お金に「正しさ」はあるのか (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480062000

感想・レビュー・書評

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  • ありきたりな文章からはじまらなかったのが面白い。
    ただ経済学的な視点ではなく、文学や正義論から理論を展開しているからだと思う。
    だから、これが貨幣論のすべてではない。こういう視点で論じることができると気づかせてくれる本。
    キリスト教世界では信仰の都合上貨幣の力を抑えようとした。
    やがていつの間にやら貨幣であらゆるモノの価値を測り、手に入れるようになった時代になり、我々は貨幣から逃れることはできなくなった。
    正義を見るためにも必要となってしまうくらいに。

  • 仲正さんの本は前々から読んでみたいと思っていたのですが、なかなか読む機会がありませんでした。
    今回たまたま古本屋で見つけたので購入。

    タイトルからも察せられると思いますが、テーマは「貨幣」と「正義」
    出版は2004年です。
    新自由主義とか、市場経済至上主義とか言葉ばかりが先走りしてる観があるときに、冷静にそもそも今語られていることの本質はなんだろう、と言葉を大切に語ってくれます。
    そういう視点をくれるのは良い学者だし、それが学者が書く一般向けの本「新書」の本来のあり方のような気がする。

    で、内容ですが。
    思っていた内容とはだいぶ、違っていました。

    大上段から振り下ろした正義論とか、貨幣論が繰り広げられるのかと思いきや、中心となっているのは文学論です。

    古代から現代に至るまで、文学や思想の中に現れる「貨幣」の扱われ方、表わされ方から、社会の中での「貨幣」や「正義」との関係を考察していく。

    最終的に現代社会では、社会とそこで暮らす私たちは完全に「貨幣化」されており、そこから完全に切り離した状態で物事を考えることは困難である、というところに落ち着くのですが、「貨幣」と「正義」のあり方を歴史的(文学的)に見てきたあとだと妙に腑に落ちます。

    また、ロールズの議論の解説も非常に分かりやすかった。
    思えばちゃんとロールズの正義論って知らなかったけど、なぜ最近(もうちょっと前のことなのか?)ロールズ人気が高まっているのかも理解できて良かった。

    「(弱い)相手の立場で考えることが、自分自身にとってのリスク回避になる」
    という合理的な人間像はこれからの社会を作っていくうえでも、ビジネスを作っていくうえでも、まだまだ一つの重要な考え方になっていく可能性があると個人的には思う。

    もうちょいロールズ勉強しよう。

  • ロールズ入門手引き書「海辺のカフカ」解説付き

  • シェイクスピアの『ヴェニスの商人』やブラム・ストーカーの『ドラキュラ』、金原ひとみの『アッシュベイビー』や村上春樹の『海辺のカフカ』などの作品を参照しながら、貨幣にまつわるさまざまな問題を取り上げています。

    神によって世界の秩序が創設されたと考えられていた時代が去って近代に入ると、貨幣によって人びとの欲望が解き放たれることになりました。その結果、「反貨幣」的な精神性を標榜する立場も、貨幣に換算可能なシステムを補完するようなものとなります。たとえばキルケゴールの深遠な思想も、そのような商品イメージがファンタスマゴリー的に流通していることに基づいており、このファンタスマゴリーの幻惑を逃れることはけっしてできないと著者は主張します。

    本書での基本的なスタンスが、「反・反ネオリベ」にあるらしいということまでは分かるのですが、もう少しポジティヴに著者自身の立場を示して欲しかったという気がします。こんなことを言えば、性急に「分かりやすさ」を求めるのではなく、貨幣をめぐる面倒くさい問題状況に目を凝らし続けるところに、実学ではない学問の本当の意味での「社会貢献」だと言われるのでしょうが。

  • 実に面白い本ですが、経済の本質を全く捉えていないので、今後誰にも読んでもらいたくない本です。
    まぁ最後の章の「蛇にピアス」の自己貨幣評価を下げるための行為というような個別な事象には多いに同意せざるを得ないので困るのですが。
    リバタリアンでない時にこの本を読み、「金利の自己増殖性」とファウストの「悪魔の契約」を絡める筆者の想像力に感服したのですが、
    経済の本質は、ウィンウィン。
    金利の本質は、時間選好、であるので、この仮説は「ニュートン力学的な嘘 」ということになるんでしょうね

  • この馬鹿は何が言いたいんだかな。
    理解できない。

  • [ 内容 ]
    貨幣は、ありとあらゆる“もの”の売り買いを可能にする。
    性愛や人体、イメージですら、その対象となってしまう。
    しかも貨幣は、私たちの「闇」に潜む欲望をかきたて続ける。
    だが貨幣は、「神」や「聖なるもの」の権威が失墜した現代社会にあって、「正義」を実現させる媒体でもある。
    この矛盾した性質をもつ貨幣は、私たちの「欲望」によって、「妖怪」のごとく自己増殖してゆく。
    こうした中で、私たちは貨幣とどうつき合ったらいいのか?
    「貨幣」的現実の深層を探り、現代社会の「正義」の臨界点を指し示す。

    [ 目次 ]
    第1章 神なき時代の「正義」と「貨幣」(「正義」を計算する? 命に「値段」をつける現代社会 ほか)
    第2章 貨幣化された世界と「私」(「無」から「価値」を創り出す錬金術 貨幣は「闇」に潜む欲望を解き放つ ほか)
    第3章 貨幣から見える“真実”(「不在の貨幣」を軸にした文学作品群 貨幣に縁取られた「小さな現実」 ほか)
    第4章 「正義」を創造する貨幣(正義の「メディア」としての貨幣 『海辺のカフカ』における貨幣 ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • お金はただお金で正しさもなにも無いというのがスマートな意見だけど、そこをあえて「正しさ」の有無を考えてみる。
     お金とは現実感であり、抽象的でベキ論になりがちな倫理の問題にみんながわかる尺度を提供するもの

  • 所々で、披露される、古今東西の文学作品、小説に対する貨幣論的な分析は興味深い。
    しかし、後半はどうにも疲れてしまう。

  • ¥105

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著者プロフィール

哲学者、金沢大学法学類教授。
1963年、広島県呉市に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科地域文化専攻研究博士課程修了(学術博士)。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。難解な哲学害を分かりやすく読み解くことに定評がある。
著書に、『危機の詩学─へルダリン、存在と言語』(作品社)、『歴史と正義』(御 茶の水書房)、『今こそア ーレントを読み直す』(講談社現代新書)、『集中講義! 日本の現代思想』(N‌H‌K出版)、『ヘーゲルを越えるヘーゲル』(講談社現代新書)など多数。
訳書に、ハンナ・アーレント『完訳 カント政治哲学講義録』(明月堂書店)など多数。

「2021年 『哲学JAM[白版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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