生命観を問いなおす: エコロジーから脳死まで (ちくま新書 12)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480056122

感想・レビュー・書評

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  • 個々の話(章)はいいんだけどねぇ。。全体を貫く主張が、最初にしか出てこなくて、読み進めていくうちに、結局臓器移植の話がしたかったのね、と。いやそれはそれでいいんだけど。1冊の本にするために無理にエコの話をいれたのでは疑惑。

    ・やはり一番価値があるのは後半の臓器移植の章であろう。  ・エコロジー思想の歴史の話は知識を得るためのものと思いましょう。

  • 環境問題から脳死問題まで、現代は生命にまつわるさまざまな問題に直面しています。しかし、これらの問題を生み出したのはわれわれ自身であり、われわれの「生命」の本性の奥深くに、他のいのちを犠牲にしてまでも生きたいという欲望が根を張っていると著者は指摘します。そのうえで、生命を「調和」や「共生」などといった美しいことばで語るのではなく、生命の奥底に存在するさまざまな矛盾に向きあい、解明しなければならないと主張しています。

    著者はこうした観点から、生命にかんする具体的な問題に切り込んでいきます。たとえば、リサイクル型文明の提唱が資本主義システムと結びつき新たな南北問題を生み出すのではないかという指摘がなされています。また、1980年代以降のアメリカにおけるディープ・エコロジーとニュー・サイエンスの勃興や、日本における「いのちと癒し」にまつわる言説の流行をとりあげ、「生命」を称揚するそうしたロマン主義的な言説が、生命と現代文明との間に存在する入り組んだ関係を見ようとしないことを批判しています。

    さらに脳死問題についても突っ込んだ考察がなされており、とくに梅原猛による文明論的な観点からの脳死問題への取り組みが俎上にあげられている。梅原は、「他人の臓器をもらってまでも自分が生き続けたいという「エゴイズム」を、みんなでサポートしてゆく」という社会システムの分析・批判をおこなっていないと著者は批判し、そのために彼の主張する大乗仏教の菩薩道に基づく彼の臓器移植論も、なし崩し的にシステムの内に取り込まれてしまう恐れがあると批判しています。

    著者の基本的なスタンスは明確ですが、「生命の欲望」と現代文明との関係を解明することの必要性を主張するにとどまっていて、立ち入った分析がおこなわれているわけではないように思えます。著者の提唱する「生命学」の序論という位置づけの本だといってよいのではないでしょうか。

  • 201507つまみ読み
    蔵書。必要に迫られて。

著者プロフィール

1958年高知県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学。大阪府立大学にて、博士(人間科学)。東京大学、国際日本文化研究センター、大阪府立大学現代システム科学域を経て、早稲田大学人間科学部教授。哲学、倫理学、生命学を中心に、学術書からエッセイまで幅広い執筆活動を行なう。著書に、『生命学に何ができるか――脳死・フェミニズム・優生思想』(勁草書房)、『増補決定版 脳死の人』『完全版 宗教なき時代を生きるために』(法藏館)、『無痛文明論』(トランスビュー)、『決定版 感じない男』『自分と向き合う「知」の方法』(ちくま文庫)、『生命観を問いなおす――エコロジーから脳死まで』(ちくま新書)、『草食系男子の恋愛学』(MF文庫ダ・ヴィンチ)、『33個めの石――傷ついた現代のための哲学』(角川文庫)、『生者と死者をつなぐ――鎮魂と再生のための哲学』(春秋社)、『まんが 哲学入門――生きるって何だろう?』(講談社現代新書)、『生まれてこないほうが良かったのか?』(筑摩選書)ほか多数。

「2022年 『人生相談を哲学する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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