自閉症: これまでの見解に異議あり! (ちくま新書 609)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 93
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480063076

作品紹介・あらすじ

自閉症児の特徴は、「変化への抵抗」「同一性の保持」という点にみられる。数、暦、地図の発見は人類が作り出した三大叡智であるが、「順序」や「配列」が損なわれるとき、人は誰でもある程度のパニック状態になる。自閉症児の「おそれ」の根には、こうしたメカニズムが働いていることがみて取れる。彼らとわれわれは決して断絶しているのではなく、むしろ同じ地平に立っている。これまでの自閉症=特殊論に異議を唱え、この生のあり方が誰にも共感でき、理解できるものであることを主張する。

感想・レビュー・書評

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  • 2014.12―読了

  • 【資料ID: 1111011831】 493.9375-Mu 57
    http://opac.lib.saga-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA7749126X

  • 2006年刊行。

     自閉症の疾病内容につき、(おそらく)著者の経験から帰納的に解説したもの。申し訳ないが、本書から、自閉症患者への対応策、あるいはその心構え等を看取することはできなかった。確かに、自閉症の症例の多様性は判っており、抽象化しにくいのはそのとおりなのだろうが、症例における統計的データ・生化学的分析・画像所見が不可欠な時代になっている現在、著者のような指摘をされても、「だからどうしたらよいの?」との問いに答えたことにはならないからだ。

  • 4-480-06307-2 233p 2006・7・10 1刷

  • 心身障害児施設で働いた経験をもつ著者が、自身の自閉症に対する考えを、これまでの社会で語られてきた研究対象としての「自閉症」の捉え方に異議を唱える形で述べている。

    知的障害との違い(知的世界におけるおくれ=知的障害、社会機構におけるおくれ=自閉症)すらも理解できていなかった自分にとっては、自閉症のみならず、あらゆる理由で社会に対して壁を持つ人々について考察するきっかけとなった。
    これまであたりまえの「症状」「病名」としてしか見てこなかった「自閉症」という言葉が、その実態を十分に見据えないまま医者・学者・政治機構によって名づけられたものであることを指摘している文章には、考えさせられるものがあった。
    一方で、自閉症の子を持つ親にとっては、「自閉症」という病名が免罪符としても必要とされているという点には、どうするのが正しいと一面的に断ずる事の出来ない障害者問題の難しさが表れている。

  • これまでの”自閉症論” に物申す、という内容で、
    確かに自閉症とはどういうものか、ということについてはあまり具体的に書かれていなかった。

    障害っていうのは誰もがもっているある特徴が度をすぎているだけで、別に病気とか症状とか言うべきものではないって内容。
    そのとおり!と思って読みながらも、じゃあ世間や、当事者はどういう風に変わっていけばいいのかなぁと結論はわからないなりに考えさせられる。

  •  自閉症に関して知見が大きく変わるのかなと思い手に取ったが・・・・。

     「変化への抵抗」「同一性の保持」という点では何ら異なる見解を示しているわけではない。

     大きな点は「自閉症特殊論」への異議だ。

     順序や秩序が乱れるとき、人は誰でも心に中ではある程度のパニックになる。自閉症児の心の中にはそのような根が見て取れるという。
     彼らと私たちとは断絶しているりではなく、同じ地平にいるのだと。

     この本を読むと、自閉症への見方が少し変わるかな。

     また、この本を読んだ後「自閉症裁判」佐藤幹夫著 を読み直すと、更に一段深いものが見えてくる。

  • アマゾンでは評価が二分されていましたが、ボクは★★★★にしました。

    “終章「おくれ」とは何か”が、いまいち“?”だったもので・・・・・。

    自閉症を医学モデルではなく、生活モデルの視点から捉えるあたりに好印象を持ちました。

  • これまでの自閉症の見解に意義を唱える内容であった。
    自閉症児・者が電車に興味を持ったり、カレンダー暗記が得意であったりするのは、それらがある規則性に基づいているからであるそうだ。人は誰でも、自分の「位置」を知ることで「安心感」を得ることができている。カレンダー(暦)は、年・月・日などの並びの組み合わせみよって構成されていて、これらによって自分の時間的な位置を知ることができている。電車は、ある決められた区間を走るものであり、路線は地図としてみることができる。地図は、目印の配置であり、ある一定の規則性を持っている。一方で、人の動きは予測が難しい。自閉症児・者は人間の一定の規則性を見つけることが一般の人よりうまくいかないため「対人関係が難しい」などといわれてしまう。自閉症特有のいわゆる「こだわり」と呼ばれる行動は、このような不安を取り除き、安心感を得るために行う行動であると考えられる。
     この本を読んで、私たちは自閉症を特別視しすぎていたと感じた。人は誰でも自分の存在位置がわからないと不安を抱く。そして、自分の位置を知るために暦や地図を使用した。そこから安心感をえるように、自閉症児・者も安心感を求めるために常同行動などを行っているならば、安易にやめさせてはいけないと思った。また、自閉症児・者は特異な記憶力を持つといわれているが、それは、「記憶力」ではなく、「記憶術」であることがわかった。ある独特な方法で情報をつなぎ合わせながら、記憶をしている。これもまた、自閉症独特のものではなく、私たちも普段の生活の中で行っていることであった。自閉症という障害のレッテルをはり、特別視する必要はないと思った。しかし、理解が必要な点があることは確かなので、もっとよく勉強したい。

  • [ 内容 ]
    自閉症児の特徴は、「変化への抵抗」「同一性の保持」という点にみられる。
    数、暦、地図の発見は人類が作り出した三大叡智であるが、「順序」や「配列」が損なわれるとき、人は誰でもある程度のパニック状態になる。
    自閉症児の「おそれ」の根には、こうしたメカニズムが働いていることがみて取れる。
    彼らとわれわれは決して断絶しているのではなく、むしろ同じ地平に立っている。
    これまでの自閉症=特殊論に異議を唱え、この生のあり方が誰にも共感でき、理解できるものであることを主張する。

    [ 目次 ]
    第1章 自閉症のはじまり
    第2章 自閉症以前の問題
    第3章 これまでの「自閉症論」批判
    第4章 「放浪」とは何か
    第5章 自閉症裁判
    終章 「おくれ」とは何か

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ、評論家。
著書『初期心的現象の世界』『「いのち」論のはじまり』『「あなた」の哲学』『徹底検証 古事記』『古事記の根源へ』『『君たちはどういきるか』に異論あり』『いじめの解決 教室に広場を』『吉本隆明 忘れられた「詩的大陸」へ』ほか、多数

「2023年 『詩文集 織姫 千手のあやとり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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