- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480063229
作品紹介・あらすじ
世の大半の企業は、戦略と戦術を混同している。成長第一で事業を拡大したのに何の利益も出なかった、という企業が少なくない。見せかけの「戦略」が、企業の存続を危うくする。目指すべきは、長期で見た利益を最大化することである。それを実現する戦略はマニュアル化になじまず、突き詰めれば人に宿る。現実のデータと事例を数多く紹介し、腹の底から分かる実践的戦略論を説く本書は、ビジネスパーソン必読の書である。
感想・レビュー・書評
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経営戦略の大家である神戸大学の三品先生著の新書です。三品先生といえば、『戦略不全の論理』『戦略不全の因果』が有名ですが、読むのに気合が入ります。その点、こちらは新書なので、ハードルは低い。しかし新書といっても侮ることなかれ。かなり骨太です。
個人的には第5章の『修練』が痺れました。学生、若手社会人、経営幹部に向けた熱いメッセージが書かれていました。三品先生のもとで学べた学生さんは幸せですね。
・人間観、世界観、歴史観、事業観を養う必要性
・仕事から逃避しないこと
を学べました。
【メモ】
・戦略の目的は長期利益の最大化にある
・優れた企業は成長を目的としない
・経営戦略の真髄はシンセシス(統合)
・戦略は頂点に座す人に宿る
・経営層における人材の集中と選択が必要
・優れた管理者が優れた経営者とは限らない
・経済史と経営史を学べ
・経営者を目指すなら精神の自立が必要詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦略と戦術を混同してしまっていた自分。
この本は戦略を噛み砕いて説明してくれている。
・長期利益の安定成長を図ることが本当の戦略
・企業の方向性はコンテクスト(背景、状況)に依存
・戦略とは、立地に構えを重層的に絡めた上で均整をとること -
「経営戦略を問いなおす」
三品氏が 戦略とは何?と質問し、社会人が説明できないシーンに出くわす。
それが執筆の機会とのことです。
執筆こそ古いですが、花王ライオン、キヤノンコニカの比較は現在こそ省みるテキストかもしれません。
両者はなぜ利益に差異ができたのか?
戦略とは立地そして均衡。
キーエンスの記述も見逃せません。
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〜p128。これ以上は効率悪い。
求めていたものと違ったことを抜きにしても、正直なぜ比較的高い評価を得ているのか理解できない本だった。
おそらく最も大きな期待との乖離は、「どのように戦略を策定するか」という実務上の要請に応えようとした本ではないということ。その前提となる「戦略」について、失敗例と成功例を並べて論じているが、結局「人」だと結論づける著者の主張には、「だからどうした?」という不満しか生まれない。
あと、確かに読みやすいが、それは平易な文章で書いているだけで、決してそれぞれの項目を説明する論理の流れが明快なわけではない。
書いてあることは、的を得ているのかもしれないと思った。だが、それが何も生まなかった。 -
某社の新社長が「事業の立地を替える」と言いはじめたが、中国からベトナムへ工場の場所を変えることではない。神戸大学の三品教授によれば、業種や売り先(産業・官公・量販など)、「誰を相手に何を納めるか」が立地の本質。立地によって業界の利益率に大きな差があり、荒廃した”立地”では神様でも高い利益率をあげることは無理だという。
難しいのは、事業戦略にサイエンス的な普遍性があるとすれば、誰が考えても理詰めで理論展開すると、同じ結論にたどり着くことになるので、同じ戦略をもつ企業だらけになって、同質競争も招く。 戦略が合理的であればあるほど、誰もが同じことを考えるから、長期的な利益に繋がらない。一方で、戦略が非合理であると、うまくいくはずがない。
実際、人口構成を合理的にみて「新興国」「ボリュームゾーン」という戦略をとる企業ばかりになっている。戦略にサイエンス的な普遍性・再現性があるから、同じ戦略がまたたく間に普及する。新聞メディアや経営コンサルタントが、さらに同じ戦略の普及を加速する。
コンサルタントといえば、SWOT分析やポートフォリオ分析も、そこから導かれる結論に意味はないと言い切る。先に事業の構想やアイデアがあって、それを簡単に説明するためのツールではあるが、分析から事業の構想を導きだそうとするのは危険である。
松下幸之助、本田宗一郎、井深大、現代ではカルロスゴーン、ジャックウェルチ、サムヲルトン、更に稲盛和夫、スティーブジョブズなど、経営はいつの時代も人に依存する。 経営は普遍的なサイエンスではなく、ダビンチやモーツアルトなど、人の才能や生き様と密接なアートに近い。
以上がこの本の前半で、後半は、だから人材の育成が必要だという。日本企業では有能な管理職がそのまま経営者になることが多い。だからバランス重視の調整型経営に終始する。 しかし、管理職にもとめられるものと、経営者にもとめられるものは、異なる。 協調性が重視される管理者は、普遍性・再現性のあるサイエンス的な仕事だ。一方、経営者に求められるのはアートに近い「その人ならでは」の独立心とアイデアだ。 -
わかりづらい。ポイントとして重要な点もありそうだがそもそも読み進められず。
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経営者は、戦略とどう向き合えばよいのか?時々刻々と変化する状況に、いかに対応すればよいのか?経営戦略の専門家が、一般論ではない、実践的な戦略論を指南する書籍。
戦略の核心をなすのは、次の3つ。
①立地:事業を構える「場所」。需要があって供給が少ない立地が望ましい。
②構え:立地以外の、後からでは簡単に変えられない要素。小売業でいえば、店の基本設計や、商品の展示密度など。
③均整:会社全体のバランスを取ること。すべてが無駄なく稼働するよう、ボトルネックを解消する。
戦略は、不確定な未来に立ち向かうための方策である。想定が崩れた時、新しい展開にリアルタイムでどう対処するか、それが結果として戦略になる。その判断を下すのは、経営者。
予想外の展開に対処する時、次の3つ(KKD)が判断のベースとなる。
・観:人の受けた教育を投影するモノの見方。「世界観」「歴史観」「人間観」の集大成として、自ら営む事業の見方、「事業観」ができ上がる。
・経験:不確定な未来に立ち向かう時、答のない問いに取り組む時、自らの経験が拠より所になる。
・度胸:戦略は理詰めで解けるものではない。不確定な未来に向けて手を打つ以上、最後は思い切りが必要である。
人が替われば、戦略が変わる。企業は、外部の人材を登用するなど、人選により戦略を間接的に選ぶことができる。
人を選ぶ際は、「パーソナリティ(性格、人柄)」や「キャラクター(品性、人格)」ではなく、「テンパラメント(気質、感受性)」を基準にする。これは、人が何を楽観し、何を悲観するかを決めるものだ。そういうテンパラメントが、経営者の「観」の形成を左右する。