会社員の父から息子へ (ちくま新書 686)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480063892

感想・レビュー・書評

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  • まじめに生きるということ。折を見てまた読み返したい作品。

  • 父子の関係は消え去ることはない
    しかも生きているうちはそれが鬱陶しく、存在価値に気づかない
    気づく時には既に思い出の中になってしまいがち
    会社はしがなく、社会の縮図
    自己評価たるもの、あまり意味はなく、詰まる所自分を信じるかどうか次第
    強く自分を位いることの大切さ

  • ある本で紹介されていたのをきっかけに読んだ。
    独特の文体に引き込まれ、一気に読んでしまった。
    一会社員として生きながら、自問自答しながら、筆者の価値観を構築してきたことがよく分かる。
    しかし、そこには明確な一貫した哲学がない。
    にも関わらず、引き込まられるのは、著者の経験に基づいているからだろう。

  • 2016.9.14
    私はこの著者のような人が好きである。どこか昔ながらの価値観と信念に従って生きる人間、生きる上で大事なものをちゃんと自分の心のうちに持っている人間である。しかし私はこのような人間ではない。私もどちらかといえば世の価値観に反感を持っている面のある人間だし、時代遅れの人間だし、そう評価されることもままある。しかし著者と同様、私もそういう自分に満足している。何か学として語るのではなく、等身大の一人の人間として語れることを語るこの本は、本の虫になって本当に考え感じるべき大切な何かは、高尚な心理などではなく、一人の人間が愚直に誠実に生きた人の道の上にあるのだということを、それは何ら特別なものではなくて、生きることを真摯に向き合うことでそれが実は目の前にあったのだということに気づかせてくれる。目新しい発見があるのでもなければ、何か知的功名心をくすぐられるものでもなく、全体として面白いかというとそうでもない気もするが、この本を読むと私はここに一人の人間を感じるのである。すごくこう、説明が難しいが、その着ている服のシミまで見えるような、それでいて見えることが当たり前でそのことに何の特別な感情も抱かないような距離感で、ありありと一人の人間を感じる気がする。等身大の自分で人生と向き合うという、誰にでもできて、それでいて大切で、しかし忘れがちなことを思い出させてくれる一冊。

  • 【生き方】会社員の父から息子へ/勢古 浩爾/20160921(119/545)<206/55197>
    ◆きっかけ
    ・日比谷図書館

    ◆感想
    ・ここまでストイックにはできないが、まあ、人生の前半部分は多いに楽しんだから、後半は周囲に還元していくというゆとりはあっていい。もちろん、自分自身の人生を楽しんでいるという姿を見せることそのものにも意義はあるし。

    ◆引用
    ・もししあわせというもがあれば、それは女子供のためのものだ
    ・男に幸せなどない もしあるとすれば、それは一番最後だ。それまで、男、は田、んぼで耐えて、力、を尽くせばいい
    ・花に嵐のたとえもあるささよならだけが人生だ 井伏鱒二 BOOK厄除け詩集

  • 2015.10.19
    こんな事を言うのは著者に大変失礼かもしれないが、普通、本を読むとき、その本から自分にはないものを得ようとする、つまり著者は偉人だったり偉い学者だったりすることが多い。その点この著者は、本人も言う通りただの会社員であり、一般的なサラリーマンであり、そしてこの本は彼の息子に語るという形式の、彼の自分史である。なんの変哲もない、何か偉大な業績を残したわけでもない、本当に言葉が選べず失礼だが、言わばただの普通の人の自分史である。しかし、しかしどうして、そんな普通の人の自分史に、強く心に響くものがある。彼は肩書きだけで見たら確かに一般的な人だが、しかし彼の人生に対する姿勢には、誠実さと正直さ、真剣な問いと答え、そして内省と後悔とが見られるように思われる。時代にも国にも文化にも左右されない人徳として正直と誠実とがあるというのは、とても感銘を受けた。それは他者に対してもそうだが、自分に対してもそうである。彼のいう「ふつう」であることは、私は己であること、と捉える。世の価値観がどうであれ、自分の価値観を持ち、世に迎合せず、己であり続けることの大切さ。無論だからと言って独善的にならないよう常に学び経験して修正はかけていくべきだろう。男らしさを述べていたりもしたが、私はやっぱり私自身に誠実に、私の価値観にそって、私らしくありたいと思う、下手に上っ面だけ〇〇らしさに染まるくらいなら。愛に関して、人は自分のために生きれば腐り人のために生きれば満たされるという、人間の逆説的存在は確かにと思った。故に自己愛、自尊心こそ諸悪の根源だと言うことも、もう色んな本に書かれている。それでもモンスター然り自分様人間の増えてるこの現状は、時代的なものなのだろうか。人の繋がりの希薄さ故なのか。愛すれば満たされるのか、満たされてるから愛されるのか。愛はこの心のどこに宿るのか、なぜ生きる上で必要不可欠なのか。私は愛されていたのか、愛していたのか、それとも虚栄心を満たしていただけか、優しい自分に酔っていただけか。本当に「愛する」とは何か、これは今後の私の問いである。生きるということは、いかに生きるかということは、結局自己満足ではないかと思った。幸せや満足の基準は十人十色で客観的なものはない。よって自分の基準、自分の「ふつう」に照らし合わせ、それでよければそれでいい、なのだと思った。生きる目的などない。というか生きることが目的である。生きることに先行する何かしらはない、私にとってすべては、生きるというゴールのためにある、そう思う。ではよりよく生きるとは、満足である。満足を追求すると、他者貢献、愛になる。こういう人性論的な本は消化しきる前に頭の中を通り抜けてしまうから惜しい。私がこの本から学べたことは、肩書きなんかなくても自分に誠実に正直に、一生懸命に真面目に生き、己であれれば、こんな素晴らしい人になれる、そしてその姿勢を持って生きていけば、頭でっかちにこねくり回さなくても、生きていくには困らない位の、人生の問いに対する答えは得られる、他者へは誠実と正直と愛を持って、自分様にならないようにし、義を以って社会に生きる(ここが私には特に難しい)、ということだろうか。こう読むと仁義誠と、儒教的でもあるな。偉い肩書きなどない、サラリーマンであった著者による、諦念と合理的思考と悔恨の人生論。私は自分が真面目で堅いところもあることに悩んだこともあるが、そんな人には救いになる、そんな生き方でも全く素晴らしいと思える本。なんか、ほっとした本だった。

    2015.10.26p.s.
    プラトンの哲学に真善美という考え方がある。己に嘘をつかず、己の信じる正しさに準じ、己の美学を貫く在り方を目指すことが人間の理想ならば、正直で誠実という著者の在り方はまさにこの思想のひとつの体現例ではないだろうか。

  • 真面目さを貫き通した生き方

  • タイトルから、なんだか警句めいた人生訓を語っているのかと思ったが、一般企業で30年以上働き、その体験の中で出会った人々、培われた人生観が落ち着いた文体で書かれていて、いい意味で裏切られた。
    最後の章を読み終えた後、なんだかジンとした気持ちになった。

    この筆者の他の本も読んでみたい。

  • 内容を説明する言葉なんていらないな。
    勢古浩爾さんの本の中でも、これは重みが違います。
    この本があれば、つよく、やさしく、まじめになれるような気がする。どんな自己啓発書よりも大きいです。
    読むたびに自分への届き方が違うように感じる。心から、この本に出会えてよかったと思う。

  • [ 内容 ]
    「会社員」として長い年月を勤め上げたひとりの人として、息子(娘)に伝えておきたいことがある―そう思うお父さんは決して少なくないだろう。
    だがそれは、謹厳実直な人生訓ではない。
    立派な申し渡しでもない。
    遺言ともちがう。
    しいて言えば、自己証明の記録だろうか。
    すべての無駄を排除したのちになお残る言葉があるとすれば、それのみを掬い上げて伝えたい、父から子への手記。

    [ 目次 ]
    第1章 なにもいわない
    第2章 会社員であるということ
    第3章 愛した人は愛した人
    第4章 金と心
    第5章 世の中を生きるということ
    第6章 男に「幸せ」などない
    第7章 いつか訣れる

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    [ 参考となる書評 ]

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著者プロフィール

1947年大分県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。洋書輸入会社に入社したが2006年に退社、執筆活動に専念。「ふつうの人」の立場から「自分」が生きていくことの意味を問いつづけ、『まれに見るバカ』(洋泉社・新書y)で話題に。その後も『アマチュア論。』(ミシマ社)、『会社員の父から息子へ』(ちくま新書)、『定年後のリアル』(草思社文庫)など著書多数。

「2017年 『ウソつきの国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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