本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480063182
感想・レビュー・書評
-
1930年代のアジア主義の実態を明らかにしながら、現代のアジア外交について考えるための教訓を引き出そうと試みている、意欲的な内容の本です。
「アジアの解放」というスローガンが侵略という実態に結びついた経緯を解きほぐしており、当時の政治と文化の複雑な絡みあいの諸相を知ることができました。とくに、三木清や蠟山政道らが参加した昭和研究会の「東亜新秩序」という原理の理念と実現可能性の双方にわたってくわしい検討をおこない、侵略のイデオロギー的な粉飾と切り捨てるのではなく、現実の歴史をどのように変えていく可能性があったのかということを検証しているところは、たいへん興味深く読みました。
また著者は、閉鎖的なブロック経済を明確に否定した蠟山の「東亜新秩序」構想から、現代に活かされるべき教訓を読み取っています。アジア主義は、アメリカの一極支配に対する対抗原理と考えるべきではなく、世界経済のネットワーク化を形成する国際新秩序へ向けての構想として考えるべきだとする主張には、多くのことを考えさせられます。
欲を言えば、「アジア主義を問いなおす」というタイトルで、しかも新書というスタイルで書かれた本なので、現代のアジア主義についても紹介してほしかったように思います。宮台真司の「亜細亜主義」には少しだけ言及されていますが、宮台の師匠筋に当たるマルクス主義哲学者の廣松渉も晩年にアジア主義の主張をぶち上げたことがあり、「アジア主義」というテーマのもとで考えるべき事柄はまだ多く残されているように思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示