学歴分断社会 (ちくま新書 772)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480064790

作品紹介・あらすじ

日本の大卒層と非大卒層-。全人口におけるその割合は、ほぼ同数となってきた。しかもそれは今後も続く。これが本書の言う、学歴分断社会である。そして大卒/非大卒という分断線こそが、さまざまな格差を生む。学歴分断社会は、どのようにして生じたのか。そこに解決すべき問題はないのか。最新かつ最大規模の社会調査データを活用し、気鋭の社会学者がこれまでタブー視されてきたこの領域に鋭く切り込む。

感想・レビュー・書評

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  • 親の学歴が子供の学歴に影響するー、格差の再生産として多くの教育社会学者が問題視するのはなぜか?大卒か非大卒かで収入や職業的地位、果てはその人の格のようなものまでそこに見出し、その後の人生に大きな差異をもたらすからだろう。ならば、再生産をけしからんというよりも、学歴が必要以上に大きな影響をもっていることをいかに見直すのか、著者のいうように、高卒か大卒かは「上下ではなく質的な違い」とし、その分断を滑らかなものにするにはどうしたらよいのだろう、ということを考えさせられた。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1000245695

  • 大卒と高卒の分断を語る本
    大卒と高卒は半分半分くらいの比で存在するが、偏って存在して互いの交流は少ない。そして固定化している。

    学歴は正規の格差生成装置
    自分の成功は努力、自分の失敗は社会問題、他人の成功は社会的な追い風、他人の失敗は自己責任と捉えやすい
    高度経済成長時代は、父親よりも学歴が高く生涯賃金も多い場合が多かった。
    子供が親を超えられない時代への転換
    目に見える世代間関係=豊かさの時代変化+不平等な継承関係
    親の学歴、職業、エスニシティ、文化資本

  • 読みやすい筆致で尚且つ重要な点が書かれていた。

  • 先日、蓮舫が「高卒は就職できない」と学歴差別的な発言を行い謝罪に追い込まれた。本書はこの発言を補完するように、格差の根源は学歴格差であり、大卒か高卒かで社会を見れば、格差の本質がわかるというスタンスで書かれている。職業や家族は流動的であったり多様性があるのに対し、日本人を半々に区分する安定的で普遍的な指標は性別と学歴しかないとし、計量社会学の立場から実証的に検証を行っていく。
    そもそも教育とは公的な格差生成装置であり、それは親の学歴に依存する。すなわち、大卒の子供は大卒(大卒再生産)となり、高卒の子供は高卒に(高卒再生産)なる。しかも、大学全入時代を迎え、この再生産が今後継続し、社会が分断されていくと分析する。(但し、話題になった「下流化」は生じていないようである)
    しかしながら著者は事実を分析しているだけで、学歴差別する意図はない(そうは受け取らない人は多いだろうが)。大卒には大卒の、高卒には高卒の、各々の生き方や幸福がある事を列挙し、各人の選択を肯定する。ただし、高卒は人生が不安定になる傾向が高いとし、そこに何らかの政策的な仕組みを導入する必要性を訴える。(ちなみに中卒は高卒以上に不安定になるとし、高校の義務教育化を提唱している)
    この度気が付かされたのは、リスクと平等の関係性である。誰もに機会の平等がある事は一見望ましい事のように思われるが、そこには流動性が生まれる(高卒の子供が大卒になる。大卒の子供が高卒になる)。この事はある種の社会的不安定をもたらし、結果としてリスクが発生する。学歴格差再生産により社会が大きく二分され、そこに安定がもたらされるのがよいのか?それとも機会の平等により結果の格差が生じ、社会が不安定になるのがよいのか?今後、国民はどのような選択をしていくのかが興味深い。

  • 著者:吉川徹[きっかわ・とおる](1966-) 計量社会学。

    【書誌情報】
    シリーズ:ちくま新書
    定価:本体870円+税
    Cコード:0236
    整理番号:772
    刊行日: 2009/03/09
    判型:新書判
    ページ数:240
    ISBN:978-4-480-06479-0
    JANコード:9784480064790

    日本の大卒層と非大卒層――。全人口におけるその割合は、ほぼ同数となってきた。しかもそれは今後も続く。これが本書の言う、学歴分断社会である。そして大卒/非大卒という分断線こそが、さまざまな格差を生む。学歴分断社会は、どのようにして生じたのか。そこに解決すべき問題はないのか。最新かつ最大規模の社会調査データを活用し、気鋭の社会学者がこれまでタブー視されてきたこの領域に鋭く切り込む。
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480064790/

    【簡易目次】
    第1章 変貌する「学歴社会日本」 016
    第2章 格差社会と階級・階層 055
    第3章 階級・階層の「不都合な真実」 089
    第4章 見過ごされてきた伏流水脈 111
    第5章 学歴分断社会の姿 135
    第6章 格差社会論の「一括変換」 154
    第7章 逃れられない学歴格差社会 189


    【目次】
    目次 [003-006]
    はじめに [007-013]

    第1章 変貌する「学歴社会日本」 016
      大学全入時代の本当の理由
      「義務」化した高校教育
      親の高学歴化
      昭和の学歴社会から平成の学歴社会へ
      大卒50%の「ガラスの天井」
      学くんの消滅
      格差現象の主成分寝た子を起こすな?
      18歳の岐路
      学歴か学校歴か
      欧米とは異なる日本だけのしくみ
      学歴分断社会

    第2章 格差社会と階級・階層 055
      「格差」への詰め込み
      格差と品格
      日本社会における格
      格と階級
      経済的格差と社会学的格差
      三つの時代
      豊かさ・格差・不平等
      変動論をイメージする
      格差政策のすれ違い

    第3章 階級・階層の「不都合な真実」 089
      面白みのない時代
      流動化する職業
      40歳にして惑わず?
      パラサイト・シングル
      総中流のスマイル・マーク
      子どもが親を越えられない時代

    第4章 見過ごされてきた伏流水脈 111
      学歴による地位の受け渡し
      「教育格差」とは?
      拝金主義的?教育論
      真相は藪の中
      学歴を起点とする社会
      学歴伏流パラレル・モデル
      広く・正しく・いち早く
      共生から逆転へ

    第5章 学歴分断社会の姿 135
      親からみた子どもの学歴
      いまどきの中高生の学歴観
      学歴の象徴的価値
      ヴィーナスの腕
      学歴の親子類型
      入れ替え戦のメカニズム

    第6章 格差社会論の「一括変換」 154
      時代のキーワード「下流社会」
      下流の正体は高卒層
      希望格差の苅谷=山田理論
      水面下の学歴分断社会
      生活格差の境界を探る
      政党支持の学歴差
      モンスター・ペアレントは双頭竜
      ただ一つ聞くとすれば

    第7章 逃れられない学歴格差社会 189
      学歴分断線があるかぎり格差はなくならない
      貧困対策としての高校義務化
      どこはでが不平等問題なのか
      鍵を握る学歴下降家族
      緩やかな平等化の進行のなかで
      平等化とリスク化のパラドクス
      輝いていた高卒就職
      人生ゲームの新しいルール
      ニート増加と「大学全入」の表裏
      学歴アファーマティブ・アクション
      学歴共生社会をめざして

    あとがき(2009年1月 吉川徹) [225-227]
    主要参考文献 [228-229]

  • 大学進学率の増加は、半々から3分の2辺りで頭打ち。
    親の学歴、親が子に期待する学歴、の差により学校に望むものが異なり、学校の集団維持が困難になる。
    教師の目から見た学歴問題

  • 中高生に是非読んでほしい一冊。

  • 社会
    思索

  •  著者の最新刊である『日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち 』(光文社新書)を先に読んで、そのひとつ前の研究であり、前提になっているところを確認するために読んだもの。
     「学歴」がすべての問題の主成分にして、その出発点であるというのが大きな主題であり、その状況説明が長く書き連ねられている。結論として何が言いたいのかを気にしていると、最後のところで、大卒と非大卒の共生を保つ社会を目指すこと、社会的に弱いグループになってしまう人たちへの配慮、といった点を認識しようというところだろうか。
     大卒・高所得世帯がその経済力によって子どもを社会的強者へと導くから問題が大きくなるといった議論とは一線を画するものの、その後をどう理解すればよいのか、まだこの著書の段階では整理がついていなかったようである。
     今、自分自身が子育ての初期段階にあるところで、ここから何を得られるのかを考えながら読んでいたが、この手の本にありがちなところとして、子ども自身から見た視点はやはり欠けていた。非大卒<大卒(低学校歴<高学校歴)が依然として社会的な影響を強くもっているという主張の中、それでは、その現場にさらされている子どもたちはどうすればよいのか。勉強が得意な子どももいるし、勉強が得意でない子どももいる。
     子どもの目線から見た風景の議論があれば、相当な厚みのある話になるだろう。
     

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著者プロフィール

大阪大学大学院人間科学研究科教授

「2021年 『少子高齢社会の階層構造2 人生中期の階層構造』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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