妙な表情を細かく記述することで、
    ぐんにゃり眩暈を起こすような平衡感覚が揺らぐ
    「夢世界」の感覚を強調しているように感じる。其処が良い。

  • 清新な文章。
    不穏な予感。
    何故ここに自分は居るのか、茫漠とした寂寥感。

    顔のない人々。薄明の時間。

    異形の世界へ誘われ、ふと気付くと足を踏み入れている。
    預り知らぬゲームに巻き込まれたかのように、敷かれたレールに
    乗り、行き先の分からぬ電車は走り出す。

    世界から隔絶されたような。
    早く家に帰らねば。

  • 1年前に読み始めて、とっつきにくい印象があり、中断して、ようやく読了。夢の描写が幻想的といえばそうなんでしょうが、それが面白さにつながってるかというと??? いい女が好きだということがわかりました。

  • 夏目漱石の夢十夜が好きなので幻想文学として名前があげられていた冥途を読んだ。最初は短くて、内容を頭で想像するのが難しくて合わないかなと思っていたけど、「目高」以降の長い文は、想像できて夢心地を味わえて楽しかった。数年後に読んでもまた楽しめると思う。

  • 食べだすと止まらない駄菓子と称した倉橋由美子の文章にいざなわれて読んだ。

    はじめは変化に乏しいような気がして退屈だったのが、噛めば噛むほどに味が出てくる何かの如くおいしくなってきた。

    「山高帽子」などさすが漱石の弟子という作品でおもしろい。猫が出てくる。
    「棗の木」もちっとも古びていない借金地獄の物語で淡々としているところが興深い。

    毒にも薬にもなる文章好きの常備本というところ。

    *****

    「意識と無意識のあわいに立ちのぼる奇妙な風景。無気味なようで、可笑しいようで、心もとないようで。曖昧な夢の世界を精緻な言葉で描く、表題作をはじめ「旅順入城式」など特異な百けんの小説33篇。」

    【目次】
    冥途/山東京伝/花火/件/道連/豹/尽頭子/流木/柳藻/白子/短夜/蜥蜴/梟林記/大宴会/波頭/残照/旅順入城式/大尉殺し/遣唐使/鯉/流渦/水鳥/山高帽子/遊就館/昇天/笑顔 「昇天」補遺/蘭陵王入陣曲/夕立鰻/鶴/北溟/虎/棗の木/青炎抄

  • 夜の読書に最適。夢のように不合理で掴みどころのない掌編・短編集。いつものように過ごしていたら、ある瞬間にふっと、此岸と彼岸の境に迷い込んだような心許なさが余韻になる。一番好きな作品は「件」で、たしかに生まれ変わってそれだと困るよね、というおかしさがあった。ほかは「山高帽子」「昇天」「棗の木」など、少し長めの作品に引き込まれた。現に漂うほどよい不気味さが良い。高利貸しとの攻防も楽しめる。

  • 解説にもあるけど本当に夢を見ているような感じがしてくる。短編集。不思議なもの、怪しいものばかりである。読んでて引き込まれるものもあるけど、自分にとっては難解なもののほうが多いかな…

  • 請求記号:T-う 図書ID:B0009077
    *文庫コーナーに配架

  • 『冥途』はパロル舎版が好きだからもう文庫は読まなくてもいいやと思ってたんですけど、やっぱり他の短編もあるしと思って読んでしまいました。

    どこがどうと言って、もういつも百間に関しては同じ感想しか書けないんですけど、やっぱり夢のようなお話だなあとそれしか思いません。そして夢というのは限りなく私小説に近いものだなあと。当たり前だけど、登場人物や出てくる場所は、現実と同じもので、そこに自分の深層心理が絡むという意味ではこれほどプライベートなものもないのではないかと思います。

    「冥途」「山東京伝」「花火」「件」「道連」「豹」「尽頭子」「流木」「柳藻」「白子」「短夜」「蜥蜴」「梟林記」「大宴会」「波頭」「残照」「旅順入城式」「大尉殺し」「遣唐使」「鯉」「流禍」「水鳥」「山高帽子」「遊就館」「昇天」「笑顔(「昇天」補遺)」「蘭陵王入陣曲」「夕立鰻」「鶴」「北溟」「虎」「棗の木」「青炎抄」(解説:多和田葉子/芥川龍之介による同時代評)

  • 怖い反面、おかしさも感じる。

  • 夢を夢のまま描いた小品集。
    なのだろうが、読むうちにうつつか夢かわからなくなる。
    夢の中の景色を描き出す描写力。
    人の夢を読んでいるのに、
    その力を我が物にして自分の夢を見てみたいと思う。

    猫はもちろん、ケモノがでてくると、
    とたんに空間はねじれてファンタジーになる。
    ケモノが人の(百鬼園先生の)心の襞に潜んでいるのか、
    なにか衝動のようなものを表しているようでおもしろい。

    旅順入城式は、かわしたりそらしたりしたところがなく、
    短くても温度の高い小品。

  • はっきりしない不気味さというのか、短い作品が唐突にはじまっては終わり後がすっきりしない。
    花火と豹と件あたりか。

  • どの短編も不思議な雰囲気のもので、内容を捉えにくかったです。
    けれど、捉えようとしなくてもよかったのかなとも思います。
    巻末に収められている『芥川龍之介による同時代評』によると、夢を描いているそうです。
    夢ならばその曖昧さに任せて、ただ美しい描写を感じればいいのかなと思います。
    場面ごとの描写はすごくきれいだなと思いました。
    他の作品も読んでみたいと思う作家さんでした。

  • 夢がそのまま、掌にのっている。

  • 百閒好き。メイド最高。これ教科書に載ってた。夜見る夢の雰囲気をこんなに的確に文章で表せる人がいることに驚いた。夢って朝にはその世界から土手を歩いて帰ってくるものなんですよね。

  • 『冥途』をはじめ、怪異的・幻想的な作品を多く収録。百閒作品に夢中になる切っ掛けはこの本でした。

  • 七里圭監督の映画「眠り姫」をみた。眠るとき、目は閉じるが、耳は開いている。夜に見る夢は音の視覚化なのかもしれない。

    「眠り姫」は山本直樹の原作があり(「夢で逢いましょう」所収)、山本直樹は百鬼園の「山高帽子」を下敷きにしている。

    「山高帽子」は芥川の自死を描いたものであるらしい。

    すべりおちる。狂気と名づけたら取り逃がしてしまうもの。

  • こんな文章が書けたら、死ねる。

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