サブカル・ニッポンの新自由主義―既得権批判が若者を追い込む (ちくま新書)

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著者 : 鈴木謙介
  • 筑摩書房 (2008年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480064547

サブカル・ニッポンの新自由主義―既得権批判が若者を追い込む (ちくま新書)の感想・レビュー・書評

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  •  いわゆる「新自由主義」を批判した本。テーマ自体は有り触れているが、ネットやメディア上の動きを扱う視点は面白い。

     「新自由主義」というと小泉内閣の郵政や道路公団の民営化に見られるような規制緩和・小さな政府路線のことと取られがちだが、この本では同内閣の採った「あいつらは不当に利益を貪っている」という「既得権批判」が新自由主義的な考え方として採り上げられている。

     その「既得権」というのは人によって変わります。高級官僚の天下りが既得権とされることはよくありますが、高齢者や障碍者、在日外国人などが「差別」を俎上に載せて「弱者利権=既得権」を貪っているとされることもある。その是非は別として、特に後者はネット上でバッシングの対象になることが多い。この流れも著者の見解に従えば新自由主義的と言えるものだろう。

     著者の考える新自由主義の大きな問題点は、「こうせざるを得ない」と宿命的に考えてしまうというもの。追い詰められた者は時に犯罪など、取り返しの付かないことをしてしまう場合も多い。

     「苦しい」と声を挙げられる環境を作ることが、追い詰められることで犯罪に走る人を減らし、私たちが「ほんとうに幸せ」になるための一歩になるというのには賛同できた。

  • 社会・経済思想における特定の立場としてのネオリベラリズムを批判するのではなく、ネオリベラリズムの言説とその対抗言説のカップリングがその上で成り立っているような社会状況の、共時的な構造を分析した本として捉えることができるように思います。

    かつて多くの人が手にすることのできた安定した地位が失われた結果、一方では、既得権批判という仕方で資源の再分配を要求する言説が生まれ、他方では、そうした流動化が進んだ社会の中で不遇な立場に立たされる者たちによって、社会の流動化を推し進めるネオリベラリズムに批判的な言説が生まれることになります。本書の考察が向かうのは、こうしたネオリベラリズムをめぐる言説の布置を成り立たせている社会状況の分析です。

    ただ、ちょっと引っかかったのは、本書の最後で「既得権批判」をおこなう個人の動機にまで分析のメスを入れて、その実存的な構造に迫ろうとしているところです。著者はそうした実存的な切実さが、社会科学的な分析以前のところで、人びとを動かす動機となっていることを認めているようです。「なぜ、「苦しい」ということを言うために、わざわざ社会科学的な根拠を持ち出さなければならないのか」という著者の問いかけは、理解できるものではあります(著者の学問上の師である宮台真司の、システム論的な思考の限界を乗り越えようとする意図を、そこに見ることができるかもしれません)。ただ、そうした実存的な根拠を、私たちが暮らす社会を構築するための根拠とすることができるのかという疑問を感じてしまいます。もっとも、著者は本書の最後でそのような展望を示唆しているだけで、具体的な議論をおこなっているわけではないのですが、より具体的な議論を展開していくに際して、実存としての私たちが、実存としての資格において、社会について発言することができるのか、という問いを避けることはできないような気がします。

  • <まとめ>
    新自由主義を若者の視点で論じる。
    インターネットにより多様な生き方が並列され、理想の自由さ、幸福さを求めるが、自己責任からは逃れられない。韓国、1968年代の状況から評論水平展開・垂直展開し、若者にとっての新自由主義を考察する。

    <感想>
    自分も同じような年代のため、共感できることもあり、共感できるからこそ、不安を覚えることもありました。TBSラジオのライフリスナーのため、鈴木謙介さんの本を一度は読みたいと思い、読みました。
    若者とは言えない年齢ですが、10年後にその時代と比較しながら、再読したいと思います。

  •  新自由主義と現在日本をどう考えるべきか、若き社会学者が語る。

     今の日本に蔓延している若者のこんなはずじゃなかった感。それは上の世代のせいだ!などの既得権批判を生む。そこで新たな体制として競争社会へ行くのか、それとも助け合いの理想郷を目指すか、右派と左派は複雑に絡み合う。
     提言、結論としては分かりづらいが、巡る思考の中で様々な興味を感じ、さらに読みたい参考文献も多かった。
     現代社会を深く考える羅針盤となる一冊。

  • 『「疎外された自己」と「獲得された自己」との往復を、「カーニヴァル」と呼んでいる。』

  • ロストジェネレーション以降の社会動向や若者動向を、新自由主義という切り口から分析する本。

    社会現象を論理的に解析しつつ議論を組み立てていくため、正直のところ読み易くない本です。
    ですが、90年代以降の若者論がともすればステレオタイプ的に解釈されがちであるからこそ、あえてこのように慎重かつ丁寧に分析することも求められているのではないかとも思います。

    高度経済成長の終焉に伴い、市場の弱肉強食的な価値観が強化される時代であるからこそ、そこにとらわれない承認関係に基づく人間らしさが求められる…とまとめておくのが、本の論旨に比較的近いといえるのではないでしょうか。

    「ウェブ社会の思想」とはうって変わり(?)、サブカルはそこまで言及されていないので、サブカル論として読むと肩すかしかな…?とは思います。
    ただ、サブカル畑の人間には共有しやすい問題提起とは思うので、読んで損はないと思います。

  • 言葉が合わなかったのでぼんやり読んだ

  • 内容が難しくて何を言ってるのかよくわからなかった…。

  • なんというか消化にすごく時間がかかるし、読み終わった今でも全部理解できたのかと言われれば全然そんなことはない。けれども社会にでる一歩前、大学生の自分としては、そこで論じられている既得権やら労働における疎外の感情やらを自分とは他なるものとしてとらえることになった。それがいいとか悪いとかではなく、ただ今の時期に自分の幸せとか幸せに生きるとか、そういうことについて少しでも考える時間を得られたという点で読めて満足。

  • 世代論の本だったと思う。もう一度読み直したい。

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