ボルヘスとわたし: 自撰短篇集 (ちくま文庫 ほ 12-1)

  • 筑摩書房
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480037954

作品紹介・あらすじ

人間の運命が無限に反復する-そんな迷宮的世界を描きつづけた作家ボルヘス。本書は、そのボルヘス自身が凝縮・構築した、"ボルヘス小宇宙"ともいうべき珠玉の一冊である。全体は三部からなり、第一部は代表作「アレフ」「死とコンパス」「円環の廃墟」「ボルヘスと私」など自ら選りすぐった20編を収録する。第二部「自伝風エッセー」では、幼少期から短篇執筆の日々までを回想し、さらに第三部で収録全短篇作品をボルヘス自身が注解する。

感想・レビュー・書評

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  • ボルヘス自編の短編集。本人の解説付きなので割りと分かりやすい。テーマもボルヘスお気に入りの物が多い。探していた相手(または対立相手)が実は自分自身だった、鏡、迷宮、ミステリー、南部の男たちの話。
    しかし私のお気に入り「八岐の園」がないのが不満だ..。

    ===
    【アレフ】
    この世のあらゆる場所が同時並列する場所、アレフ。そしてそれを背景にした男の嫉妬

    【バラ色の街角の男】
    ボルヘス主要テーマである南部の荒くれ男の物語。一応ミステリー仕立て。最後の一文で殺人の犯人が浮かび上がる。

    【アル・ムターシムを求めて】
    「一人の男が絶対的存在を求める」という小説「アル・ムターシムを求めて」の解説文、という形式をとり、「探していた存在が実は自分であった」というテーマの小説。
    ボルヘス作品では、元小説は存在しないのにあるものとして解説だけ書くというのもよくある手口。

    【タデオ・イシドロ・クルスの生涯】
    人が決定的に自分の正体を見抜いてしまう一瞬を描写した作品

    【死んだ男】
    奪われるために全てを与えられた男の話。

    【もう一つの死】
    自分の行動を恥じ続けた男が、死に際して過去を死に直した話。 
    いわゆるタイムパラドックスというようなものを哲学や宗教論から語った作品。 

    【二人の王と二つの迷宮】
    バビロニアの王が作った無数の階段や扉や壁の錯綜した青銅の迷宮に迷ったアラビアの王は、上るべき階段も押し開けねばならぬ扉も果てしなく続く回廊も行く手を阻む壁もない迷宮、すなわち砂漠を示す。
    千夜一夜物語のような作品を書きたかった、という短編。

    【敷居の男】
    失踪した市政官を探しに来た主人公が迷い込んだインドの街。人々の言葉を辿り、付いた家で起きた出来事。そして事実を話しながら言葉の煙幕で主人公を留めた敷居の男。

  • ボルヘスの詩集『創造者』に感激して、彼の散文(短編)も読んでみたくなり、面白くてむさぼるように『伝奇集』『不死の人』『砂の本』(後半に『汚辱の世界史』掲載あり)……、それからこの本に辿り着きました。しかも私の好きな『ドン・キホーテ』の翻訳者さんだと知って小躍りしました。

    結論から言うと、これはボルヘスの短編ベストセレクション本ではないだろうか。参考までに本書に掲載している作品を書いてみます。
    『汚辱の世界史』より→「バラ色の街角の男」
    『伝奇集』より→「アル・ムターシムを求めて」「円環の廃墟」「死とコンパス」。
    『不死の人』より→「タデオ・イシドロ・クルスの生涯」「アレフ」「二人の王様と二つの迷宮」「死んだ男」「もうひとつの死」「自分の迷宮で死んだアベンハカーン・エル・ボハリー」「入口の男」。
    『創造者』より→「ボルヘスとわたし」「創造者」「囚われ人」。
    その他の短編本から5つ、合計20の短編を掲載した読み応え満載の本です。
    私のお気に入り作品もほぼ網羅されていて満足です。あとは――本書に掲載はありませんが――「バベルの図書館」、それと姉妹のような「砂の本」が私のお気に入りです。

    最初にどの本を手にしたらいいのか悩まれるようであれば、この本をお薦めします。ボルヘスも気に入っている作品が多く、彼自身の注解やエッセイもあり、さらには翻訳も素晴らしい至れり尽くせり、珠玉の一冊♪

    • 佐藤史緒さん
      こんにちはアテナイエさん、佐藤史緒です。フォローありがとうございます(^-^) ボルヘスまだ未読ですがアテナイエさんのレビュー読んで、とても...
      こんにちはアテナイエさん、佐藤史緒です。フォローありがとうございます(^-^) ボルヘスまだ未読ですがアテナイエさんのレビュー読んで、とても興味が湧きました!
      今後ともよろしくお願いします。
      2017/04/22
    • アテナイエさん
      佐藤さん、コメントおよびフォローいただき、ありがとうございます♪
      ボルヘスは今回はじめて読んでみたのですが、どうやら相性がよかったようです...
      佐藤さん、コメントおよびフォローいただき、ありがとうございます♪
      ボルヘスは今回はじめて読んでみたのですが、どうやら相性がよかったようです。面白くてはまりすぎてしまい、むさぼるように次々読んだため、知恵熱が出てしまいましたぁ~どうぞゆっくりじっくりお楽しみくださいね(笑)。
      これから佐藤さんのレビューを楽しみに拝見させてもらいます。
      今後ともどうぞよろしくお願いします!
      2017/04/22
    • 佐藤史緒さん
      こちらこそレビュー楽しみに拝読させていただきます、まだ見ぬ名著との出会いを期待して。改めてよろしくどうぞですー♪
      ps プロフィール画像...
      こちらこそレビュー楽しみに拝読させていただきます、まだ見ぬ名著との出会いを期待して。改めてよろしくどうぞですー♪
      ps プロフィール画像coolですね。
      2017/04/22
  • 《目次》
    ◇I ボルヘスとわたし
    ・ アレフ
    ・ バラ色の街角の男
    ・ アル・ムターシムを求めて
    ・ 円環の廃墟
    ・ 死とコンパス
    ・ タデオ・イシドロ・クルスの生涯(1829-74)
    ・ 二人の王様と二つの迷宮
    ・ 死んだ男
    ・ もうひとつの死
    ・ 自分の迷宮で死んだアベンハカーン・エル・ボハリー
    ・ 入口の男
    ・ 肝魂信仰
    ・ 囚われ人
    ・ ボルヘスとわたし
    ・ 創造者
    ・ じゃま者
    ・ 不死の人びと
    ・ めぐり合い
    ・ ペドロ・サルバドーレス
    ・ ロセンド・フワレスの物語

    ◇II 自伝風エッセー
    ◇III 著者注釈

  • エーコの『薔薇の名前』が世界最高峰の同人作品だとすれば、その原作は何であるか、名著が様々挙げられると思いますが、私は、ボルヘスの例の短編であると勝手に推測しています。読んだきっかけは『薔薇の名前』の某登場人物の名前がボルヘスの名をとってつけられたということを知って。自薦の短編集だけあって、秀逸。

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