沈黙博物館 (ちくま文庫)

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著者 : 小川洋子
  • 筑摩書房 (2004年6月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480039637

沈黙博物館 (ちくま文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ある小さな町の老婆に依頼され、
    形見の博物館を作る事になった博物館技師。

    様々な人の様々な生き方を見て、知って、
    生を感じれるというか…
    もう、どちらが生きてどちらが死んでいるのか
    分からなくなってくる。
    死者も形見を通して生きていると強く思える。

  • 小川洋子氏の小説の完成度は、村上春樹を遥かに超えている。
    なぜなら小川洋子氏の物語の世界は全て彼女の脳内であり、常に彼女が誰かになりすまし登場している。彼女の作品は彼女の心の中の核へと深く潜ることによってのみ完成されるからである。
    ただし、物語と同じように、その世界から抜け出せないし、物語は彼女の領域を超えて外へ羽ばたくことはない。のではないかと思う。

    かたや村上春樹の世界は彼の脳内で完結しない、なので本人の意思を超えた名作を書き上げる可能性はある。が、まだ書いてはいない。

  • 博物館技師の青年は、ある依頼を受けて小さな村を訪れます。
    その依頼とは「形見の博物館を創ること」。
    依頼主の指示を受け、技師は形見の整理や保存、収集など、博物館オープンに向けた準備をはじめるのです・・・。

    読んでいる最中、ほどよい緊張感が持続していました。
    形見という、死者の生きた証を扱う博物館がテーマだったからかもしれません。
    それとも、村で起こる連続殺人事件のスリルからでしょうか?
    物語がどう進むのか、どんな結末を迎えるのかが予想できず、ある種の怖いもの見たさのような力に押されてページをめくっていました。

    小川さんの物語、独特のなまめかしさにドキドキさせられます。
    物の輪郭の描写やちょっとした感触の描写。
    艶やかでも、ざらついていても。
    はっとするほどの美しさでも、思わず眉をひそめてしまう汚さでも。
    小川さんの文章では、それらが登場人物の魅力となり、時にはとてもセクシーに感じられるのです。

  • 結構アッサリ終わったと思って2回目を読み始めると不思議だ!!いつのまのか出てきていた人達全員を、こんなにも好きになっていたなんて。
    出会ったばかりが懐かしく、出会い始めの老婆の意味不明の言葉も、今の私には理解ができる。あぁ、またみんなに会える・・・
    小川さんの不思議な力はここだ。いつのまにか誰もかれも大好きにさせられてしまうのだ!
    なぜか読んでる途中ではあまり気づかないのだけども、だから飛び飛びに読んでも読み返しの必要がなくスッと入れるんだ!
    形見1つ1つの物語はほんの半ページのものから4ページのものまで本当にいろいろな話がある。重みのある老婆が話すからか、なぜか凄みがあり、読んでいる最中はそんなにも気に留めていないのに一度聞いたら全然忘れないくらいに、心に入り込んでくるのだ。

    しかし、警察の主人公への疑いは晴れないまま・・・ってか刃の照合を全部調べればバレるし、博物館に来れば、決定的証拠が飾ってあるし。
    いくら沈黙の伝道師に話せばずっとバレないといわれていたとしても、それってただのジンクスでしょ?だ、大丈夫なの?それ??

    老婆というはなんとも魅力的なキャラだ。この人が発する言葉全てがナゾを解くカギのように、物語のヒントのように、大切でちゃんと聞き取らねばならないと思わす力がある。だから私は老婆が大好きだ!だから、大好きだった老婆がアッサリと死んでいったのがすごく寂しかった。
    主人公が帰らずに引き継いでくれたのはすごく嬉しかったけど、じゃあ主人公のあとは、そのあとは・・・また誰かが引き継いでくれるんだろうか。
    沈黙博物館とは不思議な世界だなぁ。必要なのか不必要なのかたまにわからなくなるな・・・。
    現実なのかパラレルなのかもわからなくなるくらいに、不思議が混在している。
    耳の大きさや野球チームに爆弾魔。なき祭りに、シロイワバイソン・・・
    兄に手紙が届かなかったのははたして、兄がいないのかそれとも、主人公がいないのか、私にはどっちか解らない。

  • 生と死の世界があやふやになる。ここはどこなのか、季節はいつなのか、この人は生きているのか死んでいるのか。
    幻想的なのに生臭い。埃の香りまで感じるのに、浮遊しているかのように現実離れしている。まさに博物館。
    小川作品三作目、期待は裏切られませんでした。

    この本を手にとったときは、事情により「死」の傍にいたのに「死」を理解できず、半ば救いを求める形で小川さんの作る世界に惹かれたんだった。
    でもその直後、実生活がものすごいスピード感を持ち始めてしまって(仕事ゆえに)・・・どこか遠くで物語が終わってしまった感じが、悔やまれる。
    また、いつか、読み返そうと思います。
    ちなみに、堀江さんの解説まで含めて一つの作品だと思っています。
    アンネフランクの日記はそう活きるのですね、堀江さんの眼差しを通すと。その眼差しに相変わらず惚れる。

    私は、何を形見とされるのだろう。私は何によって、私だと語られるんだろう。
    考えてみたら、日々は死であふれているのに、死が存在しない時間なんて1秒たりともないはずなのに、
    死をとどめることは、とても非日常的なことなのだ。

  • 表紙のデザインが『クラフト・エヴィング商會』の吉田夫妻、小説が小川洋子、解説が堀江敏幸。この三つが揃った奇跡の一冊。
    博物館技師である「僕」がどこにでもありそうなちょっと寂れた町へ依頼を受けて出向き、依頼主から突飛な依頼を受けて、展示品を収集することになる。

    登場人物に名前はなく、「僕」は「技師さん」と呼ばれ、「少女」と「老婆」と「庭師」と「家政婦」がメインキャスト。
    この匿名性と、展示品が語りかけてくる異様なまでの存在感(個人としてのアイデンティティ)が、不思議なほど違和感なくスムーズにぼくを受け入れさせた。
    博物館建設予定地からほど遠いところに沈黙の伝道師と言われる修道士たちが暮らしていて、彼らは動物の毛皮を着込んで、いっさいの言葉にふれない生活をしている。
    彼らの存在がこの作品を詩的で隔世な雰囲気をかもす材料になっていて、小気味よい。

    展示品の収集とそれについて解説を清書する作業と、建築物ができていくさまを眺めること、それらを序盤は詳しく語っていき、基礎ができると、伝道師や庭師などにスポットがあたっていったり、野球や祭りなどの行事、イベントが挟まれており、テンポよく、飽きさせない。

    驚くほど、すがすがしい気持ちになれたのは、ぼくだけだろうか。

  • ここ最近で1番良いなと思う長編

  • 久しぶりに胸を打つ話を読んだ。老婆の描き方が素晴らしく、魅力的だった。自分だったら形見は何になるのだろう、と想像するのも楽しめるというか。言葉にならない思いがたくさん溢れてきた作品です。読み終わった時、この本に出会えてよかったと思った。

  • 象徴に満ち溢れている。

    沈黙。形見。博物館。冬。
    身寄りのないことが、逃げ場のないことが分かった主人公。高齢の老婆。バイソン。
    解説でホロコーストとの関連に触れているが、その文脈で行くと多くのことがなにかにあてはまる。

    そして、圧倒的で静謐な世界観。
    特に沈黙の伝道師の存在が不可思議で考えさせられた。
    死の象徴か。冷たくも温かくもない。常に意識すれば寄り添っているもの。あちらから語ってくることはない。

  • 小川さんの文体がやっぱり好きなことを再確認した。なんだろう、この淡々として優しい感じは。
    ストーリーもおもしろかったけれど、読んでいる時間が愛おしくなるような本。

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沈黙博物館 (ちくま文庫)の作品紹介

耳縮小手術専用メス、シロイワバイソンの毛皮、切り取られた乳首…「私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ」-老婆に雇われ村を訪れた若い博物館技師が死者たちの形見を盗み集める。形見たちが語る物語とは?村で頻発する殺人事件の犯人は?記憶の奥深くに語りかける忘れられない物語。

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