冥途―内田百けん集成〈3〉 ちくま文庫 (ちくま文庫 う 12-4)
- 筑摩書房 (2002年12月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480037633
感想・レビュー・書評
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夢を見ているような、薄暗く少し怖い荒唐無稽な短編集。
文章がそれほど読みやすいというわけでもないが、夢で見る風景を描写させたらこの人にまさる人はいないのではないかと思う。
寝苦しくて起きた部屋の様子。天気が良くない中を歩いた路地の様子、夜の土手、小綺麗などこまでも続く屋敷の廊下など、夢の追体験が可能。
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夢の内容を書き散らしたような、まるで脳味噌の内側をくすぐられるような作品群。内田百閒と云えば、そうこんな感じTHE百閒が詰った一冊。
安倍公房「笑う月」も似た系統ですが、それよりもっと生身の人間に近いというか…
「件」が狂おしいほど好きです。 -
夢日記のようでいて、言葉遊びのようでいて、世にも奇妙な物語のようでもあり。
そんな文章がみっちり詰まった短編集。
ひとつひとつのディティールやプロットが面白い一方、
句読点が多くてちょっと読みづらい。
なので2週目以降からすんなり読めて面白さ倍増。
夏目漱石や安部公房の場合、
至極滑らかな文体で夢の曖昧で奇妙な感覚を現しているけれど、
ひゃっけんさんは敢えてとでも云うか、作品内の立地や遠近感に関する表現、
人の台詞や微妙な表情を細かく記述することで、
ぐんにゃり眩暈を起こすような平衡感覚が揺らぐ
「夢世界」の感覚を強調しているように感じる。其処が良い。 -
清新な文章。
不穏な予感。
何故ここに自分は居るのか、茫漠とした寂寥感。
顔のない人々。薄明の時間。
異形の世界へ誘われ、ふと気付くと足を踏み入れている。
預り知らぬゲームに巻き込まれたかのように、敷かれたレールに
乗り、行き先の分からぬ電車は走り出す。
世界から隔絶されたような。
早く家に帰らねば。 -
1年前に読み始めて、とっつきにくい印象があり、中断して、ようやく読了。夢の描写が幻想的といえばそうなんでしょうが、それが面白さにつながってるかというと??? いい女が好きだということがわかりました。
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夏目漱石の夢十夜が好きなので幻想文学として名前があげられていた冥途を読んだ。最初は短くて、内容を頭で想像するのが難しくて合わないかなと思っていたけど、「目高」以降の長い文は、想像できて夢心地を味わえて楽しかった。数年後に読んでもまた楽しめると思う。
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食べだすと止まらない駄菓子と称した倉橋由美子の文章にいざなわれて読んだ。
はじめは変化に乏しいような気がして退屈だったのが、噛めば噛むほどに味が出てくる何かの如くおいしくなってきた。
「山高帽子」などさすが漱石の弟子という作品でおもしろい。猫が出てくる。
「棗の木」もちっとも古びていない借金地獄の物語で淡々としているところが興深い。
毒にも薬にもなる文章好きの常備本というところ。
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「意識と無意識のあわいに立ちのぼる奇妙な風景。無気味なようで、可笑しいようで、心もとないようで。曖昧な夢の世界を精緻な言葉で描く、表題作をはじめ「旅順入城式」など特異な百けんの小説33篇。」
【目次】
冥途/山東京伝/花火/件/道連/豹/尽頭子/流木/柳藻/白子/短夜/蜥蜴/梟林記/大宴会/波頭/残照/旅順入城式/大尉殺し/遣唐使/鯉/流渦/水鳥/山高帽子/遊就館/昇天/笑顔 「昇天」補遺/蘭陵王入陣曲/夕立鰻/鶴/北溟/虎/棗の木/青炎抄 -
夜の読書に最適。夢のように不合理で掴みどころのない掌編・短編集。いつものように過ごしていたら、ある瞬間にふっと、此岸と彼岸の境に迷い込んだような心許なさが余韻になる。一番好きな作品は「件」で、たしかに生まれ変わってそれだと困るよね、というおかしさがあった。ほかは「山高帽子」「昇天」「棗の木」など、少し長めの作品に引き込まれた。現に漂うほどよい不気味さが良い。高利貸しとの攻防も楽しめる。
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解説にもあるけど本当に夢を見ているような感じがしてくる。短編集。不思議なもの、怪しいものばかりである。読んでて引き込まれるものもあるけど、自分にとっては難解なもののほうが多いかな…
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請求記号:T-う 図書ID:B0009077
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