世界を肯定する哲学 (ちくま新書 283)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480058836

作品紹介・あらすじ

思考することは、ひたすら"問いかけ"をつづけることである。思考のプロセスに演算不能領域を組み入れ、思考することの限界を実感することで、逆説的に"世界"があることのリアリティが生まれる。風景や動物を文学的な比喩として作品に組み入れず、ただ即物的に描写する特異な作風の小説家によって、問いつづけられた「存在とは何か」。宇宙の外、サッカー・ロボット、カフカの視野、夢の中の生、十四歳の夏の朝の経験…等の具体的な事象から、小説家独自の思考プロセスを経て、存在することの核心に迫ってゆく。そして最終的に、意識や記憶が、"私"の側でなく"世界"の側にあることが描き出される、世界のための、世界の肯定のプログラム。

感想・レビュー・書評

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  • 哲学

  •  脳科学や生物学の本を読み始めていたので、本書の素材となっている科学的思考の部分が納得できた。AIが、限りなく人間に近づくように見えても、リアリティをとらえたときの不思議さは、AIには無理では。有名な哲学者を読み込んでいるのもすごいですが、その言説を小説家としての体験を通して読み直してとらえなおしてくれるありがたさを何度も感じました。人間=肉体+言語とみるとらえ方に納得も。

  • 哲学初心者にはおススメしない。

    「当たり前の事を難しくこねくり回してるだけ」
    っていう、よくある哲学批判を払拭できる内容ではないと思う。

    自分がそうでした(´・ω・`)
    で、結局?という読後感・・。

  • 読書体験というより経験という感じを持たせるものが特にこの本には強い。

  • いろんなことを思いながら読み進めて、面白かったことは間違いないが、その割にすっきりしない読後感。そんなに難しい事が書かれている訳ではなさそうなのに、わかったようでわからないというのが素直な感想。ひょっとして凄い難しい事が書かれていたのかもしれないし、自明過ぎることを別な角度から語っていたのかもしれない。
    <人間>が<世界>を語るうえで、<言語>は不完全であるということ。こうした言い方は、哲学の文脈でよく見るが、この事実をあるがままに受け入れ、そういった歪みの中に<自分>を受け入れるとい云っているのであろか。何度か読み直せば、もう少し理解できるのだろうか。

  • うーん。
    一生懸命に考えているということは伝わってくるのだが…。
    わかりやすければいいというものではないが、何を伝えたいのかということが伝わってこない。

  • ――――――――――――――――――――――――――――――○
    書くことも思考することも、それを作った人間の意図と別の原理が潜んでいるために、その原理に正しく身を任せておけば半ば自動的にそれなりのものを生産する。もちろんそれゆえ、結果として人間は思いもかけない地点まで自分が導かれていたことに後になって気づく。書くことが人間に、文字を持たなかった頃の人間にはなかったもの、つまり過剰なものを作り出してしまった――ということだ。73
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    誰でも母国語であるかぎりはかなり自由自在に好き勝手にアレンジしつつしゃべっているけれど、それはあくまでも言語の持つ不自由さを正しく見に付けているからできることであるということは、外国語を習うとよくわかる。(…)人間が自由に何かを操れるというときには、まずはそれの持つ不自由さを徹底して受け入れていることが前提としてある。82
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    車の運転でもパソコンの操作でも、すべて人間が主体的に部分を取り出すことのできるものではなくて、こちらからシステムの中へと参入していくことによってしかそれと関ることができない。それなのに人間はこの、システムに招き入れられた状態を「習得」とか「使いこなす」という風に、自分の主体性においてそれをしていると思いたがる。87
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    DNAを「『デオキシリボ核酸』の略称であり、塩基にはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の四種類がある」と辞書のように理解するのではなくて、「DNAを調べることでその人の祖先が北方系か南方系かわかる」と使うことこそが言語というシステムの中での正しい振る舞いであって、システムであるかぎりなかば自動的に使いつづけることで意味が厚みを増すようになっている。90
    ――――――――――――――――――――――――――――――○

  • @nasumiso さん

  • [ 内容 ]
    思考することは、ひたすら“問いかけ”をつづけることである。
    思考のプロセスに演算不能領域を組み入れ、思考することの限界を実感することで、逆説的に“世界”があることのリアリティが生まれる。
    風景や動物を文学的な比喩として作品に組み入れず、ただ即物的に描写する特異な作風の小説家によって、問いつづけられた「存在とは何か」。
    宇宙の外、サッカー・ロボット、カフカの視野、夢の中の生、十四歳の夏の朝の経験…等の具体的な事象から、小説家独自の思考プロセスを経て、存在することの核心に迫ってゆく。
    そして最終的に、意識や記憶が、“私”の側でなく“世界”の側にあることが描き出される、世界のための、世界の肯定のプログラム。

    [ 目次 ]
    そもそも人間はこの宇宙に存在しなかったのではないか
    世界のモデルと視覚(俯瞰と自己像;視覚イメージを持たない思考)
    「記憶の充足性」は思考によって浸食される
    「私」はすべて言語というシステムに回収されうるか
    「リアリティ」とそれに先立つもの
    私が存在することの自明性について
    いまの言語(思考法)とそうでない言語(思考法)
    夢という、リアリティの源泉または“寸断された世界”の生
    記憶は“私”のアイデンティティを保証するか
    “精神”が書物の産物だとしたらインターネットの中で“精神”は…
    生きる歓び

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 同じ時期にアウトブリードも書きあぐねている人のための小説入門と残響を読んでいたせいか、つながりあって面白かった。
    何回も読みたい本。

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著者プロフィール

1956年、山梨県に生まれる。小説家。早稲田大学政経学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年『この人の閾(いき)』で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、2018年『ハレルヤ』所収の「こことよそ」で川端康成文学賞を受賞。主な著書に、『生きる歓び』『カンバセイション・ピース』『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』ほか。

「2022年 『DEATHか裸(ら)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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