からだを読む (ちくま新書 363)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480059635

感想・レビュー・書評

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  • 消化器系のお話。
    分子レベルにまで分解しないと体に取り込めない(タンパク質→アミノ酸、多糖類→単糖類)、消化器管は体の外だ。。。
    完全に分子レベルにまで分解して取り込むなら、安全ですもんね。よくできてる。
    なのに、アレルゲンを食べるとアレルギーを起こすことがある・・・おもしろい。

    「分子レベルに分解しないと~」・・・ここにちょっと引っ掛かりました。水に溶ければ、分子レベルに分解しなくても取り込めるのかもしれない、と思ったのです。どなたか教えてください。

  • 帯表
    毒にも薬にもならない。
    口から肛門まで、
    人体内部のディティールを
    多彩な解剖図とともにみる。
    帯裏
    口とか肛門とか、われわれがふつうに用いていつ名詞も、実体は変なものである。目で見れば、たしかになにかあるが、実体がない。「口が重い」というのは比喩に使われるくらいのもので、実際には、口の重量は測れない。肛門の重さに至っては、「肛門が重い」という比喩すらない。
    (本文「口と肛門」より)

  • 高校生物や医学系の解剖学の基礎知識程度が無いと読解するのに少し何がありそうな気もする。
    予備知識のない人が咽頭だの腹膜だの門脈だのと言われて、簡単な説明だけでその場所や働きをすぐにイメージできるだろうか?

    ある程度、解剖学や生理学や生物学の知識があり、それらについて少なからず疑問を持っている人にとっては、なるほど、と思う考察があるのではないかと思う。

    予備知識のない人は、知らない名前が出てきたらスマホなどで調べながら場所や形や働きを確認しながらゆっくり読むとよいだろう。

    現代人はほとんど性と金という狂気に冒されているので、純粋な知性に触れることで洗心できるのではないだろうか。

  • 胃から大腸まで、他にも腸間膜、十二指腸の構造が説明されているエッセイ。
    養老節が炸裂していて面白い。

    「あなたの身体は、しょせんあなた自身のものでしかない」という当たり前の一文が、何気に目からうろこだった。
    他は境界問題が面白かった。

    消化管の内部は厳密には外界
    消化管は口から肛門までただの一本の管である
    現代人は性と金という狂気に冒されている

    消化管の手術を数回した身としては、ありがたい説明だったと思う。
    腸間膜などが書かれている新書は珍しい。

  • 上唇の中央には、縦の溝がある。これを人中と言う。
    これよりも上の穴はすべて左右が対になっており、これより下の穴はすべて一つしかない。上の穴:目・耳・鼻、下の穴、口・尿道口・膣・肛門
    ヒトの歯は全部で32本、上下左右対照、8本が一単位、前の日本が切歯、隣が犬歯

  • 口から肛門までを解剖学者が一つ一つ説明した本。
    口から肛門までは一つの管であり、解剖学的に分けてももともとは一つのものともいえる点が面白い。すなわち、解剖学の歴史は、解剖するごとに器官に名前を付けてきた点で、分節の歴史といえる。

    また、著者の思想が一般的なものの見方に別の切り口を投げかけている様子が随所にみられる。フィールドサイエンスとしての解剖学がディテールにこだわること、つまり単純化して物事を理解することはできないということ、などの考え方がその思想背景にある。

  • 前に読んだ人体の不思議展…に名前がよく出てきたんでこれを読むと、解剖学における人体への興味というのが、こういう風に湧くものなのだなあと、いう確認ついでに読みまして、器官の解釈に慎重だなと思うのは、これは◯◯の働きをしている、とは言っても、◯◯をするためにある、とはあまり言わないことだね。どっかで書いてたけど、必ずしも人間の身体はよくできているわけではない、という証左がある。そうしたら、生きているものを構成するとはなんなのか、その研究に終わりはなさそうな雰囲気だね。忙しいって何回もかいとるし。

  • めずらしく解剖学の本だ。とは言え著者は解剖学者。脳の本ばかりと思ったらそうではなかった。数年前に雑誌に連載されたものをまとめたものだ。1節1節読み切りでずいぶんと読みやすい。けれども知らなかったことがわんさかと出てきて、人に話したくて仕方ない。なかなか聞いてくれる人はいないのだけど。本書ではからだのなかの消化器のみが取り上げられる。本当はもっと書きたかったようだけど。さて、顔写真でも見せられて口を切り取りなさいと言われたらみなさんはどうするだろうか。唇のまわりを切るだろうか。解剖学的にはその赤い部分だけが唇というわけでもないそうだ。鼻の下の部分も唇なのだそうだ。そもそも口には実体がない。言ってみれば穴自体が口だ。食べ物・飲み物ときに空気が出入りする穴が口だ。だから口は解剖できない。肛門もしかり。胃が痛いというが、本当に胃が痛むのだろうか。胃のどの部分が痛むのか。まったくそんなことは分からない。手の指のどこが切れて痛い、というのなら分かる。痛いと感じるのは脳だ。結局、内臓の地図は脳に描かれていないのだそうだ。だから、からだの内部のことはなかなか分からない。気づいたときには手遅れだったりする。胃が痛いと言って実は心筋梗塞だったりすることもあるのだそうだ。胃はなくても良い臓器だ。その証拠に胃がんで胃を全部切り取ることがある。それで死んでしまうわけではない。胆のうもそうだ。切り取っても普通に生活している。ではなんのためにあるのか。想像するよりないが、ほとんどの脊椎動物に胃があるところからすると何らかの理由が考えられるはずだ。おそらく、野生の状態ではいつでも餌が手に入るわけではない。それで胃袋に蓄えておくことが出きるようになったのだろう。現在の人のように3食きっちり食べたりしていれば、胃はなくても良い。3日に1回しか食べないという人がもしいたら、胃はどうなるのだろう。その役目を発揮するのだろうか。胆のうでは胆汁の水分を吸収してから十二指腸に送るのだそうだ。これもなかったからと言ってどうなるわけでもない。現に胆のうを持たない動物も多い。他の動物と人のからだを比較するのはおもしろい。だけどそれはなんの役に立つのかと言われると答えられない。だから調べる人が少ない。肛門のまわりには腺がある。唾液腺などの腺だ。そこからはにおいが出る。ヒトにもあるのだそうだ。イヌなどは互いのお尻のにおいをかいだりする。何かの情報がそこから得られるのだろう。著者はイタチの腺を調べようとしたが、さいわい手に入らずあきらめたそうだ。スカンクの腺を調べた人もほとんどいない。当たり前だ。部屋中が臭くなるから。しかし、知らないこと、分からないことはまだまだいっぱいある。特に生き物については。

  • 身体について、解剖学の検知から養老先生が解説してくれています。
    身体の口から内臓、腸にいたり肛門につながる各部分をそれぞれ解説しています。

  • 養老孟司が、専門である解剖学について一般の読者に向けてわかりやすく解説した本です。

    最初に、解剖学では実体のない「口」という用語を、正式には置いていないことに触れて、人体の各構造を分解し名づける解剖学という学問における言葉の問題に説きおよんでいるのは、この著者ならではという気がします。

    そのほかにも、著者の持ち味である「空とぼけ」のユーモア精神が随所に発揮されており、あまりなじみのない分野の本であるにもかかわらず、たのしんで読むことができました。

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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