感じない男 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480062215

感想・レビュー・書評

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  • 【概要・粗筋】
    男の不感症(=射精後の空虚感)をキーワードに、ミニスカや制服、少女たちに欲情する男性心理やメカニズムを筆者自らの体験・感覚に基づいて掘り下げた男のセクシュアリティ論。

    【感想】
    筆者が指摘する男のセクシュアリティにおけるふたつの根本問題である、射精後の空虚感・虚無感(これを不感症、または「感じない」とするのはしっくりこないけれど)と自分の身体への否定感については、とても共感できる。私自身同じような感覚を持っている。ミニスカ、制服、ロリコンに対する具体的な分析もさることながら、このふたつの問題を指摘しただけでもセクシュアリティ論として素晴らしい。

    もっとも、本書は著者の自分語りという体裁をとっているので、細かい部分で共感できない部分がある。例えば、「とくにどの部分が一番汚いと感じるかというと、(中略)精液が出たあとのペニスの周辺である(P146)」は首肯できるけれど、汚いと感じる理由を思春期の射精に対する否定感と結びつけることには共感できない。

    著者と私では異なるセクシュアリティを有するのであるから、共感できない部分があるのは当たり前であるから、細かいところで共感できなくても問題はない。けれども、本書に通底する男のセクシュアリティに対する否定意識は共感できないどころか反発すら感じる。この否定意識は「男の性行動はこれから変えていくことができるし、変えていかなければならない(P49)」と無根拠に云いきっていることからもわかる。このフェミニストへの迎合ともいえる筆者のバイアスは、見逃すことができない本書の瑕疵だと思う。

  • 「猥談を大真面目に語る本」というと筆者に怒られるだろうか。中盤以降まではそんな印象があった。男の性欲を「生物的な観点で通りいっぺんで語りたくない」と言うだけあって、自らの嗜好や行動を赤裸々に語ることで深く分析している。

    筆者によれば、男はみな女性と比べて不感症であり、「男とは汚いものだ」という思いが根底にあり、それが性欲やフェチズムに繋がっているとしている。時折「そうかなあ?」と思う箇所はあるが、男の性欲のメカニズムを皆頭ではわかっていても認めたくない、レベルまで掘り下げて語っており、分かりやすく納得してしまう所も多い。

    後半は筆者のトラウマ的な話が生々しく語られここで更に引く読者もいるかも。しかし全体を通して、共感はせずとも理解はできる所が多い一冊だった。

  • とてもしっかりとした本。
    自分をちゃんとみてる。

  • □内容
    一人でした後の、何とも言えないむなしさ。なのにまたしてしまうという、厄介さ。実は男は、根っこのところで「感じていない」のではないか。だからこそ制服少女を目にしてはゾクッとし、美少女写真集を見てはあらぬ妄想を膨らませてしまうのではないか。にもかかわらず、多くの男が自分の「不感症」に気づかずにいるのは、なぜか。この問いに答えるべく本書は、著者自らの体験を深く掘り下げながら、問題のありかを探っていく。禁断のテーマに真正面から挑み、「男の性」を根本から問い直す、衝撃のセクシュアリティ論。 by アマゾン

    □感想
    性を語る本はそんなに読んでいないが、それでも「男はこうだ」「女はこうだ」と語るものが多い。著者自身も述べているように、この本が面白いのは「私はこうだ」と著者の実体験から真剣に性に対して哲学をしているところである。特にすごいのは、大学の教授という立場から自身のセクシャリティ(ロリコン、制服が好き)まで述べている点。大学という環境にいて(まだ学校でないだけいいかもしれないが)これをいうのは素晴らしい。

    特に著者は「男の不感症」(①射精がそんなに快感ではない、②射精後に一気に興奮が醒め、全身が脱力し、暗く空虚な気持ちに襲われること p.32)に気づいていない人が多いのでは?ということを問題にしている。

    他にも「射精なんて排泄行為であり、尿をするのと同じ快楽しか得られない」「セックスがいいのは、射精後の空虚な気持ちを相手の女を好きだ(こんないい女とできたんだ)等の気持ちによって精神的に埋め合わせることができる満足感や幸福感だ。けっして射精の至福感ではない。」という。みなさん、どう考えますか。

    読みやすく一気に読める一冊。おすすめです。

    (まっちー)

  • 自らのセクシャリティを分析する面白さ。なるほど~。著者の理論は素直に同意できない点もあるが、その率直さはとても誠実な人物で信頼できる。
    是非女性と男性に読んで話し合ってもらいたい。写真集のところは男性には常識だけど、女性は知らなくてびっくりするみたい。

  • [ 内容 ]
    一人でした後の、何とも言えないむなしさ。
    なのにまたしてしまうという、厄介さ。
    実は男は、根っこのところで「感じていない」のではないか。
    だからこそ制服少女を目にしてはゾクッとし、美少女写真集を見てはあらぬ妄想を膨らませてしまうのではないか。
    にもかかわらず、多くの男が自分の「不感症」に気づかずにいるのは、なぜか。
    この問いに答えるべく本書は、著者自らの体験を深く掘り下げながら、問題のありかを探っていく。
    禁断のテーマに真正面から挑み、「男の性」を根本から問い直す、衝撃のセクシュアリティ論。

    [ 目次 ]
    第1章 ミニスカートさえあれば生身の女はいらない!?(「男とはこういうもの」という言い方の嘘 ミニスカをめぐる男女のすれ違い ほか)
    第2章 「男の不感症」に目を背ける男たち(「男の不感症」とは何か 「溜まってくる」感覚を分析する ほか)
    第3章 私はなぜ制服に惹かれるのか(制服に惹かれる男たち、その「心の構造」 制服少女に「学校」を透かし見る ほか)
    第4章 ロリコン男の心理に分け入る(ロリコン大国ニッポンの深層 「少女」を巧みにパッケージする大人たち ほか)
    第5章 脱「感じない男」に向けて(「射精」体験と自己否定の感覚 私はいかにして「感じない男」になったか ほか)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 偶然きのう読み返していたというのも多分にあるかとは思うけど、男版「女をこじらせて」とも取れました。
    文中でたくさん提示される仮説が自分にとってはすごく目新しいもので、それを読むのも知的体験として面白かったけど、自分以外のだれかのセクシャリティをここまで詳しく知る機会なんてほとんどないに等しいから、そっちは純粋に興味深かったです。へえって感じ。たぶんこれで救われるひともたくさんいるんじゃないかなあ。
    大学でジェンダー論みたいな講義を取っていて、レポートを書くときにものすごく自分の中で葛藤があったけど(一般論にはできないし、だからといって自分のことを語ることも不毛なきがした)、こういうふうに書けばいいのかな。みんなで共有しなきゃいけないのに、超個人的な問題だから、ジェンダーって難しいですね。しかし、今月に入って本を何冊か読んでみて、目からうろこの落ちる思いばかりしています。なんかレビューって書くの難しいな…。

  • 著者が自身の性癖などを赤裸々にかたりつつ、男性のセクシャリティに関する問題を冷静に分析しています。

    ミニスカートのところでは真剣に笑いましたが、ロリコンのところでは真剣に、どっきりしてしまいました。
    女性でもとても楽しめる一冊です。

  • 2006年11月

  • あなたもこんな経験おありではありませんか?実は……、なんて言いたいことあるんじゃないですか?
    著者が体を張って教授生命を賭けて投入した著。実体験に基づいた著は、どの優秀な著作よりも真実を語っている。

著者プロフィール

1958年高知県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学。大阪府立大学にて、博士(人間科学)。東京大学、国際日本文化研究センター、大阪府立大学現代システム科学域を経て、早稲田大学人間科学部教授。哲学、倫理学、生命学を中心に、学術書からエッセイまで幅広い執筆活動を行なう。著書に、『生命学に何ができるか――脳死・フェミニズム・優生思想』(勁草書房)、『増補決定版 脳死の人』『完全版 宗教なき時代を生きるために』(法藏館)、『無痛文明論』(トランスビュー)、『決定版 感じない男』『自分と向き合う「知」の方法』(ちくま文庫)、『生命観を問いなおす――エコロジーから脳死まで』(ちくま新書)、『草食系男子の恋愛学』(MF文庫ダ・ヴィンチ)、『33個めの石――傷ついた現代のための哲学』(角川文庫)、『生者と死者をつなぐ――鎮魂と再生のための哲学』(春秋社)、『まんが 哲学入門――生きるって何だろう?』(講談社現代新書)、『生まれてこないほうが良かったのか?』(筑摩選書)ほか多数。

「2022年 『人生相談を哲学する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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