説経小栗判官 (ちくま文庫 こ 9-3)

著者 :
  • 筑摩書房
3.36
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本棚登録 : 85
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480038012

感想・レビュー・書評

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  • 説経節のうち、最も長い「小栗判官」を漫画化した作品

    先日、『説経節』を読んで、大変おもしろかった。
    それとは別に、安吾の『戦争と一人の女』が漫画化されたという話を聞いて、ふぅん、それおもしろそうだな・・・と思ったら、その著者、近藤ようこさんが説経節を漫画化しているのだという。おやおや、それは読んでみなくちゃ、と入手してみたのが本書である。

    シンプルな線で、原著の流れに比較的忠実に作画されている。
    表紙は小栗判官の妻、照手姫。凛として美しく、鮮烈である。

    漫画という読みやすい形で提示されてみると、あらためてこのお話が非常にうねりのあるストーリーであることに感心する。
    京に始まり、常陸、相模、越後、越中、加賀、敦賀、大津、美濃、藤沢、富士、熊野、再び、京、相模と舞台は東西幅広い。出てくるものも、個性豊かな人間に加え、沼に住まう大蛇や人を喰らう馬、地獄の閻魔とさまざまだ。
    終幕は大団円といえば大団円なのだが、緻密に編み込まれ、伏線が回収されていくといったような、ある種、プロットを元に、人為的に組立てられたものではない。
    迸る奔流がやがて大海に至るような、作者ら自身にも制御不能な力が働いているのではないかと思わせるような、強いエネルギーを感じる。

    この物語を体のどこかに抱えながら生きていけるのは幸せなことだ。


    *スーパー歌舞伎の演目にもなっているのだそうで(原作・梅原猛)、これはいつか見てみたいなぁ・・・。

    *照手姫が白く美しいのに嫉妬して、意地悪なおばあさんが燻して黒くしようとするエピソードがおかしい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「強いエネルギーを感じる」
      近藤ようこの作風なんだと思うのですが、エネルギーの中に「憂い」を含んでいる。それが心の底に沈む理由のような気がし...
      「強いエネルギーを感じる」
      近藤ようこの作風なんだと思うのですが、エネルギーの中に「憂い」を含んでいる。それが心の底に沈む理由のような気がします。
      2013/01/05
    • ぽんきちさん
      nyancomaruさん

      「憂い」
      なるほど。

      余白の多い絵ですが、そこがまたよいのでしょうね。
      大蛇の化身の女は妖しい色気があります。
      nyancomaruさん

      「憂い」
      なるほど。

      余白の多い絵ですが、そこがまたよいのでしょうね。
      大蛇の化身の女は妖しい色気があります。
      2013/01/05
  • ブックオフで見つけた本。
    コミックのちくま文庫。
    今まで知らなかった『小栗判官』の物語を、
    近藤ようこさんのコミックで味わう。
    何という、おどろおどろしい世界だろうか!
    言葉を失うほどの読後感!?
    さて、名古屋市中川区の中川運河にかかる橋、
    『小栗橋』に何か由来か関わりがあるのだろうか、
    遠い物語に思いをはせる。

  • 近藤ようこさんのシンプルな絵柄で描かれる小栗判官は、大変イイ男。照手姫は美しく憂いに満ちながら、はっきり意志を持つ、魅力的な女性。小栗が黄泉から返るシーンにはドッキリさせられ、印象的だった。再生の物語という意味で読むと、また感慨深い。どこまで落とされても、人間にはまた立ち直る力がある。5年前、熊野へ行った時に友人が持参していて、湯の峰温泉へ行く前に読ませてもらい、由来を知ることができた。その後、自分でも購入したのだった。非常に思い出深く、読み返してまた熊野詣でがしたくなった。

  • 照手姫gj
    説教物というジャンル、脈々と文学の下層を流れているので、いずれ体系的に触れたい。

  • 絵柄を小説における文体だと考えると、その文体は非常に静かな語り口を持っている。小栗判官のおどろおどろしい内容とその静けさとが反目することなく、不思議な物語世界を感じさせる好著。

  • 稲葉さん所有
    →11/09/10 濱本さんレンタル
    →11/12/29 返却(浦野預り)
    →11/04/22 返却

  • 同じ教説ものの妖霊星ほどの情念どろどろ感はない。
    すこしコミカルで、今昔物語とか説話集のような雰囲気が出ている。

  • 池で小栗が蛇に抱かれるコマが好き

  • なるほど!こんな内容だったのですね。

  • 元の小栗判官のお話がよく分かり、なおかつ近藤ようこという人の艶っぽさも感じられてすごく気に入った。こんな豪気な男が周りにいたら気後れしちゃうけど惹かれるし、何より照手姫がたまらない。この人の他の漫画も読みたい。

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著者プロフィール

1957年新潟市生まれ。漫画家。国学院大学文学部卒。大学在学中にデビュー。「見晴らしガ丘にて」で第15回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。折ロ民俗学や中世文学への造詣が深く、安吾や漱石作品の漫画化にも取り組む。作品は「水鏡綺譚」「説経小栗判官」「ルームメイツ」「恋スル古事記」「戦争と一人の女」「死者の書」「夢十夜」ほか多数。第18回文化庁メディア芸術祭大賞受賞。

「2021年 『兄帰る 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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