自治体をどう変えるか (ちくま新書 625)

著者 :
  • 筑摩書房
3.21
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本棚登録 : 189
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480063243

作品紹介・あらすじ

財政規律を失った国家の破綻、存在感が薄れる府県、平成の大合併など、わが国はいま明治維新、戦後改革に次ぐ、大改革が求められる「第三の波」に遭遇している。行政活動の三分の二を担う地方は、二〇世紀の集権下で行われてきた他者決定・他者責任の経営から早急に脱皮しなくてはならない。豊富なデータに基づく具体的な提言を行いながら、「官」と「民」の関係を問い直し、分権下の地方自治、新たな自治体経営の方向を示す。

感想・レビュー・書評

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  • この本の通り、
    佐々木先生自信がすでに「地方消滅」(本当は基礎的自治体の消滅ですが)を10年以上前から提起しています。
    この15年、なにか具体的な対策は打たれたのか、そんな疑問が表れる書籍。
    現状は、構想は出るものの具体化は進んでいません。ふるさと納税や戦略特区くらいでしょうか。

  • 自治体改革のテーマを大まかに理解する上で、参考になった。特に議会のあり方についての意見は参考になった。議員と自治体職員が政策立案面で協力関係を築くための仕組みは、確かに必要だと思う。

  • 地方自治論の重鎮が2006年に著した、自治体経営の方向性が示された本。
    面白かった。文句なしに★5つ。

    第1章において、本書における主張の前段として、自治体行政をとりまく環境の変化が説明されています。
    これは2006年当時のものではありますが、人口減少・国策としての分権化・民間化・景気の低迷・非正規雇用の増加や退職金問題・成長の限界・新たな「公共」など、
    いずれのテーマをみても、2015年現在においても十分その波の中にあるといえるでしょう。

    第2〜7章が本書のメインで、 
    「自治体は政策官庁へなるべき」
    「自治体の政策とはいかなるものか」
    「議会改革ー立法機能の強化・自立ー」
    「公務員は公共ビジネスマンへ」
    といった主張とその論拠が明確に示されています。

    第8、9章はおそらくオマケ的な章で、それぞれ「自治体の合併」「道州制」がテーマとして取り上げられています。
    特に「道州制」については、2010年の著作『道州制』が出ているので、主張の理解はこちらの本を通じて試みてみます。

    さて、本書で主張されているテーマは、自治体の中で働く職員からすれば、”そんな夢みたいな改革が実現できるかよ”と思うかもしれません。
    しかし、都庁の中で働いた後に、大学で研究者として大成された著者だからこそ、その主張にもバランスの良さがあった印象。

    自治体職員だけでなく、広く”地方自治なんて・・・”と悲観的に思う人にこそ読んでほしい一冊。

  • (大学時代に書いた書評が出てきた)

    日本の行政改革は「分権化」、「民営化」を潮流としている。筆者はそのような改革の中では自治体のあり方を考えることが今後の日本の国のかたちを模索していく上で重要だとしている。分権化は本来のあるべき姿である、というのが筆者の持論のようで、公共の責務は最も市民に身近な政府である基礎自治体で実施するべきでありそれを県や国が補完するという「補完性の原理」が分権化の基本的な考え方として繰り返し出てくる。

    本書の中心となっているのは、自治体の政策官庁化、地方議会改革、公務員改革、地方財政再建、市町村合併後の自治体経営、道州制の導入といった地方自治体に関連する具体的各分野への政策提言を行うことであり、そのことによって今後の地方自治体のあり方を主張している。特に自治体の政策官庁化を強調しており、各自治体が自由に住民の要求に応えて政策を実施することで地方自治体間に「良い格差」が生まれてくるとする。しかし、最終的にはそのような筆者の提言する自治体の姿を実現するためにはまず政治主導でさらなる地方分権改革を行うことが必要であると結論付けており、その点目新しい印象は受けなかった。

    それでも全体的に記述は丁寧で読みやすいものとなっている。筆者が行う政策提言それ自体よりも、その提言の前提となっている言葉や概念の説明や近年の地方政治における論点の解説などが分かりやすく勉強になった。

  • 今年に入って大きな話題になっている道州制導入。平成に入って以降、いままでの集権体制から地方分権へと舵が切られ、地方分権一括法、市町村合併と分権への施策が推し進められてきました。道州制導入は地方分権に向けここからさらに大きな一歩を踏み出す施策となるでしょう。

    さて、本書ではこの地方分権に際してのこれからの国・地方自治体の在り方について書かれています。
    筆者の主張はズバリ、「事業官庁から政策官庁へ」。
    地方自治体はいままで国が決めた方針に従い個別事業を進めることが中心の「事業官庁」の色が強かったが、これからは地域のことは地域で決める「政策官庁」へと模様替えしなければならない。筆者は一貫してこのことを主張しています。そのために行政機関は、地方議会は、都道府県は、そして国の在り方はどう変わり、何を目指すべきか。そのあたりがすっきりまとまっている印象でした。

    行政学、行政法、財政学、地方自治法のバックグラウンドがあると、より筆者の主張が分かりやすかったかもしれません。ちょっと残念。

  • やや昔の本だが、地方自治についてとてもよくまとめてあり、大変勉強になった。
    自治体の改革は、組織にしても財政にしてもまったなし。ただし、その行い方は、民間企業同様、競争原理を多く導入することが有効である。
    これから自治体職員を目指す際のよい指標となった。

  • 基本的な項目を整理するのに役立つ。

  • 現状の地方自治制度をどう変えるかという視点で、データを交えて論じている。国内ないし国際レベルでの変化にどう対応するか。目指す方向はどこにあるのかを念頭に論じているため、非常に説得的。

  • p111からの行政責任についての説明分かり易かった。一口に「責任」と言えども、様々な局面が存在することがわかった。本人(住民)が代理人(自治体)の任務に不満がある際に、代理人に対して問責をする。その問責に応えなければならないのが、「弁明的責任」(≒説明責任)。本人が納得しなければ解任・減給などの「制裁的責任」へ移行する。・・・「責任の所在を明確化する」ことが重要であると過去に感じたことがあった。"誰がどのような責任や権限を持っているのか"正しく理解することはそんなに簡単ではないな、と改めて思った次第です。

  • 佐々木信夫教授の地方行政・政治にかける熱い想いがこもっている。人柄共に好きな先生。

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著者プロフィール

中央大学教授 法学博士

「2013年 『大都市行政とガバナンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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