組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために (ちくま新書)

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著者 : 沼上幹
  • 筑摩書房 (2003年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480059963

組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために (ちくま新書)の感想・レビュー・書評

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  • 第一部
    組織の基本

    組織の基本は第一に官僚制であり、下からロワー、ミドル、トップに分けられる。ロワーが基本的なルーチンを行い、マニュアルに載っていないような例外事項はヒエラルキーの上へと登っていき処理される。トップは、例外への対応はせず、長期的なスパンにたった経営計画など戦略思考が求められる業務を行い、ミドルは両者の中間として業務を行う。ここで、例えば、例外事項が多くなってしまい、トップが必要な意思決定をできないくらいそれへの対応に追われてしまうと組織は正常ではなくなってしまう。第二ボトルネックへの注目と対処である。第三に組織はヒトが運営するものということである。これは当たり前のことかもしれないが、基本的に組織構造を変えたから全てハッピーとなるわけではない。組織構造以前にヒトに問題がないかをボトルネックを考慮して考えることが重要であり、この筆者の主張は非常に的を得ているものであると考えられる。そして、ヒトが組織を運営する以上ヒトのことを考えなくてはならない。そこでマズローが挙げられているが、日本では自己実現欲求が重視され、所属・承認欲求が軽視されていると筆者は言う。自身は承認欲求が強い方であるので、あまり新鮮さは感じなかったが日本企業全般の空気として頭の片隅に入れておくことは損でないと考えられる。


    第二・三部

    ヒトが運営する以上ヒトの心理が絡んでくる。個人としてのヒトと組織の中でのヒトの行動は必ずしも一致しない。組織の疲労・腐敗原因として筆者はフリーライダーの存在や厄介者、ルールの複雑怪奇さ、そして成熟事業部の暇を挙げている。外に向いて利益を稼いでくるヒトが、内向き調整役・社内政治家(宦官)のヒトに食われてしまうということは古来よりあったことであろう。(中国の官僚・外戚・宦官の話は格好の例。)本来利益を出すために外に出て行くヒトが、内向きな政争ばかりに気を取られていくと会社はダメになっていってしまう。そうさせないためにも上層部は敏感に腐敗の臭いを感じ取らなければいけない。



    全体の論調としてもっともなことを筆者は言っていると思う。そして、筆者の主張とともに、野党的ではいけないという筆者の姿勢に大いに賛同した。会社の上層部があいまいを決め込み、決断をしなかったり、建設的な意見を出せない人が多いようでは成長は見込めない。

    組織論の著書であるが、組織論のみにフォーカスせず、日本の組織のなかでの自分を鑑みることができる本であると思う。







    組織論を考えるということはヒトを考えることと同値であると考えさせられた。




    ※本書でいう組織は日本の組織のことである。また、海外発の組織論では雇用が流動的であるという前提が置かれているが、日本ではそうでない傾向が未だに強いということを頭に入れておく必要がある。

  • 日本型組織の本質を維持しつつ機能不全の組織に堕さないよう、自ら主体的に思考し実践していくことの重要性を説いた書籍です。特に組織運営において陥りやすい過ちについて的確に指南されています。推薦者:『人事課』

  • 組織の問題を解決するには?

    →まず仕事の多くをプログラム化し、そのプログラムで対応できない例外をヒエラルキーによってその都度上司が考えて解決するのが基本中の基本
    短期的には分業が効果的だが、長期的には緩やかなオーバーラップ型の分業が効果的
    ボトルネックは短期と長期では異なる
    何らかの判断を下して最終的に問題解決をするのはヒトであり、組織構造それ自体ではない

  • ・日本企業には日本企業なりの組織戦略がある。安易に欧米に右に倣えをし、中途採用・解雇をスタンダードにしてもうまくいかないだろう。
    ・組織の基本は官僚制。官僚制はよく槍玉にあがるが、基本を押さえてこそ、アレンジが機能する。守破離。
    ・優秀な人間が根回しなどの内部政治に奔走されないようなマネジメントが必要。
    ・会社の何かがうまくいっていないとき、組織がスケープゴートとして挙げられるが、それは結局組織を槍玉に挙げれば誰も責任を背負わないから。組織を構成するのは人で、人が変わらなければ組織は変わらない。
    ・マズローの欲求階層説は誤解され、生理的欲求から自己実現欲求に飛躍しがち。低位の階層の欲求が満たされることで、次の欲求が生じるというもので、自己実現の前に現代は承認・尊厳欲求を満たすべき。
    ・従って、褒める、ということが最も安く最も価値のある報酬。これを忘れがち。
    ・経営者とは、決断することが仕事。たとえ皆にとって痛みを伴う決断であっても、皆のためになることを自分で考え決断しなければならないのが経営者。
    ・キツネの権力が現れたら、トラに直接会いにいく。その勇気が必要。

    →結論、どんなことがあっても表に出て闘えるだけの能力と勇気を持ち合わせていなければ組織をよくしていくことはできない。その勇気を裏付けるものとして、いつでも転職して食べるのに困らないスキルやネットワークを作り続けることが大切だと再認識した。

  • 「「うちの会社は腐ってる!」と、お嘆きのあなた。まず裏面の項目をチェック。そのページを読んでみる。そして自分の頭で考える。」という帯のコピーにしたがい、裏面をチェックしたところ8割方当てはまっていると感じたので、読んでみることにしました。とくに160ページや180ページなどはまさしくその通りと合点がいく内容でしたし、142ページなどもやや当てはまるかな、と感じました。もちろん、この感じ方は個人的なもので、わが社(うちの大学)がそのようであるという事実を言っているのではないので、ご注意ください。

    しかし、「経営組織論」というのはこういう話が主なのでしょうかね? まったく経営組織論を学んだことがないので、何とも言いがたいのですが……。

  • 著者が「自分で経営した場合、どういった点に気を付けるか」という点にこだわり書き上げたという、組織マネジメントの本。2003年発行だが現在読んでも全く違和感がない。
    TOC、マズロー、事業部制といった組織論を交えながらも、著者が自分の言葉で咀嚼しており、内容は非常に分かりやすい。
    例えば組織設計でのトップダウンで作り上げた理論に対して現実が追いつかない点に対して「スパッと割り切った組織に不純物を後から混ぜる。最初から混ぜて作るのでは、しがらみだらけの組織になる」といったように。また、組織へのフリーライド(ただ乗り)、キツネ(宦官的振る舞い)の悪癖だけでなく、それらを生み出す「大人しい優等生」の無責任さを問う等、切れ味も鋭い。

    ●メモ
    ・日本の高度成長、世界最高の水準になったのは日本が優れてただけでなくアメリカに大いに問題があったのではないか
    ・日本は長期雇用が前提である。アメリカ、その他の国のような雇用へ簡単になるわけではない。その問題を捉えながら現実的な施策が必要
    ・組織は毎回発生する問題を都度考えては組織の意味がない。手順、ルール遂行により実現してこそである
    ・人は目の前に大量のルーチンワークが積まれると、それを優先し、創造的な仕事を後回しにする
    ・経営のボトルネックは短期と長期で異なる
    ・マトリクス組織にてパワーバランスを取るのは難しい。解決策は「腹を割って話す」「トップ判断」「ミドル層がバランスを取る」。だが3つ目は本来両組織のトップが決断することを放棄しただけ
    ・マズローの法則では自己実現の前に「承認欲求」がある。これを如何に実現するか。これを軽視している傾向がある
    ・フリーライダーを防ぐことは難しい。責任感の強い人を採用し、会社と自分の運命がリンクすることを示していくしかないのではないか。エリートと呼ばれる人の賃金を大幅にあげるなどの考えもある。その場合、階層が生まれるため、その中間層が重要になってくる
    ・決断とは「何かを取り、何かを捨てる」ため、一部の人には苦痛を強いるものだ
    ・何本ものプロジェクトが乱立する状態は危険、「決断したつもり」に経営者がなっている可能性が高い
    ・エースの無駄遣いには注意。エースには仕事が集まる。無能な人間は暇である。
    ・意思決定で「自分の考えとは違うが、●●さんの意向を踏まえて…」という理由での決定は健全な議論を黙殺してしまう。議論の相手が存在しなくなる
    ・成熟した組織から人を抜くのは難しい。
     彼らは生産性も高く優秀だが、その場から抜け出さないし、権力もある。だが、彼らの忙しさは「内向き」である。なぜなら生産性が高いため、新規事業より忙しいはずがない。これは組織腐敗の始まり
    ・組織腐敗が最悪まで進んだ場合、「複雑怪奇なルールの廃止」「成熟事業部から優秀な若手を乱暴に引き抜く」「優秀な人材が暇になるような組織にする」ことである





  • 理論だけはなく実際の人の行動等まで含めた事を述べられており納得感がある。実務に即した内容。

  • 組織戦略というより組織マネジメントの指針ともいうべき内容。若干、論理性を欠く部分もあるが、ありきたりな体系に固執することなく、企業が陥りがちな罠をうまく説明している。
    解決の糸口は具体的に示されるわけではないが、組織の硬直化の予兆が非常に分かりやすく書いている。エリートとノンエリート、トラとキツネ、フリーライダーなど様々な社畜の姿を歯に絹を着せず、歯切れよく記述。
    学術というより経営論かもしれないが、久々に読んでいて腑に落ちる本でした。
    でもこれをリバイズして学術レベルにあげるには、相当なハードルがありますね。

  • バブル期には絶賛された日本的経営も、いまや全否定の対象とすらなる。
    だが大切なのは、日本型組織の本質を維持しつつ、腐った組織に堕さないよう、自ら主体的に思考し実践していくことだ。
    本書は、流行りのカタカナ組織論とは一線を画し、至極常識的な論理をひとつずつ積み上げて、
    組織設計をめぐる多くの誤解を解き明かす。
    また、決断できるトップの不在・「キツネ」の跋扈・ルールの複雑怪奇化等の問題を切り口に、
    組織の腐り方を分析し対処する指針を示す。自ら考え、自ら担うための組織戦略入門。

    目次
    第1部 組織の基本
    組織設計の基本は官僚制、ボトルネックへの注目、
    組織デザインは万能薬ではない、欲求階層説の誤用(承認・尊厳欲求が大事)

    第2部 組織の疲労
    組織の中のフリーライダー、決断不足、トラの権力、
    キツネの権力、奇妙な権力の生まれる瞬間(バランス感覚のある宦官)

    第3部 組織の腐り方
    組織腐敗のメカニズム、組織腐敗の診断と処方

    ★ポイントは、企業理念に基づいて、利益を産み出す行為か否か、ということ。

  • 一読して組織戦略というタイトルに違和感を覚えましたが、組織構造やヒト、企業の中での組織に生じる現象(フリーライダー、厄介者、キツネの権力など)について解説しており、日々の自分の属する組織と対比させながら読むと、なるほどと納得することばかりでした。
    組織構造に関しては官僚組織が基本であること、ヒトに関してはマズローの欲求階層説での承認・尊厳欲求の重要性と配慮について、気づかされました。
    お勧め本です。

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組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために (ちくま新書)の作品紹介

バブル期には絶賛された日本的経営も、いまや全否定の対象とすらなる。だが大切なのは、日本型組織の本質を維持しつつ、腐った組織に堕さないよう、自ら主体的に思考し実践していくことだ。本書は、流行りのカタカナ組織論とは一線を画し、至極常識的な論理をひとつずつ積み上げて、組織設計をめぐる多くの誤解を解き明かす。また、決断できるトップの不在・「キツネ」の跋扈・ルールの複雑怪奇化等の問題を切り口に、組織の腐り方を分析し対処する指針を示す。自ら考え、自ら担うための組織戦略入門。

組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために (ちくま新書)はこんな本です

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