アジア主義を問いなおす (ちくま新書)

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著者 : 井上寿一
  • 筑摩書房 (2006年8月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480063182

アジア主義を問いなおす (ちくま新書)の感想・レビュー・書評

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  •  2016年11月には文庫版が刊行。


    【紹介】
    定価:本体740円+税
    Cコード:0231
    整理番号:614
    刊行日: 2006/08/07
    ページ数:256
    ISBN:4-480-06318-8
    JANコード:9784480063182

     いま、東アジア共同体をめぐる議論が盛んになされている。その一方で、日本は中国、韓国と相互不信を深めつつある。こうした状況は、一九三〇年代の雰囲気と酷似している。当時の日本も、中国との緊張を高めながら満州国を建設し、「東亜協同体」構想を掲げていた。しかも意外なことに、アメリカとの関係が最重要視されていた。では、なぜその努力は実を結ばず、日米戦争が起きてしまったのか?本書は、満州事変から日中戦争への流れを、近代日本の岐路で常に現われた対米協調とアジア主義の相克という視点から振り返り、日本がアジアの地域主義を考えるときの普遍的な課題を浮かび上がらせる。
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480063182/




    【目次】
    目次 [003-006]
    はじめに [007-011]

    第1章 今なぜアジア主義を問いなおすのか 013
    1 さまざまな「アジア主義」 014
    大衆文化状況/「ナヌムの家」/隣国理解の現在/韓国独立記念館/隣国理解の反作用/経済/経済レベルのアジア志向/「政冷経熱」/『新東亜論』/「東亜共同体論」/「世界史の哲学」/東アジア秩序/安全保障/「東アジア共同評議会」/東アジア安全保障共同体/「中国の東アジア化」・「日本の東アジア化」/「亜細亜主義」/「亜細亜主義」宣言/「亜細亜主義」への疑問/アメリカ批判の高まり/異質な国アメリカ/「共通文化圏」
    2 「東アジア共同体」と「アジア主義」 033
    「東アジア共同体」構想/外務省の真のねらい/二〇〇五年春の反日デモ/反日デモ批判/「反日デモ」と「アジア主義」/ダメージコントロール外交/アジア主義の持つ両面性/一九三〇年代の現在性

    第2章 「アジア主義」外交はどのように形成されたのか 045
    1 アメリカかアジアか 047
    この章の課題/戦前の対米協調と戦後の対米協調を比較する/なぜ戦前の外交は対米協調を選択したのか?/なぜ国民は民政党内閣を支持したのか?/民政党内閣の外交と小泉内閣の外交/どちらの外交を評価するのか?
    2 「アジア主義」的体外路線の台頭 055
    だれが危機感を抱いたのか?/現地軍にとって中国とは何だったのか?/対抗原理としての「アジア主義」/満州事変はなぜ起きたのか?
    3 満州国を作りたくなかった石原莞爾 062
    なぜ石原莞爾は満蒙領有論を放棄したのか?/石原の真意はどこにあったのか?/石原のもう一つの真意
    4 満州国の真の独立をめざして 068
    満州国の国際連盟加入構想/なぜ日本は満州国を承認したのか?/満州国を承認しても日中関係は改善できたのか?
    5 「アジア主義」の軍事的拠点としての満州国 072
    満州国とはどんな国だったのか?/なぜ石原はラストエンペラーの擁立に反対だったのか?/「自由国」としての満州国/アジア主義の背理
    6 アメリカなしにはやっていけない満州国 079
    アジア主義的経済共同体としての満州国/国際経済のきびしい現実/アメリカ資本の参入を求めて/満州国の「門戸」を「解放」する

    第3章 「東亜モンロー主義」外交とは何だったのか 087
    1 ブロック経済か自由貿易か? 089
    この章の課題/「東亜モンロー主義」宣言/なぜ松岡は国民に謝罪したのか?/なぜ日本外交は対米関係の修復が必要だったのか?/広田外交はアジア主義外交か?
    2 どうすれば日中関係は改善できたのか? 100
    困難な状況のなかで考えるほうが役に立つ/直接のきっかけ――停戦協定の成立/もう一つのきっかけ――中国の対日妥協路線/一九三〇年代のODA(政府開発援助)/欧米協調とアジア主義の間
    3 誤解されたアジア主義外交 107
    日中提携の可能性/天羽声明とは何か?/各国の新聞はどう報じたか?/各国政府の対応/真意はどこにあったのか?/天羽声明の責任/米英との外交関係はどうなったか?
    4 「東亜モンロー主義」の後退 116
    信頼醸成措置/日中英三国経済協調の可能性――バーンビー・ミッション/日中英三国経済協調の可能性――リース=ロス・ミッション
    5 アジア主義外交の復権 121
    日中英三国協調への挑戦/政策を修正する試み/破局への予兆

    第4章 侵略しながら連帯する 131
    1 なぜ早期解決が可能と考えたのか? 133
    この章の課題/尾崎秀実の分析/石橋湛山の分析/道義をめぐる戦争
    2 目的のない戦争 142
    文学者たちのみた日中戦争/「戦争はもうかる」/政党も戦争を歓迎した/「東亜ブロック」
    3 沸き起こる中国ブーム 150
    中国語学習熱/文化的アジア主義/知の地殻変動/もう一つのエピソード
    4 文化をめぐる戦争 157
    矢部貞治のフィールドワーク/日本主義への批判/石原との出会い/もう一つの現地調査/日本側の反省
    5 戦場のなかのアジア主義 165
    「文化戦士」/「アジアの開放」/軍政批判/アジア主義の政策化

    第5章 なぜ「東亜新秩序」は実現しなかったのか 173
    1 日中戦争下の知識人たち 175
    この章の課題/昭和研究会/戦争の早期解決をめざして
    2 日中戦争の再定義 180
    三木清の活躍/昭和研究会への三木の参加/昭和研究会と尾崎秀実
    3 近衛内閣のマニフェスト 185
    蝋山政道の再登場/「東亜共同体」の論理/「東亜新秩序」の課題/蝋山の議論から何を学ぶことができるか
    4 「東亜新秩序」外交の形成と展開 192
    開放的地球主義/軍部も賛成だった/和平を求めて/汪兆銘工作/反帝国主義/反英の「東亜新秩序」/「親米」の「東亜新秩序」
    5 「東亜新秩序」外交のジレンマ 203
    なぜ石橋湛山は支持したのか?/ジレンマからの脱却を求めて/アメリカへの期待/アジア主義の末路/孤立無援の汪兆銘政権/「反帝国主義」=アジア主義からの転換/「東亜新秩序」外交の挫折

    第6章 歴史の教訓 215
    1 アジア主義のその後 217
    「大東亜共栄圏」への跳躍/京都学派は「大東亜共栄圏」を正当化できたか?/「大東亜共栄圏」の崩壊/「大東亜共同宣言」はアジア主義宣言ではなかった/なぜ継承されなかったのか?/戦後のアジア主義外交構想/政策化の試み/なぜ戦後日本外交はアジアを見失ったのか?
    2 これからのアジア主義 228
    対抗原理としてのアジア主義の限界/石田衣良氏の自衛隊イラク派遣賛成論/中韓はどう出るか?/〈開放的地球主義〉/自然経済圏/異質な他者としての近隣諸国との共存/小泉首相は説明責任を果たしたのか?/脱パワーゲーム/ゼロサムゲームからプラスサムゲームへ

    あとがき(二〇〇六年六月 井上寿一) [243-245]
    参考文献 [247-251]

  • 1930年代のアジア主義の実態を明らかにしながら、現代のアジア外交について考えるための教訓を引き出そうと試みている、意欲的な内容の本です。

    「アジアの解放」というスローガンが侵略という実態に結び付いた経緯を解きほぐしており、当時の政治と文化の複雑な絡み合いの諸相を知ることができました。とくに、三木清や蠟山政道らが参加した昭和研究会の「東亜新秩序」という原理の理念と実現可能性の双方に渡って詳しい検討をおこない、侵略のイデオロギー的な粉飾と切り捨てるのではなく、現実の歴史をどのように変えていく可能性があったのかということを検証しているところは、たいへん興味深く読みました。

    また著者は、閉鎖的なブロック経済を明確に否定した蠟山の「東亜新秩序」構想から、現代に活かされるべき教訓を読み取っています。アジア主義は、アメリカの一極支配に対する対抗原理と考えるべきではなく、世界経済のネットワーク化を形成する国際新秩序へ向けての構想として考えるべきだとする主張には、多くのことを考えさせられます。

    欲を言えば、「アジア主義を問いなおす」というタイトルで、しかも新書というスタイルで書かれた本なので、現代のアジア主義についても紹介してほしかったように思います。宮台真司の「亜細亜主義」には少しだけ言及されていますが、宮台の師匠筋に当たるマルクス主義哲学者の廣松渉も晩年にアジア主義の主張をぶち上げたことがあり、「アジア主義」というテーマのもとで考えるべき事柄はまだ多く残されているように思います。

  • 1930年代、昭和4年ころから終戦までの間の「アジア主義」について、具体的にどのような「政策」が取られていたのかについて考察をしている本です、政策といってもその根底になる「思想」についてもきちんと触れられています。いままでにないタイプの切り口だと思います。

    アジア主義を定義することはとてつもなく難しいことですが、昭和に入ってからのアジア主義が、アジアとの連帯を求めながらアジアに侵攻していくという二律背反的なものだったことは間違いありません。戦後、GHQなどによって「連帯を求めるというのは建前で、侵略が目的だったのだ」ということになり、アジア主義は抹殺されます。戦争の主導者ということにされていきます。
    僕はこのことに大きな疑問を持っていますが、この本も同じ疑問を出発点にしています。
    「1930年代のアジア主義の知的挑戦と政策構想を再発見することによって、私たちが継承すべきアジア主義の歴史的経験とはどのようなものかを明らかにしつつ、同時にこれからの日本外交政策に示唆するものは何かを具体的にかんがえてみたい。」

    具体的な内容は読んでいただきたいと思いますが、高校の教科書で習ったようなこと、世間一般で考えられていることとは違う事実が明らかになります。

    たとえば、満州国の経済を自立させるためにはアメリカ資本、アメリカからの出資が不可欠であったこと、日支満の提携においてもイギリスを排除しつつアメリカを巻き込もうとしたことなど、つまり、ブロック圏経済は、他のブロックとの交易を必要とするという意味でグローバル化が不可避だったことが指摘され、日本政府もその線で政策を考えていたことが明かされます。

    もちろんこれ1冊でアジア主義主義のすべてが理解できるわけではありません。アジア主義は源流は明治自由民権運動と不可分で、その後の展開は非常に複雑です。その部分を単純化しすぎているのではないかという疑問があります。

    ただ、新書の限界もあります。すべてが書き込めるわけではありません。「1930年代のアジア主義の知的挑戦と政策構想を再発見する」本だと捉えれば、非常に示唆に富んだ内容だと感じました。

    <目次>
    第1章 今なぜアジア主義を問いなおすのか
    第2章 「アジア主義」外交はどのように形成されたのか
    第3章 「東亜モンロー主義」外交とは何だったのか
    第4章 侵略しながら連帯する
    第5章 なぜ「東亜新秩序」は実現しなかったのか
    第6章 歴史の教訓

  • 「東アジア共同体」は鳩山総理の専売特許ではなく、小泉総理時代からの発想だった。本書では1930年代を分析し、そこから現在の「東アジア共同体」構想への教訓を示している。「アジア主義」と「親米」思想の安易な対立、二者択一を戒めるのが筆者の結論だろう。また本書では、1930年代のアジア主義=侵略的一辺倒、満洲国建国と国際連盟脱退により対中・対欧米外交が破綻し日本の孤立が決定的に、というありがちな思い込みを裏切る解説をし、新しい視点を提供してくれる。ただ細かい点を挙げれば、石原莞爾につき本書の前半では「中国ナショナリズムを軽視」とし、後半では「重視」としているので戸惑う。

  • [ 内容 ]
    いま、東アジア共同体をめぐる議論が盛んになされている。
    その一方で、日本は中国、韓国と相互不信を深めつつある。
    こうした状況は、一九三〇年代の雰囲気と酷似している。
    当時の日本も、中国との緊張を高めながら満州国を建設し、「東亜協同体」構想を掲げていた。
    しかも意外なことに、アメリカとの関係が最重要視されていた。
    では、なぜその努力は実を結ばず、日米戦争が起きてしまったのか?
    本書は、満州事変から日中戦争への流れを、近代日本の岐路で常に現われた対米協調とアジア主義の相克という視点から振り返り、日本がアジアの地域主義を考えるときの普遍的な課題を浮かび上がらせる。

    [ 目次 ]
    第1章 今なぜアジア主義を問いなおすのか
    第2章 「アジア主義」外交はどのように形成されたのか
    第3章 「東亜モンロー主義」外交とは何だったのか
    第4章 侵略しながら連帯する
    第5章 なぜ「東亜新秩序」は実現しなかったのか
    第6章 歴史の教訓

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    [ 参考となる書評 ]

  • うーん。
    歴史音痴だなぁ、私。

  • 東亜共同体(亜細亜主義)〜東亜新秩序〜東アジア共同体構想と常に一対であった対米関係。大東亜共栄圏は、自給自足の前提条件であった米国を排除したとこから崩壊した。日本は、アジア主義の立場を放棄した上で米国に受け入れられることを求めながら降伏した。かって満州1国でさえ、米国の経済参与なしになりたたなかった史実は現在も変わらず、対米軸としてのアジア主義の限界を説く。宮台真司が主張する「弱者連合」経済文化防衛構想に対しても、ベースの違う各国がサブカル共有基盤だけを頼みに軍事同盟に結び付けるかどうか懐疑的。

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いま、東アジア共同体をめぐる議論が盛んになされている。その一方で、日本は中国、韓国と相互不信を深めつつある。こうした状況は、一九三〇年代の雰囲気と酷似している。当時の日本も、中国との緊張を高めながら満州国を建設し、「東亜協同体」構想を掲げていた。しかも意外なことに、アメリカとの関係が最重要視されていた。では、なぜその努力は実を結ばず、日米戦争が起きてしまったのか?本書は、満州事変から日中戦争への流れを、近代日本の岐路で常に現われた対米協調とアジア主義の相克という視点から振り返り、日本がアジアの地域主義を考えるときの普遍的な課題を浮かび上がらせる。

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