縄文の思考 (ちくま新書)

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著者 : 小林達雄
  • 筑摩書房 (2008年4月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480064189

縄文の思考 (ちくま新書)の感想・レビュー・書評

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  • 2010/07/04

    「第一人者」ならではの決めつけ、思い込み、言いっぱなしが散見されるが、「第一人者」ならではの知見、洞察には深くうなづかせられるものがある。縄文時代の入門書として、縄文時代と現代を比較対照させながら「社会のあるべき姿」に関する考察を深める触媒として、まずは手に取るべき1冊と言えるだろう。

  • 長年、縄文の研究に勤しんできた著者の真摯な気持ちが各章に散りばめられている。
    現代人が及びもつかない、縄文人の生活スタイル。
    12万年という天文学的な時間の経過だ。
    縄文人の気持ちに思いを馳せる。
    真っ白な気持ちで。そんな態度が重要であるとこの本で悟りました。
    以下、内容
    1章 日本列島最古の遺跡
    2章 縄文革命
    3章 ヤキモノ世界の中の縄文土器
    4章 煮炊き用土器の効果
    5章 定住生活
    6章 人間宣言
    7章 住居と居住空間
    8章 居住空間の聖性
    9章 炉辺の語りから神話へ
    10章 縄文人と動物
    11章 交易
    12章 交易の縄文流儀
    13章 記念物の造営
    14章 縄文人の右と左
    15章 縄文人、山を仰ぎ、山に登る
    結びにかえて

  • 自ら、「縄文」の文字を綴った回数は日本一かも知れないと語る考古学者・小林達雄が、様々な観点から縄文文化を分析し、縄文人の世界観に迫っている。
    縄文時代とは、約700万年前に人類が発生し、人類史上における第一段階である長い旧石器時代を過ごした後、約1万5,000年前に、第二段階である新石器時代に現われ、その後約3,000年前に弥生時代が始まるまで続いた時代を指し、縄文文化は、ほぼ現在の日本列島に重なる範囲に広がっていたことが確認されている。
    本書で著者は、縄文土器、生活の定住化、住居と居住空間、居住空間の聖性化、動物との関係、交易、モニュメントの造営、山との関係など、様々な観点からアプローチを試みているが、以下のような考察が特に注目される。
    ◆現在世界では、第一段階から第二段階への移行の契機は農業の開始にあるとする考え方が一般的だが、縄文文化は、旧石器文化に続く新石器文化に肩を並べながら、本格的な農業を持たない文化として特殊な文化と位置付けられる。
    ◆縄文土器は、岡本太郎をして「ここに日本がある」と言わしめた、世界に類を見ない独自性と個性を持った土器であるが、その使い勝手の悪いデザインにこそ縄文人の世界観が表現されている。また、土器を使った煮炊き料理による食料事情の安定化が、縄文社会に農業を持つ他の新石器社会に引けを取らない文化を保障した。
    ◆居住空間には、炉(煮炊きや暖を取るために使われたのではない)や奥壁など生活の利便性に直結しない設備が作られ、住居の聖性化が図られた。そして、そのような空間から、物語、伝説、神話などが生まれた。
    ◆集団生活をするムラに生活に密着した諸施設が整った、縄文時代が3分の1ほど過ぎた頃には、大規模なモニュメントも作られたが、そのモニュメントの造営には数十世代もかかっており、それは、未完成の状態が続くこと、即ち完成を追い求めることにこそ縄文哲学の真意があったことを表している。
    ◆縄文文化はちょうど現在の日本列島の中に収まり、樺太、朝鮮半島に渡ることはなかったが、それは渡る航海術を持たなかったということではなく、そこに住んでいた人々とは言葉を共有せず、意思の疎通が容易に図れなかったということであり、それは取りも直さず、日本列島内に縄文日本語が行き渡り、それが縄文文化ひいては日本文化を形作ってきたことを示している。
    言語学者の大野晋は日本語の祖形は弥生時代に成立したと考え、民族学者の柳田國男は日本文化の遡源を弥生農耕文化に求めるなど、縄文文化の評価については専門家の間でも見解が分かれている中で、著者の縄文文化を日本文化の遡源とする考え方に一切のブレはない。
    日本文化・日本語のルーツを考える多くの材料を与えてくれる。
    (2015年6月了)

  •  一か所に定住することで、身体を動かすことが大幅に減った。つまり、朝目覚めるや直ちに、自分の肉体を維持するためのカロリーを摂取する食物探しにとりかかり、そのことだけにほとんど一日中費やしていた時間にとって代わって、精神を働かす方に時間を振り向けられるようになったのだ。縄文人の知性がいよいよ活発な動きを開始する契機となったのである。(p.58)

     人間意識の高揚は、自らが所属する集団の主体性の確立をさらに促した。自分達が口にする言葉の言い回しやアクセントなどが他の集団と異なる部分のあることを明瞭に認識する。このことは土器の製作に際しても、伝統的な器形や文様あるいは粘土に混合する混和剤の特定や文様の施文うぃ器体の乾き具合をみて案配するタイミングなどの土器作りの流儀の順守に忠実になる。(中略)自分意識とは、他の集団とはっきり区別されるという認識の上に成立するのである。(pp.76-7)

     ヒスイの太珠や勾玉や小玉や、ときには原石を介したやりとり=交易の成立は、ヒスイに対する価値観、ヒスイの力に基づくのである。ヒスイは決して腹の足しになるものではない。だからこそ、そこに価値を付与し、縄文世界で認知されるのは尋常なことではない。企画・演出する凄腕の存在が予想される。誰あろう、ヒスイ原産地を生活舞台とする集団をおいて他になかろう。天晴れな技というべきである。(pp.146-7)

     巨大柱が点を衝いて、すっくと立ち上がること。六本であること。あるいは縄文人の世界観のなかに見られる整数三が向き合ったり、整数三の倍数としての六の効果。そうした要素がこめられた、記念物の面目をたしかにみてとることができる。
    しかも、三本向き合って並ぶ方位は、なんと夏至の日の出および冬至の日の入りとあやまたず一致しているのである。その時刻ならば、柱列の間に放射状のダイヤモンドビームが現出するのだ。それを神々しいと言っても良いかもしれぬ。(p.157)

    それらの山は、ムラの外に鎮座して、その位置によって、近景となり、中景となり、遠景となりして、独特の風景を創り上げる。人幅の山水画において、そこにある全てが描写されるのではなく、特別な意味を与え、選び抜かれたものだけが表現されるのに似て、縄文人もまた、その他多数を埒外に置き去りにして風景を創るのである。際立った山があれば、風景の中の重鎮とし、他をもって替えることの出来ない独自の風景に仕立ててゆく。したがってめざす山が見当たらないところでは、まずは山を探すことから始めて、ムラや記念物を営む場所を選定したりしたのである。好位置についたムラには、長期間住み続ける。住み続けることで生活環境が悪化すると、ムラを離れなくてはならない、しかし、回復したとみるや直ちに戻ってくる。この繰り返しが、ときには百単位、五百を超える膨大な竪穴住居の数を結果として遺したのである。(p.189)

     登山は平坦地を歩くのとはわけが違う。自らの身体を叱咤激励し、吹き出す汗を流れにまかせ、疲れてしびれる足をかばいながら、じりじりと頂上に這いのぼる気力を奮い立たせねばならぬ。まさにこの肉体的試練あってこそ、体力に気がみなぎり、初めて山の霊力との接触を確認できたのだ。これは後世の体験者の修行が、肉体への過酷なほどの自虐的な鍛錬とひきかえに、ようやく求める境地に達することが許されたことに通ずるのである。(p.196)

  • 縄文人、縄文世界をリアリティのあるイメージを伴って彷彿させてくれる。興奮した。

  • 最近、火焔型土器をあらためて見る機会があって、こんな造形の土器をつくった縄文人に興味を持ったのが本書を読んだ理由です。
    文字資料がなく考古学的資料のみで縄文人の生活を推測するのは困難があるのでしょうが、私が感銘したのは竪穴住居での家族団欒が神話に発展していったというところで、現代の私たちにも縄文人の物語が残っているのかもしれません。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784480064189

  • 縄文人とはなんぞや?
    教科書でもあまり多くを語られることのない縄文時代。
    長年縄文研究に携わってきた小林達雄先生が、これまでの研究から縄文人を取り巻く世界観について書かれています。

    新書ということもあるのでしょうが、考古学の本によくあるような「○○式土器」などと細分された型式名称を使うことが避けられており、考古学に親しみのない人でも、他の考古学系の本に比べたらすんなりと読むことができると思います。

  • 縄文文化は、長らく自然社会から農耕社会への過渡期とみなされてきたが、著者は、新石器文化と全く同様に旧石器文化に次ぐ、人類史上の第二段階であると唱えている。

  • いまいちだったかなぁ。

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縄文の思考 (ちくま新書)の作品紹介

縄文土器を眺めると、口縁には大仰な突起があり、胴が細く、くびれたりする。なぜ、縄文人は容器としてはきわめて使い勝手の悪いデザインを造り続けたのか?本書では土器、土偶のほか、環状列石や三内丸山の六本柱等の「記念物」から縄文人の世界観をよみとり、そのゆたかな精神世界をあますところなく伝える。丹念な実証研究に基づきつつ、つねに考古学に新しい地平を切り拓いてきた著者による、縄文考古学の集大成。

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