山田風太郎忍法帖短篇全集 (8) 武蔵忍法旅 (ちくま文庫)

著者 :
制作 : 日下 三蔵 
  • 筑摩書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480039583

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  • 「名刀伝」(https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4758439613 )に、 山田風太郎忍法帖の一つが収録されていたので、他の短編も載っている短編集を。
    歴史の事実に、あまりにも荒唐無稽で自由奔放な想像力を羽ばたかせまくったお話。
    忍法の秘技は、男根が〜女陰が〜というものばかりで、あまりのトンデモ忍法の数々に「この忍法の開発者さえなぜそうなるかわからないんだから、作者にわかるはずがない」なんて言い切っているのがむしろ潔い?!笑


    『武蔵忍法旅』
    精悍な体をしているが、性質は傲岸にして獰悪、行く先々での奇矯は人々に恐慌をきたした。
    傾城屋で遊女相手に執拗で激烈な交合を行うが、自らは決して放出しない。
    そしてもともとの生臭い体臭にさらに精臭を漲らせた時の強さは尋常ではなかった。
    そんな牢人者の様子を見るのは、涼しげな美青年。

    苛烈な性質ながら将軍家兵法御指南師範という職を渇望している新免武蔵と、その武蔵との決闘を宿命として待ち受ける細川藩剣客の佐々木小次郎。
    佐々木小次郎は服部半蔵の忍者屋敷で新たな剣術を会得した。
    そして幕閣に呼ばれた服部半蔵は、新免武蔵の暗殺を命じられる。
    服部半蔵配下の忍者たちと、くノ一たちは、新免武蔵の後を追う。
    次々に襲いかかる忍者たちとの死闘、そして性の秘術で武蔵の体の自由を奪おうとするくノ一たちとの秘技。

    だが忍者たちの死闘は、剣鬼武蔵から剣聖武蔵へと昇華させることになったのだった。


    『おちゃちゃ忍法腹』
    太閤秀吉の朝鮮出兵の軍監石田治部少輔三成は、凍えるような海から女体の温もりで蘇った朝鮮の男、鴻天忠(こうてんちゅう)を配下に加えた。
    秀吉には、武将たちから送られた朝鮮の美女たちがいた。
    だがその朝鮮美女たちは、三成の陣内で次々に謎の死を遂げる。
    鴻天忠を見張った三成は驚愕の秘技を見た。
    そして鴻天忠の命を助ける代わりに、秀吉の側室、お茶々以外の者たちをその秘技で殺すように取引する。
    三成の取引は成功したように思えた。
    だが肝心のお茶々が、ひと目見た鴻天忠に興味を惹かれてしまう。
    なんとしても秀吉の跡継ぎを生みたい日本の女と、賊魁秀吉の力を削がんとする朝鮮の男の戦いが始まる。

    ===
    秘技。
    髪の毛の道筋を辿る甲羅に密書を記した蟹。
    体の一部分だけは凍ったままの男の氷の尿。


    『刑部忍法陣』
    徳川家康と石田三成の確執が深まる中、双方から一目置かれている大谷刑部吉隆。
    ある時大谷刑部の娘が、嫁ぎ先の真田家から出産のために戻ってくる。
    娘の護衛に就いたのは真田忍者の猿飛佐助。実は大谷刑部を石田三成方に味方させるという、真田安房守昌幸からの命令を帯びていた。

    ===
    秘技「信濃忍法人肌下面」
    人の皮膚らしきものから作った変装用マスク。


    『近衛忍法暦』
    「知らざあいって聞かせやしょう。天皇の御楯ぬらりひょん。皇位に暗雲かかるとき、必ず現れてその御楯となる。いままでも近衛家の大将に教えてやることが多いんだけどなあ」
    豊臣秀吉は天皇の位を狙っているのではないか…警戒する先の関白太政大臣近衛前久の前に現れたなんともへらへらした妖怪。
    近衛前久は、甲賀忍者牛ノ目百助の力を使い、秀吉を徳川と戦わせようとする。
    時は流れて昭和16年、近衛文麿は、ヨーロッパ外交から帰ってくる松岡外相を待っていた。
    この成果によりアメリカとの戦争になるか避けられるかの瀬戸際だった。
    そして近衛文麿は、実家の蔵にあった「ぬらりひょん」のことを考えていた。
    天皇を守るというぬらりひょん、本当に今もいるのだろうか?

    ===
    秘技。
    録画機能のあるギヤマン破片を目にとりつけることにより、そのギヤマン破片が録画した光景を見ることができるという忍法。
    …それって忍法(苦笑)?
    そして今回のぬらりひょんの判断のために日米開戦になっていないか??まあ皇室は存続したので、ぬらりひょんの後押しは正しかったのか間違っていたのか。


    『彦左衛門忍法盥』
    世の中に不明を持つが無気力で派手好き何だがむさ苦しい旗本集団ができていた。「下馬棒組」(→ゲバ棒)、「呑堀組」(→ノンポリ)、「飛屁組」(→ヒッピー)なんて巫山戯た名前をつけて江戸の町を屯っている。
    彼らが苦手とするのは、天下の御意見番大久保彦左衛門。だが今どきの若者にはしつこくてうるさい爺さん。
    幕府転覆を企む、忍法帖ではお馴染みの由比正雪と食客の森宗意軒は、旗本集団を使い反乱を起こそうとしていた。そして邪魔な彦左衛門を捕らえ、秘術を施さんとする。
    くノ一の秘技により、彦左衛門の昔の自慢話の真相が人々の目の前に映写され…

    ===
    秘技「精卵逆のぼり」
    老人の中に眠っている、数十年前の精を蘇らせ、盥の水と混ぜたら、その精子が作られた当時の情景を映し出すという驚天動地の被疑、まさに数十万の精虫の描き出す魔天の地獄図を映し出すんだって。
    理屈?それはこの忍法を独創開発した森宗意軒がよくわからないけどとにかくできたんだ、って言ってるんだから、作者にわかろうはずがない(←本当にそんなことが書いてある^^;)。じゃあ読者に分からなくてもなんか凄いってことでいいか。
    しかしこれも、大仰なことをした森宗意軒と由比正雪の目論見とは真逆になっていないだろうか。


    『ガリヴァー忍法島』
    ガリヴァー旅行記で、ガリヴァーが日本に立ち寄ったのは赤穂浪士事件の頃。そこで赤穂藩士と、ガリヴァーと、海賊キッドとを組み合わせてみたら”混ぜたら危険”になったのがこの作品。
    内容は名刀伝に書いたので割愛。
    秘技は「忍法女陰成仏」と、「忍法男根成仏」。全身を巨大な女陰にさせた女が、男を全身巨大な男根にさせて…なんか男が倒れてるんだけど、どうなってるんだこれ(@@?)

  • だいぶ前に角川からたくさん出ている忍法帖を必死に集めた。未だ全部を読んではないが、一時狂ったように読んだ。出来不出来は、それなりにあるが、このアンソロジーに収録されている作品は標準的な出来だと思う。

    題名の「武蔵忍法旅」と「ガリバー忍法島」が、印象に残った。特に「ガリバー忍法島」はその着想がいかにも風太郎らしく感心した。

  • なんといっても白眉は「ガリバー忍法島」だろう! ガリバーとキャプテン・キッドと堀部安兵衛を1つの小説で邂逅させるなんて、山風以外あり得ない!

  • やっぱり忍者ものを書かせたらこの人の右に出るものはいない。
    本書はそんな作者の短編集
    単なる忍者アクションでなく謎解き要素が織り込まれているのが面白く
    どの話もはオチがあるのがすばらしい。

    武蔵忍法旅 宮元武蔵も所詮は男
    おちゃちゃ忍法腹 朝鮮忍者も所詮は男
    刑部忍法陣 猿飛佐助と大谷刑部のコンビが送る関ヶ原前夜。 女はコワイという話。
    近衛忍法暦 ぬらりひょん というものを知っているかね?
    彦左衛門忍法盥 真相なんてこんなもの
    ガリバー忍法島 くのいちの恐ろしさといったら偉人もびっくり

  • 武蔵忍法旅
    おちゃちゃ忍法腹
    刑部忍法陣
    近衛忍法暦
    彦左衛門忍法盥
    ガリヴァー忍法島
    “忍法小説”はなぜうけるか

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著者プロフィール

1922年兵庫県生まれ。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞、97年に第45回菊池寛賞、2001年に第四回日本ミステリー文学大賞を受賞。2001年没。

「2011年 『誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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