下流喰い: 消費者金融の実態 (ちくま新書 617)

著者 :
  • 筑摩書房
3.20
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感想 : 63
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480063250

作品紹介・あらすじ

格差社会の暗部で、弱者が借金漬けにされている。デフレ経済下、大手消費者金融会社は低所得者層を貪り、肥大化してきた。いま、その甘い蜜を求めて大手銀行と外資企業が争奪戦を演じている。その一方で、多重債務に陥った利用者は、ヤミ金に全てを奪われた挙句、深い闇に沈められる…。貸し手と借り手の双方に生じている変化を分析し、金融業界と日本社会の地殻変動を克明に描いた渾身のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 18年前の本。この頃すでに「振り込め詐欺」「ホス狂い」「雇用のアンマッチ」が描かれている点がすごい。逆に政治的な動きが滞って、現状になっていることが怖い。

  • 2006/9/7 . 2006/10/10 ru

  •  金融ジャーナリストの著者が、消費者金融をめぐる現状と問題点について、丹念な取材に基づき検証したノンフィクション。

     「下流喰い」というタイトルが言い得て妙だ。
     消費者金融は、低収入でかつかつの生活をしている層にこそ狙いを定める。しかも、獲物がやってくるのをただ待つのではなく、あの手この手で融資を増やし、新たな多重債務者を“生産”していくのだ。消費者金融もまた、巨大な「貧困ビジネス」なのである。

     本書でとくに槍玉に上げられているのは、アイフル。同社の強引な営業・取り立てが社会問題化したことは私も知っていたが、本書を読むと聞きしにまさる悪質さである。ほとんど闇金と地続きという印象を受ける。たとえば――。

    《返済不可能な多重債務者に、さらに増枠させて貸付けを行なう――それを可能にしたのが、アイフルの「おまとめローン」である。
     アイフルは多重債務者に対し、他社からの借入れをまず一本化するように働きかけ、一括返済を名目にした同ローンを勧めてきた。
     これは親族や知人などの不動産を担保にさせる新手の不動産担保ローンで、いずれ返済が滞るのを見越したうえでさらに三○○万円から五○○万円の貸付けをする商品だ。(中略)明らかな過剰融資のうえ、最初からその担保自体を収奪せんがための大がかりな仕掛けといっても過言ではないのだ。》

     著者は、多重債務者や消費者金融の元社員など、さまざまな立場の当事者の声を拾い集め、「下流喰い」の実態に生々しく迫っていく。
     と同時に、消費者金融業界の歴史、闇金と銀行という“両側の隣接業界”との関係、海外の消費者金融事情などを手際よく紹介し、読者に問題の鳥瞰図も提示する。マクロとミクロ両方の視点をバランスよく兼ね備えているのだ。

     読みごたえのある本だが、一つ気になったのは、多重債務者側の責任をまったく不問に付している点。
     母子家庭で生活苦から消費者金融に手を出した主婦など、同情すべき事例もあるいっぽう、とても同情できない債務者も多い。
     飲み代などの遊興費で多重債務者となったサラリーマンとか、ホスト狂いが昂じて多重債務者となった女とか、自業自得としか言いようがない。いくら消費者金融が言葉巧みに煽ったとはいえ、借りるほうも借りるほうだ。

  • 金融会社が都合の良い債務者に狙いを定めてお金を搾取する実態が生々しく書かれていた。金融会社からしてみれば商売だから仕方ないのかもしれないが、やるせない気持ちになった。もしローンなどを組む時も、金融会社のいいなりにならず金利計算などは自分できちんとすることが重要だと感じた。

  • 2006年刊行。◆消費者金融をめぐる業界、銀行・マスコミ等を含む関係者の内幕を明らかにしようとしたもの。正直、遅きに失したというのが実感だ。この問題は、2000年代になって問題化したのではなく、30年あるいはそれ以上の期間、本書記載の実情が続いてきたと見たほうが正確だろう。しかも、本書刊行後、最高裁の判例は、業者側有利と目される方向に触れつつあること、上限金利の規制・貸出額総量規制撤廃の動きもあることから、現状より高金利となる危険・問題点(現状の規制金利でも諸外国に比して高利)は注意しておく必要がある。
    なお、本書で指摘しているマスコミの問題点、すなわち、スポンサーに配慮をして問題の隠蔽化に手を貸す構図は、理解・認識しておく必要がある。また、小泉内閣によるセーフティネット構築が空々しく、誰も責任ある回答をしていない点は、著者指摘のとおり。

  • 2006年発行。
    縦書きの新書なので,どうしても数字で示すのには向いていないけれど,当時のサラ金業界の実情が,ほどほどによくわかる。グレーゾーン金利が撤廃されて,弁護士などがさかんに過払い金返還の宣伝をしている現在,どうなっているんだろうか?

  • 弱きものが弱きものを騙し、強きものは利益を吸い上げる。そして誰もが、弱きものになる可能性を抱えて生きている。政治家らの言うセーフティネットは、どこに行ったのだろう。厳しい現実と何もできない自分に、気持ちがふさがる、、、

  • 世帯調査(貯蓄ゼロと回答が全体の23.8%、生活保護世帯が100万世帯を突破 2005) 自己破産件数(2005年は184000人を上回った) フォーブス(日本の富豪リストにサラ金経営者が含まれていた) ロールオーバー 福田吉孝(アイフルの創業者。「銀行を買収したい」と発言) 貸金業規制法と出資法の一部改正法(ヤミ金規制法) アイフル被害対策全国会議 全国信用情報センター連合会 三件規制(原則として他社利用は三社以内までとすること) クレサラ被協連 グレーゾーン(種と利息制限法の間に立っあるもの) みなし弁済規定 テラネット(全情報連とは別のデータベース組織) 護送船団方式 ゼロ金利政策(デフレ脱却なための緊急措置) 多重債務者の平均像(JCFA金銭カウンセリング) ミナミ(大阪) レディースローン(時におんな市が開かれるとのこと) 八尾ヤミ金心中事件 日掛け金融 コミュニティ金融(信用組合や信用金庫といった裾野の金融機関のこと) 頼母子講・無尽講 小原鐵五郎「貸すも親切」「銀行は晴れた日に傘を貸し、雨が降ったら取り上げる」 聖域なき改革 タブー(サラ金会社が大きなスポンサーになっている今日、こみ入った記事を掻くと圧力をかけられる)  

  • かねてから、この業界のキャンペーンCMコピー「ストップ借り過ぎ」には非常に違和感を覚えていたが、本書を読んでその意を強くした。「営業努力」という名の押し貸しにはまさに「ストップ貸し過ぎ」のコピーがふさわしい。
    「ご利用は計画的に」の一言で全てを押し切ろうとする業界の独善はさすがに金融庁をはじめとする当局の怒りを買い、グレーゾーン金利の撤廃という事態にまで発展したが、忘れてならないのは提携や買収により巧みにこの分野に進出したメガバンクの理念なき経営体質である。本書で描かれる下流消費者~闇金融~大手消費者金融と連なる食物連鎖ピラミッドの頂点が、今や空前の利益を稼ぎ出しながら法人税すら納めない彼らメガバンクであることは、弱肉強食の自由主義経済の下ではごく当然の帰結といえるかもしれない。

  • 読んだあと、憂鬱になるような消費者金融の手口。多重債務者は個人の問題でなく、カモにするため多重債務者が作られ、絞るだけ絞った後は...。いやはやなんとも。

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著者プロフィール

須田慎一郎(すだ・しんいちろう)
経済ジャーナリスト。1961年東京都生まれ。日本大学経済学部卒。経済紙の記者を経てフリー・ジャーナリストに。
「夕刊フジ」「週刊ポスト」「週刊新潮」などで執筆活動を続けるかたわら、「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)、「そこまで言って委員会NP」(ytv)、など、テレビ、ラジオの報道番組で活躍中。 また、2007年から2012年まで内閣府の多重債務者対策本部有識者会議の委員を務める。政界、官界、財界での豊富な人脈をもとに、数々のスクープを連発している。
著書に『ブラックマネー』(新潮文庫)、『山口組マネー』(宝島社)、『投信バブルは崩壊する! 』(ベスト新書)、『下流喰い 消費者金融の実態』(ちくま新書)、『「階級格差」時代の資産防衛術』(イースト新書)などがある。

「2019年 『なぜカリスマ経営者は「犯罪者」にされたのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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