ノラや―内田百けん集成〈9〉 ちくま文庫 (ちくま文庫 う 12-10)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480037695

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  • ■2014.04 TV再放送

  • 愛するノラがいなくなってから、涙し、探す日々。自分のことに置き換えて読むと同じように涙せずにはいられなかった。新聞に入れられたノラを探すチラシが延べ3万枚だっていうんだから、すごいよね。

    クルス(クル)は最初、ノラに比べるとあまり賢くない、みたいな言われようをしていたが、時間が経つに連れ、ノラと同じように賢いことになっていて、知らず知らずのうちに客観性がなくなっていくのが分かるというか、それだけかわいくなっていったんだなぁというのがものすごく見てとれた。

    ただ「ノラじゃないか」という電話や知らせがあったときは必ず奥さんや弟子に行かせるところがなんとも。。「なんで自分で行かないんだ!」と何度思ったことか(笑)それだけ偉い人ではあったんだろうが、まぁ時代を感じさせるというかなんというか(笑)

  • いなくなった猫への思いが、我が子を思うように綴られている。
    これって、ペットロス症候群?とかいうのかな?
    毎日泣き暮す様子が、ちょっと引くくらいだ。何かと言うと泣く年寄り・・・みたいな。
    たかが猫くらいで、と思わなくもない。
    けれど、本人にとっては家族だったのだろうな、と思うと、無理もないと思う。
    何よりも、最初は、猫を飼いたいと思って飼ったのではない、自然に居着いたのだ、くらいな突き放した書きようだったのが、いなくなった途端に本人にも信じられないくらいの喪失感をもたらしたようだ。

  • 初の内田百閒。なるほど漱石門下と思わせるほどユーモアたっぷりでした。
    猫の気持ちを主観の如く感じ取り、猫に寄り添うご夫婦の日常の描写から猫への愛情が切々と伝わります。動物と生活したことのない私ですが、動物と人間の深い心の繋がりをあたかも経験したような読後感。人間同志は、なかなかこうはいきませんね。

  • いなくなった飼い猫を探す話。
    以上。
    ・・なのですが、今ままで小耳に挟んだ感想が「笑った」か「泣いた」。ここまで別れる話は珍しい。
    つまることこ、いなくなったのが「猫」なところがポイントなのでしょう。「大の男が小動物一匹をオロオロとさがす話」なら笑えるし、「失踪した大切な存在を必死にさがす話」なら泣ける。 ・・そういう意味でもこの作品は絶妙だと思います。いなくなったのが「家族」や「友人」ならただただひたすらおもく悲壮ですから。
    『なぜ今夜もそうして帰ってこないのか。』
    『朝の覚め際の夢にノラがいた。』
    『ノラやノラや、今お前はどこにいるのだ。』
    わたしは「泣いた」派なのですが、それでもおかしかったのは、悲壮なくらい必死にさがしておいでなのに、似た猫を見つけた時、最終的に見分ける責任者なのは奥方であること。
    気に入っているのは、『合点のいかぬ顔をして』奥方に抱かれていたりする、いなくなったノラの思い出話のかずかず。偏屈オヤジ、さすがの観察眼です。

    最後に、【ノラや】は今何種類かでていますが、その中でもこれにしたのは表紙が気に入っているからです。端正さやバランスが好みなのもありますが、なにより猫でないのがいい。これは、猫ではなく、人間のこころのはなしだと思うので。

  •  愛猫が行方不明になり悲嘆に暮れてパニックに陥る作者の日記をベースに書かれた表題作「ノラや」。これって今でいう「ペットロス症候群」のはしりでは。動物を飼った人ならその気持ちは痛いほどわかる。70歳前の地位も名誉もある大作家の胸をここまで痛めさせる猫の可愛さ。狼狽している中で書かれたにもかかわらず、猫探しの切迫感、臨場感がひしひしと伝わってくる。親切にしてくれるにもかかわらず、余計なひと言をいう友人に対する悪態も赤裸々に語られていて、猫を飼っている者としてその気持ちがよくわかり、この辺りは思わずクスッとしてしまった。
     その他、表題作に関連する作品とノラの後に飼われた猫「クルツ」の闘病記も併せて収録。その他の幻想的な猫話も入っているが、それらはいまいちよくわからなかった。
     

  • 中公のと合わせて。「鵯」を読むと驚くというか、「猫好きではない」という言がわかる気がする。ノラとクルだから可愛いくて、ノラとクルがいたから猫を可愛いと思ったんだ。

  • 九つの、物語より。同時期に内田百間について研究している先輩に会ったので。

    文章は読みやすく、ある程度の昔加減を感じられたので満足。しかし読み返したいとも好きだなぁとも思わないくらい。

  • 読んではおいおい泣いています

  • ノラとクルツ、二匹の猫に対する愛情溢れる随筆集。
    ただ、帰らないノラを求めて煩悶する姿は
    ちょっと尋常でなく、
    百閒先生のエキセントリックさがよく表れていると思う。

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