環境思想とは何か: 環境主義からエコロジズムへ (ちくま新書 815)
- 筑摩書房 (2009年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480065193
作品紹介・あらすじ
今日の地球環境危機は、産業革命以来の物質文明のあり方に対して、われわれに根本的な変革を迫っているといっても過言ではない。そのために本書ではまず、このような危機的状況をもたらした近代産業主義思想そのものを問いなおし、近代から現代に至るまで「環境問題」をめぐってどのような思想が展開されてきたのかを多角的に検討していく。これらの作業は"緑の社会"を実現していく上で重要な示唆を与えてくれるだろう。
感想・レビュー・書評
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詰め込み過ぎでまとまりが悪いため(さらに用語の不統一も残っているため)読むのが大変だが、複雑なエコロジー思想の来し方を新書一冊で概観できるのはありがたい。
類書として、学位論文が元となった海上知明『環境思想 歴史と体系』(NTT出版、2005年)がある(蛇足だが海上氏は「新しい歴史教科書をつくる会」の理事)。
【書誌情報】
『環境思想とは何か――環境主義からエコロジズムへ』
シリーズ:ちくま新書
定価:946円(税込)
Cコード:0295
整理番号:815
刊行日:2009/11/09
判型:新書判ソフトカバー
ページ数:304
ISBN:978-4-480-06519-3
JANコード:9784480065193
在庫: ×
今日の地球環境危機は、産業革命以来の物質文明のあり方に対して、われわれに根本的な変革を迫っているといっても過言ではない。そのために本書ではまず、このような危機的状況をもたらした近代産業主義思想そのものを問いなおし、近代から現代に至るまで「環境問題」をめぐってどのような思想が展開されてきたのかを多角的に検討していく。これらの作業は“緑の社会”を実現していく上で重要な示唆を与えてくれるだろう。
〈https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480065193/〉
【簡易目次】
目次 [003-004]
まえがき――地球環境危機と環境思想の役割 005
第1章 環境思想とは何か――基本的視点展開 009
1 「環境思想」はどのように捉えられてきたのか 013
2 「環境思想」の意味と論理 019
第2章 豊かな社会のディレンマ 035
1 産業革命は何をもたらしたか 036
2 「ヘッチヘッチ論争」とは何か 045
3 「成長の限界」論登場の背景と要因 050
第3章 環境思想の登場 087
1 初期環境思想(1) ――伝統的環境思想の浸透(一八 - 一九年代) 088
2 初期環境思想(2) ――近代環境思想の登場(一九 - 二〇世紀) 092
3 中期環境思想(1) ――現代環境主義思想の萌芽(一九六〇 - 七〇年代) 095
4 中期環境思想(2) ――ラディカルな環境主義思想の出現(一九七〇 - 八〇年代) 097
5 後期環境思想(1) ――環境主義思想の政治化(一九八〇 - 九〇年代) 101
6 後期環境思想(2) ――環境主義思想の緑化(一九九〇 - 二〇〇〇年代) 105
7 後期環境思想(3) ――制度的変化のための環境思想(緑の思想)への転換(二〇〇〇年以降) 110
第4章 変革思想としての環境思想―その五つの潮流 117
1 人間と自然との関係を変革していく思想(1) ――「ディープ・エコロジー論」 118
2 人間と自然との関係を変革していく思想(2) ――「自然の権利」思想 127
3 人間と自然との関係を変革していく思想(3) ――「環境的正義」思想 140
4 産業社会を変革していく思想――「持続可能な発展(開発)論」と「エコロジー的近代化論」 149
5 社会制度を変革していく思想――「ラディカル・エコロジー思想」 170
第5章 環境思想の現代的展開 199
1 政治的な変革思想としての「環境政治思想」 200
2 経済的な変革思想としての「環境経済思想」 206
3 文化的な変革思想としての「環境文化思想」 213
4 法的な変革思想としての「環境法思想」 222
5 政策的な変革思想としての「環境政策思想」 229
第6章 現代環境思想は何をめざすべきか 235
1 環境思想の源泉と目標 235
2 転換期の環境思想への視点と方向性 237
3 環境思想の現代的位相と新しい環境社会への視点・条件 238
4 「緑の福祉国家」への政策転換――スウェーデンを例に 248
5 新しい環境社会のための「緑の福祉国家」構想と展望 254
おわりにかえて――「ヘッチヘッチ論争」再考 273
あとがき(平成二一年一〇月一日 松野 弘) [277-281]
資料 現代環境思想の潮流 [282-289]
引用・参考文献 [290-300]詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新書の体裁だが、ボリューム的にも内容的にも専門書並み。情報量は多くて学ぶことは多いのはありがたいが、正直に言って構成や文章は理解しやすいとは言えず、羅列的な印象も強かった。目次が章のタイトルだけなのも非常に残念。
2章では、20世紀初頭のヘッチヘッチ論争における保全主義と保存主義の対立が、経済的合理性(経済成長)を維持しながら技術的な対応によって保全型の社会を実現しようとする環境主義思想と、環境的合理性(生態系の持続性)を基盤とした社会をめざすエコロジズム思想の対立という形で継承されていると解説している。
3章では、環境思想の歴史を年代を追って説明する。そして、地球環境危機に対応するには、市場原理主義ではなく、生活原理主義に基づく新しい社会構想抜きにはあり得ない段階に達していると主張している(P.112)。
4章では、1970年代以降の環境思想を5つに分類して説明している。ひとつの大きな流れとして、人間中心主義から非人間中心主義(動物の解放)、生態系中心主義が見られる。一方で、1970年代にかけての環境規制の強化などの対症療法的な政策的対応の失敗への反省から、環境保全と産業発展との調和をめざしたエコロジー的近代化論が登場した(現状維持的な環境主義派)。しかし、エコロジー的近代化論は環境的に持続可能な発展の考え方からは乖離していると主張する。また、地球環境問題の原因は資本主義による経済的な生産体制や制度、世界観にあるとの考え方に基づくエコソーシャリズム思想についても紹介している。
6章では、産業社会システムと環境社会システムが有機的に連関した、新しい社会システムを作ることが課題であると提唱し、環境持続可能性指標(ESI)や環境パフォーマンス指標(EPI)、エッカースレイの緑の国家論を紹介している。 -
ナッシュ『自然の権利』の訳者である著者による、西洋環境思想の概観。基本的な流れを抑えるにはよい、基礎的文献。
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[ 内容 ]
今日の地球環境危機は、産業革命以来の物質文明のあり方に対して、われわれに根本的な変革を迫っているといっても過言ではない。
そのために本書ではまず、このような危機的状況をもたらした近代産業主義思想そのものを問いなおし、近代から現代に至るまで「環境問題」をめぐってどのような思想が展開されてきたのかを多角的に検討していく。
これらの作業は“緑の社会”を実現していく上で重要な示唆を与えてくれるだろう。
[ 目次 ]
まえがき―地球環境危機と環境思想の役割
第1章 環境思想とは何か―基本的視点と展開
第2章 豊かな社会のディレンマ
第3章 環境思想の登場
第4章 変革思想としての環境思想―その五つの潮流
第5章 環境思想の現代的展開
第6章 現代環境思想は何をめざすべきか
おわりにかえて―「ヘッチヘッチ論争」再考
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
2010.01.24 朝日新聞に掲載されました。
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100124朝日新聞書評
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経済発展と環境保護はトレードオフだと言っているけど、最近のグリーンニューディール政策に関して一言も触れていないことが気になった。
まぁ長くて同じことを何回も言ってるようだったから途中で読むのやめたから後ろで触れてんのかもだけど。