世間さまが許さない!: 「日本的モラリズム」対「自由と民主主義」 (ちくま新書 777)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480064776

感想・レビュー・書評

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  • なるほどと思うところが多い、思考実験としても面白い

  • 日本には「ブレーキとアクセルを同時に踏む」ような混乱がしばしば見られる、と筆者は言う。
    法で決まりを明確にして、それ以外の部分は問わない「自由と民主主義」と、世間さまの思惑を基準とする「日本的モラリズム」。この二つの原則が最たるものだそうだ。

    筆者の言い方がシニカルなので、日本は司法と立法の仕組みを廃止して、「世間さま省」をつくり、そこで「世間さま」のモラルを基準に裁いたり、法律を作ればよい、と主張する。
    言い方のシニカルさも相まって、どこまで本気なんだろうと思う。
    ただ、その方が柔軟に新しい事態に対応できるのではないかという指摘には、ちょっとはっとさせられた。

  • 新書のくせにとにかく内容が重たくて苦戦しました(※もともと遅読)読みながら頭にがんがん投石を食らうみたいな。個人的にとっても斬新な内容で、ものの見方が変わった一冊です。基本的に新書嫌いなんだけどこれは皆さんに読んでほしい。

  • 同質性の信仰が根強い日本で自由と民主主義を推し進めた結果、混乱が生じている。個性化と平等化を同時に推し進めた結果、超法規的な世間さまの基準が揺らいでいるからだ。
    ルールを遵守する、というモラル感覚は必要。
    民主主義あわないならいっそせけんさま制にしちゃえば?
    白人が減ってるアメリカでももしかしたら今後、日本と同様の混乱が生じるかもね。

    2014/02/15読了。

  • かなり精密に分析、議論が練られていて、いい本やと思う。
    昔に一度読んだことがあるのですが、そのときにおもしろく読めた記憶があったので、今回改めて読んで見ました。
    実際、著者が提起している問題はかなり当てはまっているように感じます。
    日本人はルールとモラルを混同している。めっちゃ共感できる。ルールを守らせればいいだけの問題に対して、「心の問題」などの内面を持ち出すとことか。
    著者があとがきで書いているように、自称「アナリティカル・シニシスト」というのも頷ける。冷静な分析力。
    ただ、同じことを繰り返している部分が本書には多々あるので、そこが少し気になった。

  • 第1週 1/11(水)~1/18(火)
    テーマ「日本・日本人・日本語」

    ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00172203

  • 「自由と民主主義」と、
    「日本的モラリズム」のミスマッチについて。

    「自由と民主主義」は要するに、法律があって、
    「しなければいけないこと」
    「してもしなくてもいいこと」(自由)
    「してはいけないこと」
    の3つに分かれている状態。

    もしくは、
    内心=自由
    ルール違反でない行動=自由
    ルール違反の行動=自由ではない
    とも書いてあった。

    「日本的モラリズム」は、
    みんなが同じモラルを持っているはずだ、と考え、
    「世間さま」をモラルの基準とする。
    「世間さま」が許容するならそれは有り、
    「世間さま」が許容しないならそれは無し、ということ。


    この本で面白かったことは、なんとなく「民主主義」=善、と刷り込まれてきたところに、
    「民主主義に向いた民族」とそうでない民族がいるんだよ、
    向いていないことを無理してする必然性があるのか?
    と言っているところ。
    日本の民主主義にはこんな歪みが出ているけど、それは日本人がダメなんじゃなくて、
    日本人と民主主義が合わないからだ、と言っている。

    じゃあ民主主義を排して、「世間さま」の意見が国を導く「世間さま制」にすればいい。
    イスラム教国にも、民主主義を取り入れずやっている国はある。
    ちゃんとしたシステムを築きあげたら、日本人だってやっていける。という結びでした。


    確かに、「ルール的にはOKだけど、なんか間違っている気がする」と思わされることは
    枚挙にいとまがありません。

    それから、「モラリズム」は「心」で、「民主主義」は「システム」で。
    何か問題が起こったら「意識の問題」「倫理観の問題」に持っていく日本人は、
    そもそもロジカルな思考に向いていないということ、いたく共感します。

    著者が思考実験する「世間さま制」、単純な僕には良さそうに見えてしょうがないです。
    誰か素養のある人が建設的な批判をしてらっしゃるなら、ぜひ読んでみたい。

  •  いわゆる世間のモラル=「世間さま」を基準とする日本的モラリズムについて解説した本。この基準には人々の同質性(「みんな同じ」と考えがち)を担保としていること、あらゆることを「モラルの問題」にしがちであるといった特徴がある。

    気になった点
    ・「あなたの意見は論理的には正しい。でも『心』がない」と人が言うとき、この人は世間さまを基準とする日本的モラリズムを前提としている

    ・「みんな同じ」の日本的モラリズムに反する者は絶対的な悪人として扱われる

    ・ルールよりモラルを重視しがち。モラルさえ守ればルール違反も美談になる?歴史教師は「赤穂浪士もアルカイダもテロリストじゃないか。どう違うの」という生徒の質問にどう答えるのだろうか

    ・日本的モラリズムは物事の論理的な現状分析、原因特定、目標設定、適切な手段選択を阻害する。今より地球が2~3度暖かくなっても縄文時代並みの気温になるだけなのに、日本人は地球温暖化をモラルの問題だと考え、まるで地球が壊滅するかのように騒ぐ

    ・刑事訴訟法で認められている裁判被告人の「黙秘権」も日本的モラリズムにかかれば「悪の隠蔽装置」

    ・自由の範囲内でも「世間さまをお騒がせ」すれば謝罪しなければならない

    ・モラル低下、モラル崩壊と騒がれることが非常に多いが、これは多様化の進展で日本的モラリズムが前提としていた同質性やモラル基準が変化したために生じた、人々の多様化したモラル同士の衝突である。その例が、モンスターペアレンツやクレーマーと呼ばれる人々である(世間は彼らを悪人と決め付けるが、彼らの行動原理は自分が脅かされているのではないかという「正義」である)

     私という人間は自分の生まれ育った日本という国が好きだが、それでも日本やそこに住む日本人に対して疑問を持つことはある。この本は私が日本人に対して良くも悪くも思っていたことを見事に代弁してくれているように思う。

     特に、モラル崩壊についての考えは私が前々から持っていた意見には。同意したい「みんな同じ」の前提が大昔からまかり通り続けてきたという事実も驚くべきことである。

     でも日本人はもう少し異質性や多様性を前提として物事を考えてもいいのではないかとは思う。モラル崩壊とか低下という言葉にはもううんざりした。それだけ「みんな同じ」という状態が当たり前だった平和な国なんだなあ、と。

     日本人の乗客に「みんな飛び込んでますよ」と言えば沈没船から飛び降りるという海外のジョーク、それから「赤信号みんなで渡れば怖くない」という言葉がこの本で述べられている日本的モラリズムを端的に言い表していると思った。

  • こういう考え方もあるぞ、ということを提唱してくれる一冊。気付くべき何かを気付かせてくれる。

  • 読了不可

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