日本の歴史をよみなおす (ちくまプリマーブックス 50)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 293
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480041500

作品紹介・あらすじ

後醍醐天皇の出現が、日本の歴史全体を変えた驚くべき事実。「一遍聖絵」から読み解く差別の発生。ひらがな文字や銭の普及の背景とその意味。今日の私たちを束縛し、重大な影響を与えた14世紀の出来事から、新しい日本史像にいどむ刺激的な試み。

感想・レビュー・書評

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  • 古本で購入。

    筑摩書房の社員向けに行った5回の講義をまとめたもの。
    社員教育として第一線で活躍する歴史学者を呼ぶなんて、すごいし羨ましい。
    他の出版社はわからないけど、筑摩の真摯さみたいなものが見えるな。

    少し長いけど本文から。
    「現在の転換期と同じように大きな転換が南北朝動乱期、14世紀におこったと考えられるので、この転換期の意味を現在の新しい転換期にあたってもう一度考え直してみることは、これからの人間が進む道を考えるうえでも、また日本の文化・社会の問題を考えるうえでも、なにか意味はあるのではないかと思うのです」
    この視点から、「文字」「貨幣と商業・金融」「畏怖と賤視」「女性」「天皇と『日本』の国号」の5つのテーマで話していきます。

    まさに網野史学のエッセンス満載の1冊。
    その史学の是非はともかくとして、網野の著作を読むなら必ずリストに加えておくべき本かと思います。

    読んでいておもしろかったのは「文字」の問題。
    平仮名と片仮名の使い分け、というのは初めて知った。

    文書での仮名の使用において、カタカナは圧倒的に少数派だとか。
    近世になると助詞に使われる程度だったカタカナは、「文書の世界では基本的には口頭でいわれた言葉を記す文字」であったらしい。
    文字の持つ機能や意味といったものが非常に意識されていたんだろうね。

    他のテーマについての講義も抜群におもしろい。
    個人的には、網野の天皇制度に対する態度には全然賛同しないんだけど。
    でも本のおもしろさは間違いなし。中世史をかじろうとする人にオススメの本。

    一緒に買った『続』の方も楽しみ。

  • 日本人の識字率は高かったことに驚く。また、差別がいつごろから発生したかも興味深い。天皇についてはいろいろな見方、考え方があるようだ。宿から夙の発生、長更。非人、犬神人は、特別な存在として身分保障されていた。穢れをはらう=神仏に直属。
    天皇とは?皇帝の顔と神聖王的な顔。

  • この作者の一大テーマである「中世に失われた神聖性と穢れ」についてさまざまな角度から読み解いた本。殆どは他の本にも書いてあることだが、日本の定義がいつからなのかについての考察は面白かった。

  • P141
    「14世紀のころ、人間と自然とのかかわり方に大きな変化があり、社会がいわばより「文明化」してくる、それとともに「穢れ」に対する畏怖感はうしろに退いて、むしろ「汚穢」、きたなく、よごれたもの、忌避すべきものとする、現在の常識的な穢れにちかい感覚に変わってくると思います。
    動物に対しても同様で、人の力でたやすく統御できない力をもった生き物とう感覚がうすれて、「畜生」「四つ足」といういい方すら(略)。」
    上の文章や非人のひとつ、「犬神人」がもろに『もののけ姫』。

  • 絵画の中に描かれた人物からその時代や風俗をよみとくところが興味深かった。特に近現代の差別を過去にさかのぼって解釈する点は説得力があると思う。30年前に「若者に向けて」発表したという本書。当時に読みたかった。

  • 閲覧室 210.4||A

  • 授業や物語だけでは知らない歴史。

  • 2016/1/26読了

  • 目から鱗。どうしても歴史上の出来事は現代のフィルターをとおして、見てしまいがち。しかし、本書のように当時の背景、価値体系を露わにして、見えてくるものが現在と違うことを味わうのは、異文化交流にも似て、興味深い。賤民について、もともとは神に連なる人だったなど。

    ・片仮名は口頭で語られることばを表現した。起請文、裁判記録など。
    ・和同開珎は一種の呪術的な意味を持った使われ方もしれいる。
    ・利銭、利息は神物、仏物の貸出として、始まっている。
    ・「無縁所」という寺院は、財政的に弱くなく、商業や金融で儲けていた。
    ・フロイス:16世紀。女性が西洋と違って、日本は奔放、力強かった。
    ・鎌倉時代、女性が所領を持ち、譲渡、売買をしていた。室町から不動産の面で多少弱くなるが、動産については財産権を持っていた。
    ・平安時代から地名を苗字として名乗る習慣が広がるが、豊臣秀吉も豊臣は天皇から与えられた形になっている。その意味で、ルーツをさぐるとみな天皇になってしまう。
    ・日本という国名は中国からみて定着した。天皇も。

  • 時代が下るにつれて、非人の扱われ方が変わっていく過程が興味深い。
    生きるための行いは全て神聖だ、という考え方は好きだ。

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著者プロフィール

1928年、山梨県生まれ。1950年、東京大学文学部史学科卒業。日本常民文化研究所研究員、東京都立北園高校教諭、名古屋大学助教授、神奈川大学短期大学部教授を経て、神奈川大学経済学部特任教授。専攻、日本中世史、日本海民史。2004年、死去。主な著書:『中世荘園の様相』(塙書房、1966)、『蒙古襲来』(小学館、1974)、『無縁・公界・楽』(平凡社、1978)、『中世東寺と東寺領荘園』(東京大学出版会、1978)、『日本中世の民衆像』(岩波新書、1980)、『東と西の語る日本の歴史』(そしえて、1982)、『日本中世の非農業民と天皇』(岩波書店、1984)、『中世再考』(日本エディタースクール出版部、1986)、『異形の王権』(平凡社、1986)、『日本論の視座』(小学館、1990)、『日本中世土地制度史の研究』(塙書房、1991)、『日本社会再考』(小学館、1994)、『中世の非人と遊女』(明石書店、1994)。

「2013年 『悪党と海賊 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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