ヤクザと日本: 近代の無頼 (ちくま新書 702)

著者 :
  • 筑摩書房
3.54
  • (11)
  • (17)
  • (28)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 209
感想 : 21
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480063960

作品紹介・あらすじ

ヤクザとは何者なのか?法の支配がおよばない炭鉱・港湾などの最底辺社会に生きた者たちが、生きんがために集まり発展したのが近代ヤクザの始まりといえる。彼らの存在が日本社会の近代化を下支えしたという現実。日雇い派遣、ワーキングプアなど、あらたな下層社会が形成されつつある今こそ、ヤクザの歴史を振り返ることで、現代社会の亀裂を克服する手がかりがみつかるにちがいない。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日本の裏社会に興味がありませんか?ヤクザの出来た背景、歴史、現在のヤクザについて知ることができます。著者自身がヤクザの親分の息子であることから、文献の量がとても多く、非常に詳しく書かれています。ただ、どちらかというと暴露本というわけではなく、ヤクザの成り立ちについて書かれたまじめな内容の本です。読んでいくと、知らない世界を少しずつ知ることができ、なぜかわくわくしました。

    本館2階学習室(新書) 080Ch702
    けんちゃん

    • tokudaidokusho2さん
      ヤクザについては映画などに出てくるので多少の知識はありますが、イマイチどんな人たちなのかわかりません。このような本でないと知る機会はないと思...
      ヤクザについては映画などに出てくるので多少の知識はありますが、イマイチどんな人たちなのかわかりません。このような本でないと知る機会はないと思うので興味を持ちました。

      uekoishi
      2018/06/26
    • tokudaidokusho2さん
      ヤクザという言葉は聞きますが実際に何をしているのかについて知らないので気になりました。自分の体験できない世界を知ることは面白そうだと思いまし...
      ヤクザという言葉は聞きますが実際に何をしているのかについて知らないので気になりました。自分の体験できない世界を知ることは面白そうだと思いました。
      たみこ
      2018/06/26
    • tokudaidokusho2さん
      著者自身がヤクザの息子ということでとても面白そうだと思いました。また、ヤクザについての文献にも興味が湧きます。ヤクザについて詳しく知ることが...
      著者自身がヤクザの息子ということでとても面白そうだと思いました。また、ヤクザについての文献にも興味が湧きます。ヤクザについて詳しく知ることができる機会はあまり無いと思うので、この本を読んでヤクザの世界を知ってみたいです。

      horien
      2018/06/27
  • 公共ってなんだ?「港」にしろ「劇場」「興行」にしろ、社会的権力としての「暴力」にしろ、近世・近代でヤクザがやってたことは今地方自治体とか国の機関がやっている。区長とか市議とかの役割は結局「顔」だし。
    著者としては、ヤクザがやっていたことは共同体による自治だということ。アメリカの保安官との成り立ちの違いとか、義理と人情と契約(法律)による義務との違いとか。
    マーティン・スコセッシプロデュースで1920年代の東海岸アトランティック・シティで一時代築いた実在の政治家イーノック・ジョンソンのドラマ(ボードウォーク・エンパイア)があるのだが、町の繁栄のためには法律も平気で破るし上院議員に賄賂も渡す町の顔役VS連邦捜査官(禁酒法の)という構図。ちょっと似てる。

    「第四章 ヤクザと芸能の世界 周縁仲介者としてのヤクザ」とか、「劇場」興行史を駆け足でなぞるよう。「音楽」は大衆の劇場でかかる必要どころか軍隊という晴れ舞台があったわけで、いわゆる悪所由来の芝居小屋的な興行的な文化勢力が今も強い日本の「演劇」はなかなかにしぶとくて目が離せない。

    著者はアカデミックな象牙の塔の方ではないので、引用多く、恣意的に感じるところもあるのだが、著者が言うところの、
    あまりにも近代化が急過ぎて政治的権力(法)手が届かないところで国家が利用した既存の社会権力=近代ヤクザ
    をただ賛美するのでなく、社会経済の成熟具合に則って、今の任侠道は形ばかりの武士道と同じ、とも言うのは気持ちいい。

    明治以降の官製公認の歴史しかない土地は産業構造が歪んでいる。重厚長大の国営工場があったところなんか特に。という視点を強めた。個人的に。
    北部九州は、炭鉱・大正デモクラシー/玄洋社/かつての植民地近い・製鉄所・労資紛争とかで捉え直すと面白そう。



  • 歴史を辿ると、ヤクザにつきものの賭博は奈良時代に賭博禁止令が発令されていることからも、古くから行われ、鎌倉幕府の事績を記した吾妻鏡には、博徒たちの徒党化についての記事が見られるそうで。
    更に遡ると、任侠集団については、中国古代前漢の歴史書、司馬遷の史記にもその存在が見られる。
    江戸の頃、傾き者(カブキモノ)もその類と言える。
    そのルーツから近代ヤクザと呼ばれる彼らをまとめた一冊。
    ヤクザには博徒とテキヤがいる。更に博徒には渡世人と稼業人の2種類がいる。他に正業を持たない博奕打ちが渡世人、土建、運輸、鉱業などに関連した稼業を営み、基本的にそれで食っているのが稼業人と分類される。
    近代以前のヤクザというのは、それによってしか生きられない者たちが生きんがためにより集まった生活集団であり、任侠道イデオロギー集団ではない、というのが著者の見解だ。
    戦前から戦後にかけて、貧民や流民といった下層階級の人々が生きるため、また混沌とした生活環境の中、法治国家としての機能が不全の際に、国や政府の代わりに自警団として、自治を行なっていた。

    コロナ禍の令和。指定暴力団の構成員数は最盛期から、相当数減少している。
    かつて、近現代前のヤクザというのは、セーフティーネットとして社会生活の営みという目で見れば、市井の民の実生活には必要なものだったんだなと思いますね。

  • amazonで詳細を見る

    ヤクザと日本―近代の無頼 (ちくま新書 702)
    (和書)2009年04月12日 15:12
    2008 筑摩書房 宮崎 学


    最近、この著者の存在を知って読み始めたのですが、凄いです。今までの認識・世界観が変わってしまうほどのインパクトでした。

    このほかの本も読んでみたい。

  • 昔読んだ本シリーズ。
    色々と知らないことが書かれていますが、注目したのは以下の点。
    ・上組は仲仕の合資会社となり、ギルド的組織となった。内部で厳しい規律を課し、ヤクザとは差別化
    ・近代以前の芸能活動は、宗教的意味合いを持つ行為だった
    ・海外から見ると、マフィアと比較して日本のヤクザが社会に受け入れられていることは異様に映る

  • 日本のアウトロー「ヤクザ」を肯定的に叙述した本。多くの研究に依拠しながらもエネルギッシュに論をまとめていく力は見事。ただ、多くの研究の引用があり雑然として著者自身の論として読むのは少し難しかったきらいがある(ので☆4つ)それにしても、歴史教育においても重要な提言だと思うが近代以降の日本史からヤクザはすっぽり抜けている気がする。それは当然と言えば当然かもしれないが、著者が明らかにしたような大衆芸能との結びつき、権力との結びつきなど考えれば不自然ということはできよう。まあ、不都合な真実という類いのものかもしれない。
    吉本と山口組のかかわりや、米騒動とのかかわりなどは、もっと知られて良い。詳しく知りたかったのは被差別部落や在日朝鮮人とのかかわりかた。

  • 近代ヤクザが下層労働者の中から生まれ「社会的権力」としての立場を確立するまで。

  • 豊富な参考文献を参考にしながら,実によくまとめてある.中身が濃くてとても読み応えがあります!ヤクザとはそもそも何なのかが分かる本

  • 社会構造の中で、ヤクザはどんな変遷があって、どう成り立ったのか。義理人情の詳しい考察や他の社会との比較があったりして、すいすい読めた。芸能から切り離せない訳、現代でなくなった役割など、客観的に捉えるにはよいと思う。巻末参考文献の量が圧巻。

  • やくざという存在が日本の近代化といかに分かちがたく結びついていたか。
    下層労働現場における「仕切り」役として、「芝居小屋」などの悪所の顔役として、末端庶民への社会権力として、そして時には理不尽な支配に対する反権力の暴力装置として、著者の主張するところでは「昭和20年代ころ」までその存在は一般社会と地続きであったとされる。
    「親方・子方」関係や「義理と人情」の価値体系から語られる日本社会の深層に根ざした存在としてのやくざ論はスリリングだし、「自治としての談合」という切り口などは談合を批判する人々も是非しっておくべき歴史的経緯だろう。
    ただ、高度成長を経て大きな変化を遂げた日本社会の中で、やくざという存在もまた変質を余儀なくされたはずであるが、その点について本書は多くを語らない。バブルを経て「偽装請負」などの言葉に象徴される不安定雇用がはびこる現在、社会経済の裏面ではいまだ彼らが蠢いているはずなのだが、やはりやくざを語るには時間と距離が必要なのだろうか。

全21件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

写真家。1949年長野県生まれ。精密機械会社勤務を経て、1972年、プロ写真家として独立。自然と人間をテーマに、社会的視点にたった「自然界の報道写真家」として活動中。1990年「フクロウ」で第9回土門拳賞、1995年「死」で日本写真協会賞年度賞、「アニマル黙示録」で講談社出版文化賞受賞。2013年IZU PHOTO MUSEUMにて「宮崎学 自然の鉛筆」展を開催。2016年パリ・カルティエ現代美術財団に招かれ、グループ展に参加。著書に『アニマルアイズ・動物の目で環境を見る』(全5巻)『カラスのお宅拝見!』『となりのツキノワグマ』『イマドキの野生動物』他多数。

「2021年 『【新装版】森の探偵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮崎学の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×