「勝者の裁き」に向き合って (ちくま新書)

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著者 : 牛村圭
  • 筑摩書房 (2004年3月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480061621

「勝者の裁き」に向き合って (ちくま新書)の感想・レビュー・書評

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  • A級戦犯として極東国際軍事裁判(東京裁判)法廷に立った外交官・重光葵自身による日記や回顧録等から、「勝者の裁き」とも表される東京裁判の実相を描き出すことが本書の目的。獄中日記であること、公判期間をすべてカバーしていること、事実のみの記述ではなく自らの感想などが書かれていること。これらを理由にあげている。

    関係史料からの引用が全体的に多く、なにより外交官にして戦争犯罪人とされた重光葵一個人の記録を豊富に取り入れている側面には興味深いものがある。これまで繰りかえされてきた、「不毛な二項対立的歴史観が生産的議論にはつながらない」という立場にも共感できる。

    しかしながら、「あとがき」に記されている、「「勝者の裁き」に引き出されて、冷静に対処して、その「勝者の裁き」をこえた人物として、重光葵を取り上げたい」との執筆動機と、冒頭での目的の理由とが必ずしも一致するものではない可能性も含んでいる。「感想」には記した者のバイアスが無意識のうちにかかりやすい。
    また、重光が著した史料に信用をおきすぎている感もある。裏をとった上での記述なのかもしれないが、史料批判の甘さ、あるいは推測的な文体が全体的にやや気になった。「史料をして歴史を語らせしめる」というスタンスで見ればよいのかもしれないが、東京裁判という歴史的事実や、重光葵という人物の歴史的な意義づけがあまり判然としない点に、少し物足りなさを感じてしまった面もある。

    ただし、批判ばかりするのが本意ではない。個人の記録から歴史を探っていくことの意義も大きい。割合と叙述的で学術書のような難文ではないので、東京裁判の概略や問題点をざっくりと知ることができるのもよいところ。なにかと現在的な諸問題にも絡んでくる東京裁判。それを見つめる切り口のひとつとして、本書を手にとってみるのもよいのではないだろうか。
    (2005.6.9 読了)

  • 極東国際軍事裁判を、「勝者の裁き」としながらも、それに対する感情的批判ではなく、戦前戦後を貫く姿勢でこの裁判を闘い、観察した重光葵の日記を通して東京裁判を見つめる。
    東京裁判を読み直すというよりは、巣鴨日記とそれを記した重光葵が勝者の裁きに向き合う姿に焦点を当てている印象。
    タイトルの「よみなおす」から期待されるような、新たな視点や再発見がクローズアップされているようには思われず、そこには若干のタイトルと内容の乖離があるような。タイトルはあたかも著者が「勝者の裁き」と向き合って何らかの著者自身の価値判断なりを著述する内容であろうと思ってしまったが、実際は重光葵がどのように「勝者の裁き」に向き合ったかを描いているというのがこの本の内容。著者の裁判に関する価値判断がほぼ皆無な分裁判にどのような立場をとる人にとってもよみやすいが、重光葵が東京裁判にどう向き合ったかということの紹介に終始して著者自身の考えが希薄なのは味気なくもある。これがたとえば「重光葵と東京裁判」とかいうタイトルだったら違和感なく読めたのかもしれないが。ただ、被告一人一人のドラマの中での、重光葵の東京裁判というのもなかなか興味深くはあった。

  • [ 内容 ]
    国家の戦争犯罪が法廷で裁かれたのは、第二次世界大戦後の“ニュルンベルク裁判”と“東京裁判”が初めてである。
    それは勝者である連合国が創設した裁判所憲章に準拠し、従来の「通例の戦争犯罪」に加え、「平和に対する罪」と「人道に対する罪」という新しい法概念を含んでいた。
    「勝者の裁き」の場に引き出されながらも、冷静な眼差しで対処した「A級戦犯」重光葵の起訴から判決までの軌跡を、精緻な読みで分析し、東京裁判の実像に迫る。

    [ 目次 ]
    第1章 東京裁判論のなかの「勝者の裁き」
    第2章 天長節に爆弾ふたたび
    第3章 巣鴨の住人と「勝者の裁き」
    第4章 国境を越えた援軍
    第5章 「勝者の裁き」も終盤へ
    第6章 戦い終えて

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