「奥の細道」をよむ (ちくま新書 661)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480063663

作品紹介・あらすじ

芭蕉にとって、『おくのほそ道』とはなんだったのか。六百里、百五十日に及ぶ旅程は歌仙の面影を移す四つの主題に分けられる。出立から那須野までの禊、白河の関を過ぎてみちのくを辿る歌枕巡礼、奥羽山脈を越え日本海沿岸で得た宇宙への感応、さまざまな別れを経て大垣に至る浮世帰り。そして芭蕉は大いなる人生観と出遭う。すなわち、不易流行とかるみ。流転してやまない人の世の苦しみをどのように受け容れるのか。全行程を追体験しながら、その深層を読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • ツンドクしていた本を読了しました。
    ペン✒️で線を引き乍ら、4日間かかりました。
    奥の細道を直接読んだら、理解出来なかった
    であろう事が丁寧に説明してあります。
    一例を挙げると、奥の細道に行く前に詠んだ
    古池や かわずとびこむ水の音
    の解説が秀逸です。
    何故、古池に ではないのか? 
    を考察し、
    古池は芭蕉の頭の中に浮かんだ
    景色で現実の物ではない事。
    これと同じ仕組みの俳句が細道にも
    多く出て来る。
    昔なら、奥の細道を辿りたくなりそう
    ですが、今は諦めが先に来ました。

  • どうしても嵐山光三郎の芭蕉像が頭から離れないが、俳諧という表の顔にリアリティがあるからこそ、裏の顔と推察される隠密が成立するのだろう……ともかく、国文学者のように芭蕉が詠んだ句の中に、西行や源氏物語などの古典の下敷きがあることを読み取る教養がないので、江戸の知識人の教養の深さに驚かされる。「荒海や佐渡に横たふ天河」は本書では実景を詠んだ句と解説していたが、芭蕉が歩いた季節の日本海は穏やかだったろうし、天文学的に佐渡島には天の河は横たわない。曾良日記では当日は雨だった。このあたりは上手の手から水が漏ったか?

  • 2015年3月新着

  • 芭蕉にはまる。長谷川氏の他の本も読んでみたい。

  • これは良かった!私は俳諧のまったくの初心者なのだが、芭蕉の世界を理解できた。和歌は、三十一文字で一つの世界を読み上げるが、俳諧は切れのところでまったく違う
    (心の世界)へ飛ぶ。初めはそれがわかりにくかったが、通読するうちにわかってきた。そしてその面白さも。
    初心者でもこのように芭蕉の世界の面白さをわからせる書き方をしてくれる筆者がすばらしいと思う。

  • 「古池や・・・」の句で蕉風開眼した芭蕉が、その俳句の実践の場として、選んだ場所が歌枕の宝庫である東北(みちのく)であった。
    そして杜甫や西行のような旅に憧れて旅に出るのであるが、訪れた「みちのくの歌枕」の地での夢と現実のギャップそして失望、そして日本海側での「荒海や」の句で代表される宇宙的な体験、最後に人間世界への浮世帰りと、その旅の中で新境地を悟る。つまり、宇宙的なものから「不易流行」、人間世界への回帰からは「かるみ」へと、芭蕉の俳句が昇華していく旅であった事が平易に語られている。

    若い頃は誰でも、希望に満ち溢れている、ところが、長く生きていると、どうも様子が違う事に気づき始める。そして現代のようになかなか死ぬことすら出来ない悲惨な人生をどう生きていけばいいのか?
    著者は、「人生を幸福なものと思っていれば、ときどき出会う不幸は耐え難いものに思えるだろう・・・(略)・・・ところが、はじめから、人生は悲惨なものと覚悟していれば、ときどき巡ってくる幸福が素晴らしいものに思える。芭蕉が「奥の細道」の旅以降に詠んだ句はどれもこうした人生への深い諦念の上に立って詠まれている。あるいは、こうした諦念を下に敷いて詠まなければ、その味わいがわからない句である」
    我々の今後の心構えとしても、押さえておきたい人生観でもあります。

  • [ 内容 ]
    芭蕉にとって、『おくのほそ道』とはなんだったのか。
    六百里、百五十日に及ぶ旅程は歌仙の面影を移す四つの主題に分けられる。
    出立から那須野までの禊、白河の関を過ぎてみちのくを辿る歌枕巡礼、奥羽山脈を越え日本海沿岸で得た宇宙への感応、さまざまな別れを経て大垣に至る浮世帰り。
    そして芭蕉は大いなる人生観と出遭う。
    すなわち、不易流行とかるみ。
    流転してやまない人の世の苦しみをどのように受け容れるのか。
    全行程を追体験しながら、その深層を読み解く。

    [ 目次 ]
    第1章 「かるみ」の発見
    第2章 なぜ旅に出たか
    第3章 『おくのほそ道』の構造
    第4章 旅の禊―深川から蘆野まで
    第5章 歌枕巡礼―白河の関から平泉まで
    第6章 太陽と月―尿前の関から越後まで
    第7章 浮世帰り―市振の関から大垣まで
    エピローグ―その後の芭蕉

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著者プロフィール

長谷川櫂
一九五四年(昭和二十九年)生まれ。俳人。「読売新聞」に詩歌コラム「四季」を連載中。朝日俳壇選者、俳句結社「古志」前主宰、インターネット歳時記「きごさい」代表、「ネット投句」「うたたね歌仙」主宰。著書に、句集『虚空』(読売文学賞)、『震災歌集 震災句集』、『沖縄』、『九月』、『太陽の門』のほか、『俳句の宇宙』(サントリー学芸賞)、『古池に蛙は飛びこんだか』、『俳句の誕生』などの俳論、『俳句的生活』、『俳句と人間』などのエッセイ、『和の思想』、『文学部で読む日本国憲法』などの日本文化論がある。

「2023年 『四季のうた 雨ニモマケズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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