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この作品からのみんなの引用
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兄さんは物を所有するってことに、重きを置かないタイプの人間なんだ。執着がないんだよ。たぶん、あらゆる物質の成り立ちを知っているからだろうね。どんなに高級な宝石も単純な原資の組む合わせでしかないし、どんな気色の悪い下等生物でも、美しい細胞の配列を持っている。外見なんてただのまやかしに過ぎない。だから目に見えない世界の方を大事にするんだ。”人間の目の精度がいかに粗悪であるか、それを自覚することから観察が始まる”っていうのが兄さんの持論さ
― 104ページ -
僕の仕事は世界の縁から滑り落ちた物たちをいかに多くすくい上げるか、そしてその物たちが醸し出す不調和に対し、いかに意義深い価値を見出すことができるかに関わっているんです。
― 6ページ
みんなの感想・レビュー・書評
小川洋子さんの、科学的な雰囲気を纏ったおとぎ話のような、でもちょっと怖い側面もあるお話。
沈黙博物館とは、無くなった人の形見を展示するという。イメージ的には、近代・現代から取り残されたようなヨーロッパの古びた町で、形見を集め続けてきた老婆。それを補佐するまだあどけなさが残る養女。そして使用人の夫婦。
そこに博物館技師として雇われた僕は、沈黙する形見を老婆との共同作業で、陳列物として完成させていく。
初めはその全ての異様さに恐れを抱きつつ加わるが、いつの間にか技師としての使命・喜びを見出して、
そして、老婆の死に伴って、その仕事を受け継いでいく。
この町は、どこか村上春樹の「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」に出てくる、主人公が迷い込む世界の終りの町を彷彿とさせる。
怖いけれど、惹きつけられる沈黙の町。
どこか死のイメージと重なる。
小川洋子『沈黙博物館』読了。博物館を創るべく、遙か遠くの村に赴いた博物館技師の「僕」。依頼主の老婆の収集品とは、その村の人々の遺品だった。ファンタジーでありながら、ミステリーの要素もあり、ドキッとするほど生々しい描写もある。登場人物に体温を感じないのは自分だけか。不思議な作品。
1985年 村上春樹著 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と似ている。こちらは2000年に筑摩書房より刊行された。とりとめのない話がだらだらと続いていると感じるか、それともそこに深い真理を見出すのか読み手によって評価が分かれる。好き嫌いがはっきりする小説だ。エンターテイメント性なしと、あえて言い切ろう。
洋子さんはアンネに惹かれてヨーロッパの古い街を歩き、その時に出会った大きな館から妄想が発展してこのお話になったか・・・ と想像する。
洋子さんファンだけど、珍しく途中でなげだしたくなった。
極端にに冷えきった背景でストーリーも大きく動かずその淀みにもぐりこんでしまったが、身近な人たちに暖かさがあるおかげで読み終えることが出来た
博物館を作るための規約や心得など、細部にわたって描かれているので、妄想っぽい事柄まで真実味を帯びてくる。でも、盗んだ形見を集めて 注釈を添えて展示する・・・まずここに引っかかってしまった。 ここを納得したくて最後まで読んだもののこれは解明されていない。やはり舞台はいつもの異界で、兄と連絡がつかないのもそのせいで、もしかすると兄も現世で「弟は出て行ったままで連絡がつかない・・・」と案じているのかもしれない・・・・・と妄想に妄想を重ねてしまった。
沈黙というのは多様なもの。それぞれの沈黙の中にはそれぞれに情景があって、その情景は流れを持っているから、それは時間性というか、物語性みたいなものを帯びている。そして最も完全な形をもった沈黙、「死」も同様に。物語である以上、語ることには意義と、美しさとがあるのです。
生と死の世界があやふやになる。ここはどこなのか、季節はいつなのか、この人は生きているのか死んでいるのか。 幻想的なのに生臭い。埃の香りまで感じるのに、浮遊しているかのように現実離れしている。まさに博物館。 小川作品三作目、期待は裏切られませんでした。 この本を手にとったときは、事情により「死」の傍にいたのに「死」を理解できず、半ば救いを求める形で小川さんの作る世界に惹かれたんだった。 ... 続きを読む »
最初からわかっていたはずなのだけれど、なんとなく目を背け続けている感じ。のどかな田園風景の隅には常に闇と落胆の気配があり、季節の巡りとともに死と腐臭の予感はいよいよ避けられないほど濃くなってくる…。
「僕」と少女がゆっくり感情を通わせていく過程や、老婆との信頼関係の構築など丁寧に、時にユーモラスにすら、描かれている。でもどこか冷徹で無表情なあきらめのようなものが常につきまとっていて、最後には「ああ、やっぱり…」という一種の虚無感がもれるのでした。
小川さんは「モノ」と「仕事」に関する執着が強い。この作品はまさにその最たるものといったところで、いろいろと物思いを呼びます。
沈鬱で危うい色のない世界。
押し付けない生と死の、教戒を施されているよう。
冷たい雪がじんわり凍みてくる感じが堪らなく恐ろしい。
表紙のデザインが『クラフト・エヴィング商會』の吉田夫妻、小説が小川洋子、解説が堀江敏幸。この三つが揃った奇跡の一冊。 博物館技師である「僕」がどこにでもありそうなちょっと寂れた町へ依頼を受けて出向き、依頼主から突飛な依頼を受けて、展示品を収集することになる。 登場人物に名前はなく、「僕」は「技師さん」と呼ばれ、「少女」と「老婆」と「庭師」と「家政婦」がメインキャスト。 この匿名性と、展示... 続きを読む »
以前、読んだ小川洋子さんの「ミーナの行進」を
夜の世界にしたような雰囲気を感じました。
また、小川さんがホラー小説を書いたら、
すごい作品ができるのだろうなとも感じました。
この作品に関しては、大切にじっくり読んだともいえますし、
読み終えるまでに骨を折ったともいえます。
それでもボクは、小川さんのように繊細な筆致のエッセンスが
自分にも欲しいので今回も大変勉強させて頂きました。
耳縮小手術専用メス、シロイワバイソンの毛皮、切り取られた乳首…「私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ」―老婆に雇われ村を訪れた若い博物館技師が死者たちの形見を盗み集める。形見たちが語る物語とは?村で頻発する殺人事件の犯人は?記憶の奥深くに語りかける忘れられない物語。
小川洋子、2冊目。「偶然の祝福」が思いのほかよかったので。 主人公は博物館技師の30代の男。 はるばるやってきた街で、大きなお屋敷に住む金持ちの、そして偏屈で風変わりな老婆から、ある博物館を造ることを命じられる。 老婆がこれまで集めてきたコレクションを収め、そしてこれから先は男がその収集を引き継ぐことになる、という。 そのコレクションとは・・・。 ちょっと暗くて、抽象的... 続きを読む »
博物館技師の「僕」が呼び寄せらせた村での仕事は
老女が集め続けた人々の形見を収集、展示する博物館を作るコトだった・・・
こちら側とあちら側の境界にある博物館
形見は強烈な死のイメージがあった
二度は手に入らないモノだし
いない人を思う為の品物だから
でも、この話を読んでみて
生きた証であり
生と死を内包する
唯一のモノなんだと
それを集め続ける老婆と僕は
どこの世界に属しているんだろう
面白かった
消えてしまわないものは何だか悲しい。
持ち主の元から消えてしまった物の物語。
小川洋子のひんやりとして静かな世界観がここでも見られます。
朝食の後のコーヒー飲む時間に、1章ずつゆっくりゆっくり、味わって読みました。
乳首の描写がめちゃくちゃ怖いです…痛いです…。
というか、小川洋子さんのこの想像力のすごさはどこからわいてくるんだろう?オチはハッピーともバッド(?)とも取れるけれど、読後感に不快感は全然ありませんでした。
そろそろ真面目にアンネの日記を読もうか…。

僕がその村に着いた時、手にしていたのは小さな旅行鞄が一つだった。
相変わらず不思議な世界に包まれてる小川作品。
ちょっぴり切なくて、ちょっぴりグロテスクで・・
だけどいつも最後まで...





