- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480061195
作品紹介・あらすじ
『日本人とユダヤ人』という卓抜な日本人論によって論壇に登場した山本七平は、一見開放されたかに見える日本人の心性を根強く支配する鎖国的な傾向を批判すると同時に、その背後にあって社会の同質化を隠微に強要する「空気」の存在をも鋭く指摘した。その後、保守論壇を舞台にしながら、戦中派としての体験をもとに、日本的社会や組織の祖型としての天皇制や軍隊を分析し、日本型資本主義の起源と展開を論じるなど、多彩な評論活動を行なった。その論点を軸に戦後日本を問いなおし、新たな座標軸を提示する。
感想・レビュー・書評
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天皇制について語られている。
後醍醐天皇(南北朝の分裂)より古くは前期天皇制、
後期天皇制は、足利尊氏により作られたという概念。
天皇制存続は(無意識に)全日本人的合意。
乱世の秩序=下剋上=剋するために上を擁護する。幕府は賊なり(ダブルスタンダード)
現人神の創作。天皇批判は天皇制否定にはならない。神話は信ずる者にとっては美しくリアルだ。詳細をみるコメント1件をすべて表示-
だいさんhttps://www.evernote.com/shard/s37/nl/4075866/2cbf1d2a-e4c5-4b71-aa7e-...https://www.evernote.com/shard/s37/nl/4075866/2cbf1d2a-e4c5-4b71-aa7e-21ff72b8d7042014/08/08
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戦後日本の論点―山本七平の見た日本
(和書)2011年08月07日 12:13
2003 筑摩書房 高沢 秀次
高澤秀次さんは朝日カルチャーセンターや長池講義で柄谷行人さんと講師をしていたので何回かお目にかかったことがあります。それで前々から、読んでみようと思っていたので図書館で借りてみました。
なかなか面白く読むことができて良かったです。他の著作も借りてみたい。 -
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人々が二十年前の大正型日系二世のように、内なる伝統を否定して、戦後民主主義に同化しようとしていたとき、山本は一人「紙くず同然の値段」だった尊王思想家の文献を読み漁るようになるのである。
こうしてこのキリスト教三世は、戦後の未曾有の高度成長を、最も醒めた眼で眺める言論人になってゆくのだ。17
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山本は二つの「戦争」が彼に与えた、致命的トラウマを直視し続けたのである。二十余年の沈黙を破って書き継がれた、彼自身のための「遺書」は、だから既成の戦後的思考の隘路を押し開く可能性を内包していた。
トラウマから逃れるのでも、安易に解放されるのでもなく、逆にそれを手放すまいとした、最も困難な意志の継続において。41
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ベンダサンのターゲットは「天皇制国家」そのものではなく、むしろ天皇を天皇たらしめた「日本教」の精神風土にあった。68
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日本史とは取りも直さず「賊史」であり、その「幕府」という政府は、七百年におよぶ伝統を持ちながらも、「仮政府」である本質に変わりはなく、それが西欧の衝撃への緩衝器となって近代への脱皮を可能にし、あるいは戦後化の衝撃にも耐え得た。現実の政府を半永久的仮政府と見る見方を、彼は現代の日本人の政治観をも支配する強力なエートスと確信していたようだ。105
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この帝は、建武親政という名の中国革命の致命的失敗により、足利政権を誕生させたのが、ここから"現実の政府を半永久的仮政府と見る見方"が定着した。これは足利尊氏によって立ち上げられたとする、後期天皇制の半永久化の秘密でもあっただろう。107
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徳川幕府とは、一体どのような基盤の上に、出来てしまった幕府だったのか。それは新しい原則に基づく新しい体制などではなく、「戦国時代を凍結し固定化」したことによって成り立った幕府だったのである。122
山本は具体的に語ってはいないが、であるなら同じく戦後日本社会もまた、占領軍によって出来てしまった社会であり、日本人が敗戦を踏まえて新しい原則に基づく新しい体制を主体的に構築したわけでは、全くなかったということになる。
つまりそれもまた、敗戦と占領の凍結によって持続している、致命的に正統性を欠いた社会なのである。123
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山本は陸軍が本能的に嫌いかつ恐れたのが、「裕仁天皇」と「上官天皇」という二人の天皇がおり、この二つのイメージが、一つにならない人間であったと述べている。
言い換えるなら、天皇制の本質とは、「裕仁天皇」と「上官天皇」という二人の天皇がおり、この二人のイメージを一つに重ね合わせるという点にあるのではないかと。213
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尊皇から維新、昭和の敗戦と戦後のまで、右にも左にも共通する日本教的なもの、天皇論など。山本七平の思索を解説。
維新~昭和までの後半の方が面白かったかな。 -
[ 内容 ]
『日本人とユダヤ人』という卓抜な日本人論によって論壇に登場した山本七平は、一見開放されたかに見える日本人の心性を根強く支配する鎖国的な傾向を批判すると同時に、その背後にあって社会の同質化を隠微に強要する「空気」の存在をも鋭く指摘した。
その後、保守論壇を舞台にしながら、戦中派としての体験をもとに、日本的社会や組織の祖型としての天皇制や軍隊を分析し、日本型資本主義の起源と展開を論じるなど、多彩な評論活動を行なった。
その論点を軸に戦後日本を問いなおし、新たな座標軸を提示する。
[ 目次 ]
第1章 日本近代の縮図
第2章 天皇制国家の分裂
第3章 日本史を読みなおす
第4章 「現人神の創作者たち」
第5章 日本的原理主義の起源
第6章 敗残兵の日本軍隊論
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
20070928
山本七平の日本人論を、高澤秀次が解きほぐしながら解説する本。
「空気」「日本教」がよーくわかる良い本。
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¥105